登山者情報740号

【2003年08月03日/石転ビ沢〜ダイグラ尾根(日帰り強行山行)/木内茂雄調査】

タイム  温見平砂防ダム3:24〜3:54ウマイ水清水〜4:35梶川出合〜4:54赤滝〜5:05石転出合〜6:06本石転出合〜6:40北股沢出合6:06〜6:54黒滝〜7:55梅花皮小屋8:40〜11:15御西小屋11:30〜11:45本山小屋13:30〜13:47飯豊山〜18:51落合吊り橋下山
メンバ− 梅花皮小屋より前日泊のODD合流
記 録
このコ−スは二日間で行くべきだが都合付かず、やむを得ず日帰りとしたが、他の人には勧められないし、私も二度と日帰りで行きたくない。
朝早く懐中電灯を点けて歩く、安いものなので足下しか見えないが、慣れた道なので問題無し。ウマイ水清水を過ぎ彦衛門の平の頃より電灯は消す。地竹原から梶川出合まで沢に雪渓が残っていたので無理して雪渓に登り、その上を歩く。斜面が緩いけれど油断すると足が滑るし、踏み抜かない様雪渓を見渡しながら慎重に進む。そして、梶川出合からは夏道を歩く。カラマツソウ、シモツケソウなどのありふれた花が咲いている。
石転出合ではテント一張り有り、今起きたばかりのペア−が顔を出していた。後ろを振り返ると小国辺りの上空に朝日が出る瞬間であった。出合にはまだタップリと雪が有るが、雪渓の真ん中辺りにはポッカリと穴が開いている。その下方を通り、石転沢右岸の大石下に渡る。暫く夏道を歩くが大石上ではハクサンコザクラが、ちらほらと咲いている。まだ、写真は早いと眺めるだけにして進み、やがて雪渓の上に出る。滑り易いがそのまま歩き、少し斜度が付いてきた頃、4本爪のアイゼンを付けピッケルを持つ。アイゼンを付けると矢張り快適である。雪面がスプ−ンカットになっているとはいえ、アイゼンピッケルは必携である。ホン石転ビ沢出合の対岸には小沢が流れ落ちていて、水が取れそうであるが、私には水の必要が無いので、敢えて見に行かなかった。
北股沢出合から黒滝上部まで黄色の旗が何本も立てて有るので初めての人はそれを目印にすると良い。黒滝は穴が開いているが右側にまだ雪が残っていたので、アイゼンをつけたまま、その上を進むが、此処は最高の急傾斜なので慎重を要する。もし足を滑らせて滑落したら黒滝に一直線で滝壺に落ち、一巻の終わりだ。(8月4日の情報で右側の夏道が出たとのことなのでこれからは、ここをル−トにしないこと)
この急傾斜の残雪を60mくらい登り左側の夏道に出る、この後、アイゼンは必要無いので外す。直ぐそばにはハクサンコザクラが群生している。その下は断崖絶壁であるが、慎重に数m降りシャッタ−を押す。その先ミヤマキンポウゲの群生は見事なものだ。そして、シナノキンバイ、コバイケイソウ、蕾みのミヤマガラシなど挙げれば切りがない。飯豊連峰は花の宝庫なので、以後は目立った物だけ記す。梅花皮小屋直下のテント場にはまだ残雪有り水が小沢をなして流れている。勿論、テントは張れない。
小屋に着き、管理人のOTJより泡をご馳走になる。ここで前日から来ているODDと合流して先に進む。小屋周辺は紫鮮やかなマツムシソウが咲きだしている。例年より早いのではないだろうか?オヤマリンドウも見かけた。そして、これから向かう梅花皮岳斜面はニッコウキスゲが目立つ。天気は良くなり、私が進むに従い霧も晴れ日射しを浴びる様になる。梅花皮岳から烏帽子岳の間ではイブキトラノオ、梅花皮岳下りではイブキジャコウソウ、それから、天狗の庭手前までニッコウキスゲ、など多数。
御西小屋で管理人に泡をご馳走になり、一呼吸後、本山を目指す。駒形山を向こうに見る様になると、今回、山行最大のニッコウキスゲ群生地出現で、向こう一面、黄色のお花畑である、北股岳を下ったギルダ原に勝るとも劣らずの絶景である。
駒形手前から玄山道に右折れする。途中、2箇所残雪をトラバ−スする。その内、1箇所は傾斜きつく用心のため背中のピッケルを抜く。このコ−ス、本山小屋への道に合流するまで、チングルマの白い絨毯とハクサンコザクラの群生で疲れが飛ぶ程、ご機嫌にしてくれる。
本山小屋に着くと小屋管理人の“クマさん”が出迎えてくれ、またまた泡のご馳走となる。知り合いの多いのが良いのか悪いのか、あまり考えずに喉を潤す。
ユックリ休憩した後、すぐそこの飯豊山三角点を目指す。梅花皮小屋からここまで随所にこの山固有のイイデリンドウを見かけたが、ピ−ク手前までいくつか株有り、またミヤマリンドウの株も見つける。そしていよいよ、頂上からダイグラ尾根を下り始める。このコ−スは下まで花が無い訳でないが、すでに二日目に相当する行程になっていたので、タイム、花の記憶はいい加減になっていった。そして、風が無く、暑く、まだかまだかの上り下りで閉口していた。頭の毛の薄い私は、普段、虫に刺されない様帽子をかぶっているが、流石に蒸れて暑いので脱いでザックにしまった。これを“脱帽”と言う。
途中、何かハクサンコザクラ、タテヤマウツビグサ、ウメバチソウが有ったなあ位で後は早く着いてくれ、と思いながら重い足を前に出すだけの繰り返し作業であった。ダイグラ尾根特有の急傾斜の下りなどは、“このまま転がり落ちた方が早いのではないか”と一瞬、錯覚することも有った。昨年、梶川尾根で熱中症にかかり、着ている衣服を投げ出して亡くなっていた人のことを思い出す。私がまさか....気が狂ってきたのでは?
道は上り下りの繰り返し、私は“ナニクソ”の繰り返し、とても“山は何故登るか”考える余裕は無い。兎に角、懐中電灯を点ける前に降りることができた。
〔70才の三浦雄一郎だって頑張っているのだから〕と言う一念で頑張ったが8,000m以上の方が涼しくて快適ではないだろうか?最後に夏のダイグラ尾根を登りに利用するには、暑さに対する体力と毅然とした根性を持たないと駄目であると付記しておく。
追記
昨年から今年に掛け飯豊山以外の山に挑戦しているが、他の山もその山固有の花が有り大いに楽しめる、しかし、地元をひいきするわけでないが花畑のスケ−ル、花の種類は飯豊山を言わずして花を語れないではないだろうか?
今度は北アルプスの雲の平周辺に行って花を楽しみたいと考えているが、もし、素敵な花の山有ればこれからも挑戦したい。                      JO7AQL記

石転ビ沢 ミヤマキンポウゲ黒滝上
ミヤマキンポウゲ群生
黒滝上から石転ビを見下ろす
ニッコウキスゲ梅花皮岳斜面と
梅花皮小屋
イブキトラノオとクサイグラ尾根 コバイケイソウ
残雪を歩くODD ニッコウキスゲ群落と後方駒形山本山
玄山道の残雪 ヨツバシオガマ群生
イワオウギ ハクサンオミナエシ
ヤマハハコ ヤマトウバナ
ミヤマリンドウ イイデリンドウ
アオノツガザクラ イブキジャコウソウ
クチバシシオガマ コゴメグサとイイデリンドウ
シラネアオイ ダイモンジソウ
トモエシオガマ ノウゴウイチゴ
バイカオウレン ミヤマホツツジ
ミヤマコウゾリナ ミヤマアキノキリンソウ
タカネマツムシソウ
ハクサンフウロ ハクサンシャジン
ハクサンコザクラの群生 ハクサンコザクラとチングルマ