登山者情報773号

【2003年12月14日/南俣〜二王子岳/井上邦彦調査】

天候が優れないので、山頂に小屋がある二王子岳を登ることとした。南俣から二王子神社に向かう途中、道路を長い尻尾を水平になびかせてリスが横断した。今回は上流側の駐車場ではなく、神社の境内にある駐車場を利用した。誰もいない。トイレは使用できた。車から登山道具を降ろしていると、偶然隣に駐車した車から今夏本山小屋で一緒になった佐藤さんが降りてきた。彼は冬に備え一王子小屋に荷上げだとのことである。先週何処にも登らなかったせいか、腰の状態が余り良くない。
長靴を履き、06:55登山者カードを書いて出発。杉林の中を進み、川をこざいて登りにかかると07:11「一合目」の標識がある。杉林を抜け、雑木林を進み、07:20-23大杉で上着を脱ぎ、腰バンドを着ける。ここから雪が出てくる、転石の間を縫う登山道は、これ以上雪が積もると岩の隙間に足が取られるかも知れない。07:30神子石を過ぎ、07:33「二合目」の水場は使用できる。
祠を通る左道ではなく、まっすぐに進み、07:47一王子小屋と水場の十字路に着く。水場の標識は外されており、小屋も雪囲いがされていた。大杉に付けられた「三合目」の標識を過ぎると雪が急に増えてきた。07:49-59雪が膝まで潜るので、長靴の中に内靴を履き、カンジキを履く。
木々の枝を積もった雪が押し曲げて登山道を塞いでいる、ストックで枝の雪を払いながら登る。08:34-43登山道脇の細いブナに付けられた「四合目」の標識は凍りついて読めない。ここで食事、雪を被った木々と海のコントラストが面白い。リスの足跡は1箇所のみ、ウサギの足跡が登山道狭しと散乱し、ハイイヌツゲの葉を掘って食べている。
09:07独標、「五合目」の標識は雪に埋もれて見えない。高い鉄柱に赤ペンキで書かれた印を見ると、積雪量は0.5m程度のようだ。
20cmから膝までのラッセル、ブナの枝に付いた雪が幻想的である。風がない状態で雪が降ったのだろう、木々と雪が表現する不思議な光景に包まれる。09:30-36、1,100mで食事、日本海が見える。登山道に雪が被さって歩きにくい。
10:03六合目を通過する。一王子小屋に荷上げを済ました佐藤さんが追いついてきたと思うまもなく、単独の男性が登ってきた。彼は新潟の林さんとのこと、この後は彼とラッセルを交替しながら登る。
10:28七合目の油コボシは急斜面なので、弱層テストを行う。底に固い層があるが、全体として安定している。両手で雪を集め膝で押して足場を作りながら登る。林さんと佐藤さんに先行してもらい10:30-36食事を取る。林さんはかなりのハイペースでラッセルをしている。
八合目手前から赤布を付ける。視界がなくなり記憶に頼ってルートを進む。潅木帯になると藪を漕ぐ状態となりペースが落ちる。藪を嫌い三王子祠の手前から右手の尾根上に出ると風が出てきたのでカッパを着る。下降点に赤布を付け、始めての鉄パイプに張り付いた海老の尻尾を1箇所削り取る。風圧でラッセルはなくなったが、視界がなく慎重に進む。2本目の鉄パイプでは2箇所を削る。左手に遭難慰霊碑らしきものを確認すると僅かに下る。そのまま真っ直ぐに登って主稜に出た所に鉄パイプが立っていたので、海老の尻尾を3箇所削る。
ここで左に直角に曲がり登ると、4本目の鉄パイプが見えた。パイプの手前に赤布を付け、下山時に方向が分かるように工夫した。鉄パイプの4箇所を削り、左の夏道を登り切ると背の低い針葉樹が混じり、アンテナのある雨量観測所(九合目)に着く。林さんはどんどん先に進む。彼の姿がガスの中に薄っすらと確認できた。

見慣れたドーム型の小屋に着くと、林さんが備え付けてあるスコップで凍りついたドアと格闘していた。11:27-46鳥居のような柱と山名の描かれた石碑のある山頂に、佐藤さんと到着。小屋に戻り、3人各々ガスストーブで食事をつくる。佐藤さんからハムの塊と熱々の餃子をいただき、缶ビールで喉を潤す。
危険性があるので、3人一緒に下山することとした。さほど風はないのだが、小屋周辺や琵琶沼付近はトレースがなくなっている。それでも鉄ポール、赤布、足跡を辿って特に問題なく下る。

13:02「八合目」で記念撮影。ここから先は迷う危険性が少ないのでバラバラに下る。13:14油コボシを通過、13:22カッパを脱ぐ。撮影しながらのんびり下るという佐藤さんと別れる。林さんはかなり先をあるいている様子。13:52独標には幕営したかのように四角く踏み固めた跡があり、誰かがここで遊んだようである。カンジキを履かずに歩いた足跡がある。何人もの登山者で固く踏まれた道では、幅の広い私のカンジキは歩きにくい。14:02四合目でカンジキを脱ぐ。
14:15三合目まで下ると林さんが待っていた。二人で雪のない登山道を快適に下り、14:43駐車場に到着した。

二合目(水場) 三合目(一王子コヤ)
一王子(杉の木)上から日本海 雪の積もった枝に閉ざされた登山道
雪景色の窓から日本海を望む 四合目(右のブナに標識)
兎の食跡 兎の足跡が散乱する登山道
兎の足跡 登山道に垂れ下がる雪の枝
五合目(独標) ブナの枝が幻想的な模様を作る
まるでスノーモンスター 登ってきた尾根を見下ろす
ニノックススキー場全景
ラッセルをする林さんと佐藤さん 九合目(雨量観測所)
視界のない雪原を進む林さん 二王子小屋のドアを開ける林さん
二王子岳山頂にて(左は佐藤さん、右は筆者)
七合目にて林さんと筆者 二王子神社に戻る