登山者情報783号

【2004年1月31日/白太郎山/井上邦彦調査】

前夜AXLからFAXが入る。現在OTJ宅に居るとのこと。2人で熊を齧りながら飲んでいるのだろう。私は04:00に起床し、前夜飲み会で置いてきた車を回収する。ついでにコンビニで食料を買い、自宅に戻って山道具を整える。頃合を見計らって自宅を出発しPWD宅に迎えに行くと、奥さんが味噌汁とゴンボアザミを出してくれた。荷物を詰め込み二人で徳網に向かう。
樋倉集落で公園管理員の初男さんに挨拶をすると、これから角楢に行くから一緒に来いとのこと。丁寧にお断りして、ジンゴロウ沢左岸にあるOTJ宅に到着。OTJ宅は豊富な沢水を利用し雪処理が不要である。中に入るとOTJとAXLが降りてきた。丸太に熊の毛皮を無造作に張った椅子にこしを掛けて挨拶。OTJは初男さんと角楢まで橋の除雪に向かうとのこと。車を留めさせてもらい、高度計を330mにセットする。
07:50スキーを履き、ウサギの足跡が散乱しているOTJ宅から3人で歩き出す。最初の急斜面を越えると、08:05段丘状の杉林に入る。08:13杉林を抜けてブナ林に入り、快適に高度を上げていく。時折、ナラの巨樹が迎えてくれる。
08:58(675m)平坦な尾根上となる。左手斜面は杉の造林地となっている。造林地を過ぎた辺りからやや左にルートを取る。AXLは朝食を食べてきたと言うし、私はPWD宅の味噌汁でお握りを1個食べている。何も食べていないPWDが空腹を訴えたので、09:05-10休憩を取り食事とする。たまに古い赤布が目に付く、以前に私が付けた物だ。3人で先頭を交代しながら登るので、何時もに比べて格段に楽である。下着の上にカッターシャツを着ていても暑くない。気温は-2℃程度なのに、カッパを着ても汗をかかない。ウサギが私達に気付いて急いで逃げて行った。私達が直登できない急斜面では、ウサギ特有の足跡ではなく、河童の手のような後足だけで、前足の跡がないのに驚いた。
09:37、766m峰に立つ。正面にはカンデ峰が聳えている。ここから左手にルート取る。右にルートを変える船窪地形を過ぎると、右の雪庇が気になり始める。風も出てきた。素敵なブナ林を黙々と登る。ブナに霧氷が着くと山頂は近い。PWDは騙しのピークでないかと疑り深いが、そんなことはない。
カンデ峰からの主尾根が合流し、10:39-12:05白太郎山々頂に立つ。視界が良くないので石滝川に出来ている雪庇を慎重に観察する。今回も雪庇はなく垂直に切れていることを確認し、山頂に竪穴を掘る。雪は石滝川に捨てるのですぐに穴が完成した。3人のスキーを刺し、その上にツエルトのフライを掛けて屋根を作る。ペグの替わりはストックとカンジキを使う。風と雪を防ぐ程度で良い。明け放れた入口からは祝瓶山が見える筈なのだが、瞬間的に途中まで見えただけで、山頂は姿を隠し続けた。また相模尾根方面だろう、一瞬明るく輝いていた。例によりラーメンを煮て乾杯。
シールを外し、ワックスを塗って滑降の準備をする。先ず一番手は最もスキーの苦手な私である。転倒また転倒と、ノンアルコールビールの筈なのに調子が出ない。吹き溜まりの凹凸に苦労する。PWDもてこずっているようだ。流石にAXLは雪質など関係なく狭い尾根筋をあっという間に追い抜いていく。考えたら私だけが登山靴で2人は兼用靴、ただでさえ劣る私は無謀であった。それでも滑るにつれて調子が出てくる。
12:25に766m峰を右から巻くと、12:28-50雪面に橙色のシートが張られている。思わず「遭難者発見!」と叫んでしまった。シート内を除くと予想通りに、QVHがにたりと笑いながら缶ビールを飲んでいた。スキーを脱いでQVH特製の鍋をご馳走になる。熱々で美味い。何時までもここで楽しんでいたいが、仕事が待っているので、QVHを置いて再び出発する。
ブナ林の滑降は素敵だ。膝下まで潜る重い雪に関わらず、回転もスムーズである。PWDも楽しそうだ。AXLは信じられない滑り方で降りてくる。
杉林を抜けるとOTJ宅が眼下に見えた。あとは一気に下り、13:15OTJ宅に到着した。

【2004年1月31日/白太郎山/菅野享一調査】

PWDより朝日連峰の前域に位置する白太郎山(△1002.8m)に行かないかとの誘いから久々に向かった。HZUとAXLも同行とのことでいつもの懲りないメンバーである。
天候も安定しつかの間の降雪も一休み状態、予定していた除雪もほっぽりだし、先行グループから遅れること1時間、関宅9時の出発である、こちらはワカンなのでスキートレースを利用させてもらうがそれでも20cm程度は沈む。スキーも勾配が急なためジグザグなトレースなので、稜線目指し直登を試みる。腰までのラッセル状態で、スキーを持ってこなかったのが悔やまれる。しばらくするとどんよりした灰色の雲間から青空がのぞき始める。樹木の間から太陽の光が差し込み、枝に積もった綿雪がキラキラ輝く。爽やかな汗をかきながらのラッセルもまた楽しい。山の天気は変わりやすくまた小雪がちらつき始めた。稜線へ出たところでPWDへ無線を入れる。山頂へ到着し乾杯寸前だそうで笑い声がスピーカーの向こうから聞こえる。やはり恐るべしはスキーの威力だ・・・「もう300mくらいだから頑張れ」という声援の中地図を確認するが目前に見えるピークはどうも違う。まだ半分も来てない、まずは頂上手前の766mピークを目指し頑張る事にする。次第に風も強く吹雪状態を呈してきた、このまま登っても稜線上は風当たりも強いだろうと思い、12:30ビバーク訓練を開始した。場所を縦穴状に整地し、ワカンを脱いだらズボッと抜かった。恐るべしワカンの威力・・・持参した尻セード用のオレンジシートを、張り出した枝からぶら下げ、四隅にワカンとストックでアンカーを取り、スコップで椅子とポケットを作った。風さえ防げれば結構温かい。早速持参した鍋料理に取り掛かる。朝家を出るときドタバタして冷蔵庫に鴨肉を忘れてきてしまったことに途中で気づき、境栄屋商店から買ってきた寒ダラを鍋にする。
頃合を見計らったかのように程なく先行メンバーの4人が降りてきた。頂上はよほど寒かったと見え、PWDは鼻から汗を垂らしながらの到着であった。まずはフルメンバーでタラ汁で乾杯、やっぱり熱燗がいいと言うPWDに地酒を温める。CMに向かうというHZUに合わせスキー隊は先に下山となった。しばし残留し独酌なのが少し寂しいところであるが、雪景色を堪能し後を追った。帰りはなるべく急斜面を選んで、持参のオレンジシートでザックを包みボブスレー型で滑り降りる。点発生乾雪表層雪崩に乗って・・・がっ・・・雪が深く楽しみは一瞬にして終わってしまう。登りに3時間30分下りに1時間40分の行程であった。五味沢の寒ダラはサバ缶の味がしたのは気のせいか、やっぱり冬山はやめられない。

画像1  画像2  画像3