登山者情報799号

【2004年04月06日/石転ビ沢〜梅花皮小屋/井上邦彦調査】

前日の快晴から、放射冷却現象で堅雪が見込まれた。05:51大淵橋の袂に車を停める。スキーを背負い兼用靴で歩き出す。出だしの雪崩れは今が盛りだ。道路脇では木出しが始まっていた。
06:14倉手山登山口、標識が出ている。シャツを脱ぐ。倉手山に登る場合は大渕から入るより、梅花皮荘裏の橋を渡った方が安全かと思う(保証はしませんが)。
06:17官民境、「ここより飯豊・・・」と書かれた白い標柱、ここから雪崩危険地帯である。特に砂防ダムのあるトイタ付近は盛りである。上を良く確認しながら素早く通過する。06:35オフタガリの小さいスノーブリッジが今年の少雪を象徴している。ここでピッケルを抜き、滑落に備える。基本的には発電所の方が道を掘ってくれているし、路肩歩く所もあるが、緊張する所も残っている。天狗橋手前の水場は出ていた。
07:07-25飯豊山荘、見上げる梶川峰が素晴らしい。食事を摂り、ヘビシールをスキーにセットして履く。07:57-8:00砂防ダムはスキーを持って越える。ブナ林を抜け、08:19-22スノーブリッジを渡り右岸に移る、緩んだシールを直す。若干進むと沢が埋まっておらず高巻く、こんなことは始めてである。堅雪なのでエッジでシールのゴムが傷まないように気を使って下る。
08:31下ツブテ石の脇に穴が開いていた。そのまま右岸を進むと、雪渓がない。この先は無理と判断し、下ツブテ石まで戻って、本流を横断。スキーを持って雪崩跡を登り、08:43彦右衛門ノ平に上がる。雪崩跡に新雪が積もり、スキーでないと歩きにくいだろう。08:43-09:03ババマクレ手前、下を見て唖然とする、なんとここにも雪渓がない。食事を摂り、スキーを担ぐ。今にも落ちそうな岩の下を過ぎて左岸川沿いに進む。09:12スキーを履く、まさか!ここでも愕然とする。雪渓がない。地竹原の台地の上を進む。カモシカが対岸の崖から私を見つめている。
地竹原を過ぎて恐る恐る雪渓に上がる。滝沢口が開いている。梶川出合前後の雪渓は大きく波打ち薄そうな所もある。水場の大岩は既に頭を出していた。赤滝から上は左岸からの雪崩が盛りである。
10:02-15石転ビノ出合、GPSの電源が入っていないことに気づく。食事をして石転ビ沢に入る。雪はたっぷりと水を含み、私の額から汗が滴る。ヘビシールは正解だったようだ。第1の目標はホン石転ビ沢出合である。雪渓上の小さな雪塊を目標に登る。やがて朝日連峰が見えてきた。11:15-22ホン石転ビ沢出合で食事をする。喉が渇くので水筒に雪を詰める。ホン石転ビ沢出合を過ぎると傾斜が増してくる。左岸からの雪崩跡が広がる。音がしたので見上げると左岸の岸壁に雪塊が空中に浮いている。カメラで撮影していると、次々と連鎖反応を起こして大雪崩になってきた、あわてて逃げる。
11:39雪が締まり急になってきたので、ジグザグに登ることとする。ODDと無線交信、川西山の会寒河江会長の訃報を聞く。
12:08-19北股沢出合、食事を摂る。アイゼン・テープ等をすぐに取り出せるように、ザック中の荷物を入れ替える。右のビンディング数回外れたので確認すると、サイズ調整ネジが緩んでいた。ジルベレッタは緩むのも直しのも簡単だ。
12:35-38スキー登高を諦め、テープでスキーを曳く。踵を越す坪足である。12:56雪が堅い所もあったので、何時でも使用できるようにピッケルを抜き腰バンドに下げる。息が乱れ50歩毎に立ち止まる。足場が崩れるので大股となる。右手にピッケル、左手にストックとして、滑落に備える。13:20小屋の先端が見えたが、思うように身体が進まない。
13:32-15:13ようやく梅花皮小屋に到着する。さっそく管理棟の掘り出しに取り掛かる。表面の氷をピッケルで砕き、鍵を開錠するが、ドアは動かない。身体を掘ったスペースに置いて力任せに押すと、微かに動いた。凍り付いてはいないようだ、とすれば中に雪が吹き込んでいるのだろう。何度もドアを押してようやく身体を管理棟内に潜り込ませた。中の雪を外に出し、ストーブで雪を解かし水を作る。今度は本棟である。梯子を登って冬季出入口を開けようとするが、微かに動くものの不安定な体制では力が入らない。梯子に結んであったスコップでドアを掘り出し、再び身体でドアを少しづつ押し広げる。中の雪を外に放り投げ、一応開け閉めができるようにする。冬季出入口も整理したいが、時間がない。管理棟でラーメンを煮て腹を満たす。無線でODDに遅れると自宅への伝言を頼む。
陽が陰ってきた石転ビ沢をスキーで下る。表面が軽くクラストしており、斜滑降時は問題ないが、僅かでも力を入れるとスキーが沈む。また新雪の厚さにより雪質の変化が激しい。私はターンする時に片足過重になるので、このような時は必ずバランスを崩して転倒する。キックターンと斜滑降で下ることにする。北股沢出合が近くなったので、曲がろうとすると、予想通りスキーが抜かり転倒を繰り返す。北股沢出合を過ぎると雪質が安定して片足荷重でも曲がるようになる。雪崩れ跡の新雪は斜滑降には問題ないが回転しようとすると性質が悪い。
15:54ホン石転ビ沢出合上の雪渓に、血の跡と鳥の足跡が散乱しており、何かを引きずったようだ。辿ってみると、ウサギの胴体の一部に2本足がついた状態で雪渓上に転がっていた。残酷のようだがこれが自然界の現実である。おそらく鷹か鷲に襲われたものだろう。
足が疲れてきたので、いい加減に回転しようとすると転ぶ。大腿部の疲れが著しい。ストックを雪面に突き刺すと40cm程沈んだ。
16:09石転ビノ出合を通過する。そのまま16:14梶川出合を通過し、16:20-26地竹原の台地でスキーにワックスを塗る。婆マクレは左岸をへつるように滑り、16:38スキーを両手に持ってキックステップで彦右衛門ノ平に上がる。地竹沢のデブリをスキーのままで下り、水の流れる急斜面を強引にトラバースする。その後はブナ林の中を歩いて、17:04スキーを持って砂防ダムを越える。再びブナ林を歩き、17:30飯豊山荘通過する。
空腹がひどいので、天狗橋でウイダインを飲む。林道を進むと雪崩のデブリが連続するので、17:49-53スキーを担ぐ。18:01吹き付けでは、疲れているので万一に備えピッケルを抜く。今日発生した茶色のデブリがあった。吹き付けを過ぎ、18:09-11スキーを履く。快適に進み、最大の難関であるトイタ(砂防ダム脇)の雪崩地帯を急いで通り抜ける。18:26官民境を通過すると暗くなってきた。梅花皮荘の明かりが点る。スキーを持ってデブリを登り、最後はスキーで歩き、18:45車に到着する。

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2004年04月05日
4月06日の下山コース