登山者情報812号

【2004年05月15日/梶川尾根〜石転ビ沢/山田亘調査】

 梶川尾根は、2001年7月15日に下っている.そのときは急な下りに耐えきれず、湯沢峰で足が笑ってしまった。あの急な尾根を登りたくなり、下りで石転びを使い日帰りすることにした。03:00前、新潟発。新発田から〆切橋でR290に出る。R113に出ると光兎山のシルエットが大きく見え、ほっとする。自宅から天狗平まで、96キロメートル1時間26分かかった。
 04:35天狗平(410)、瀬音を聞きながらゲートを越え、右手の尾根に取り付く、少し登り左に回り込んだ後、尾根に乗る。文字通り「木の根、岩角に縋る登り」だ。一登りで04:42楢の木がある(450)。この先、姫小松が目立つ乾性の登路となる。04:47登路に一枚岩があり(500)、右手に文覚沢を隔てて丸森尾根に日が射している。04:56一瞬斜度が緩み(550)形のよい姫小松がある。目の前にはムラサキヤシオがあり、見上げると姫小松の美しい登路が楢の木曲がりへと
続いていた。歩き出すと、楢とぶなと姫小松の混ざった気持ち良い登路で、つらい急登という感じはない。けれど振り返ると姫小松が落差を伴い続いていて、やはり急なのだとわかる。やがて登路が左に曲がり斜度が緩み、楢の木が生えている場所に出た。ここが楢の木曲がり(690)で、05:15〜05:19玉川の流れと飯豊山荘を見下ろし休んだ。先週はこの直ぐ下にムラサキヤシオが咲いていた。この辺りからナラが多くなる。05:23登路右手にモニュメントのような枯れ木がある。ナラ
の白い木肌と光を受けた黄色い葉の中を歩き続ける。05:33斜度が緩み(790)行く手の樹間から湯沢峰が見え登路脇に雪が出てきた。ブナやムラサキヤシオを見ながら歩くうち05:42左手樹間からダイグラが見え始める。更に進むと05:53ダイグラが休み場の峰の下から、宝珠山の岩稜位まで見える。休み場の峰の下に雪が残り登りにくそうだ。06:04斜度が緩み、旧湯沢峰付近(970)。青空にタムシバとぶなが伸びている。少し進むとヤブの上から石転び沢上部が見えた。06:14左手の木が切れた所で雪の向こうにダイグラ上部が見える。梶川尾根はダイグラ尾根の観察にもってこいだと思う。タムシバや姫小松、ムラサキヤシオを見ながら、緩いアップダウンを経て06:22湯沢峰(1021)。雪に新緑が映え、その向こうにダイグラ尾根とクサイグラ尾根が見える。行く手には石転び沢が中の島から上を見せていた。
 少し進むと三本カンバが見える。ここからは滝見場からの登りは大した斜度でなさそうに見える。目の前の雪面をブナ林に降りていく。林の入り口にムラサキヤシオがある。中にはいると登路右手の二本のブナの間に水場への道が続いていた。鞍部から1030mピーク西面をトラバースする。振り返ると雲海の上に朝日が見え始める。ムラサキヤシオの咲く夏道を少し歩く。振り向くたびに朝日が出てくる。以東岳も出て光兎山も雷峰から東が出てきた。いつの間にか雪のピークを歩いている。高度計を見て「そろそろ滝見場のはずだが」と思う。左手に夏道が南に伸びている。立ち止まると、ドウドウという音が聞こえる。左手を見ると姫小松の樹間から梅花皮の大滝が見え、07:05〜07:18滝見場(1145)。石転び沢を見ていると、後から鈴の音がして一人やってきた。天気やダイグラの話をしながら登路を観察する。三本カンバまで随分急に見える。アイゼンをつけて歩き出す。少し歩き振り返ると湯沢峰からの雪面の下りと朝日連峰がよく見える。それにしても見た目通りの急な登りだ。後を歩く人もつらそうだ。途中斜度が出て藪に突っこんだというか逃げた。ムラサキヤシオをすり抜け夏道を少し歩く。再び雪に出て急な登りを続ける.ちょっと歩いては振り向いて朝日連峰を見る。雲海が上に上がってくる気配がない。灰色っぽい青空だが見通しが効く。今日は不思議な日だ。振り向くとブナ林の緑から白い雪面が絵のように続いている。07:57五郎清水は雪の下だ(1360)。08:01振り返ると、まだ飯豊山荘の屋根が見える。ここは地形図で見るとちょうど湯沢が突き上げてくるあたりで納得する。
 急な登りに疲れた頃、左手に夏道が見え思わず近づいていく(1390)。08:10〜08:22夏道で休憩(1420)。ここで先程の人に抜かれる。異口同音に「急ですね」という。歩き出すと08:25沢の底にまだ飯豊山荘が見え、思わず笑顔になる。この登路のダイレクト感が好きだ。全く無駄のない登路だと思う。再び雪の上に出て三本カンバへの登りにかかる。この最後の登りは標高差の割に短く感じる。振り返ると日本海と粟島が見える。ほどなく夏道になり、08:43〜08:51三本カンバ(1540)で休む。石転び沢も大分大きくなり、梅花皮小屋の管理棟がはっきりわかる。休むうち梶川峰の下の方からカモシカが出てきた。左手の沢を2本漕いで、もっと来るかなと思ったが、藪に入ってそのままになった。アイゼンを外し、斜度の緩んだ中歩き始める。もう一度雪に乗り、09:17〜09:28梶川峰(1700)。本山から、エブリサシまで大きく見える。素晴らしい展望だが、連峰が本山からエブリサシで限られているような閉塞感を感じる。先程の人も来てダイグラ談義をする。丸森尾根に回るという、この人と別れ歩き出す。夏道を歩き雪面の緩い登りになる。標柱直前で雪面を門内岳に向かう新しい足跡を見る。 10:14〜10:20扇の地紙(1889)。
 登路を振り返ると正面に蔵王が見える。行く手には二王子への道が続きすごい開放感がある。十文字のこの展望こそ、「大飯豊」だと思う。歩き出すと朝日の上に月山と鳥海が見える。普通は、遅くなるとガスが湧いたりして展望が悪くなるはずなのに、今日は本当に不思議な日だ。二王子と胎内尾根を見ながら門内へ向かう。新潟側から見るよりも雪が残っており、自分を招いているようだ。門内岳にオレンジ色の人影が見える。小屋に近づくと、オレンジの服を着た人と話している、落ち着いたテンションの人がいた。声をかけるとやっぱりヒロタンだった。10:49〜10:59門内岳(1887)で展望を楽しむ。今日は新潟側の展望がよい。二王子、五頭、角田、弥彦、越後白山、粟、浅草、守門、越後三山、海沿いに米山が三角形の形で見える。さらに遠くにぽっこりしたのや平べったいのが見える。すっかりご無沙汰のため山座同定ができず、向こうの方にも行かなければ、という思いを強くする。二王子から続く稜線を目で辿る。一の峰が正面に挑発する
ように見え、ひきつけられるようだった。門内沢をスキーで下りるというヒロタンに挨拶して歩き出す。
 そろそろ腹が減ってきた。稜線に出て、緊張が解けたのか生あくびもしきりに出る。二王子への道を見ながら、ゆっくり歩く。鞍部付近から北股への登りは夏道が出ていた。行動食だけで来たせいか、北股への登りで頭がくらっとした。北股岳直前で振り返ると胎内尾根から梶川尾根へのラインがきれいに見えた。12:10〜12:23北股岳(2024.9)で展望を楽しむ。本山の展望は相変わらず素晴らしいが、目が慣れたのか感動が薄れた気がする。居合わせた人と写真を撮る。一枚は本山をバックに、もう一枚は二王子を入れた。梶川尾根の向こうに光兎と鷲ヶ巣が見える。鳥海は大分霞んできた。石転び沢を見下ろすと、下の方に水の流れが見え、5月3日より大分雪渓が縮小したように見えた。二王子の向こうに佐渡を見ているうち越後の山も霞んできた。湯の平の下山口にロープが張られているのを確認して歩き出した。梅花皮小屋を見下ろしてから、途中まで雪を使い快適に下った。
 12:38〜13:11梅花皮小屋の前で加嶋屋の鮭茶漬で白飯を食べる(1850)。やっぱり米の飯はいい。休むうち鳥海は消えてしまった。治二の清水は出ていなかったが、奥の方で採れるらしかった。しかし立ち入り禁止と書いてあったので入らず、水代わりのリンゴを食べた。稜線の風も強くなったのでアイゼンをつける。歩き出しに、北股を見ると雪の着き方が危うく見えた。雪は5月3日よりやや固くなっており、13:20蛇行するトレースに乗ってしまった(1740)。しかしこのトレースはアイゼンを履いてない人のものだった。恥に思い、トレースを外れ直線的に下りた。それでも最初のうちは思わず身体が逃げてしまうような斜度だった。13:24標高1710m付近で石転びを振り返ると、登る人は皆蛇行していた。13:30草付きの下の方が少し出ており随分早いと思った(1600)。13:36北股沢の出合(1470)、13:49〜13:53本石転びの出合付近でアイゼンを外す(1180)。降りていくと14:10石転びの出合付近(850)でヒロタン達が宴会をしていた。石転びの出合から先は雪渓が崩壊していたり、垂れ下がっているところがあったりで気を使った。14:22梶川の出合(690)を過ぎたところで、14:26夏道に戻った(690)。下つぶて石まで来ると緑も濃くなり石も見えず寂しい感じがした。砂防ダムに近づくとブナを撮りながら歩いた。15:38砂防ダム(500)、15:49温身平(450)を過ぎ、16:08天狗平(410)。気持ちいい山行だった。

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