登山者情報834号

【2004年07月19日/梶川尾根〜石転ビ沢/井上邦彦調査】

石転ビ沢の状況を確認するため、梶川尾根から登った。危険と判断した段階で丸森尾根下山に変更する予定であった。JO7KIKは仕事で後から追いかけることになっていた。天狗平までの間は、大雨の土石流跡が所々に見られたが、現在は撤去されている。
天狗平ロッジは既に再開されている。使用したい方は高橋弘之0238-62-3885(夜間62-5124)まで連絡をして欲しい。登山口でODDから梅花皮小屋まで上げる荷物を渡されザックが膨らむ。
06:00天狗平発、コメツツジが咲いている中を3人で登る。05:28楢ノ木曲リ通過、時折雨が降る。07:08-16湯沢峰で休憩、稜線はガスに覆われている。4名パーティを追い越す。滝見場手前でカッパを着る。07:50-55滝見場で石転ビ沢の状況を確認するが、中ノ島は霞んでいる。
08:23-38五郎清水、奥の清水は昨年の崩壊のままでやや使いにくい。手前にホースで汲みやすくした水場があるので、そちらを使用したほうが良いだろう。ヤマトウバナ・モミジカラマツが咲いている。08:58三本樺は視界なし。09:02-10MDEと会い、情報を交換する。ミヤマコウゾリナが出てきた。トットバノ頭は旧道を登り復元状況を確認する、土砂の流出は収まったようだ。
09:29-37梶川峰で休憩。ここで登りはひと段落である。この先、イワイチョウ・ゴゼンタチバナ・キンコウカ(盛)・ヨツバシオガマ・ニッコウキスゲ・ゴゼンタチバナが咲いていた。10:07扇ノ地紙で稜線に出る。コバイケイソウ・ニッコウキスゲ・クルマユリ(盛)・ハクサンフウロ・ムカゴトラノオ・ハクサンボウフウ・イワテトウキ・タカネアオヤギソウ・ミヤマコウゾリナ・ヤマトウバナ・ミヤマホツツジ・クチバシシオガマ・タカネツリガネニンジン(始)・シラネニンジン・ミヤマアキノキリンソウが咲いていた。
10:28-20門内小屋で管理人に異常のないことを確認し、小屋で休憩する。KDGのOB2名に会う。ギルダ原には、チシマギキョウ・ヤマハハコ・タカネマツムシソウ(始)・タカネサギソウ・シロウマアサツキ・ミヤマアキノキリンソウ・ニッコウキスゲ・エゾイブキトラノオが咲いていた。11:23北股岳山頂通過、風雨のためかKIKとの交信ができない。
11:37-13:58梅花皮小屋で身体を温めながらKIKを待つ。OTJと2人で岩塊を見に行く。小屋からj僅かに下り、斜面の亀裂を利用して左手にトラバースすると問題の岩に出た。岩が小さくなっている。足元の雪渓を除くと大きな窪みが点々と続いていた。岩塊の大部分は昨夜から今日にかけて落下したものと思われる。それでもまだ岩は落ちきっていない。さらに上を見ると何時でも落ちそうな岩の破片がごろごろしていた。小屋に戻りメンバーとコースを協議し、石転ビ沢を下降しルートの状況を調査することとした。
ヘルメットを被り、速度を上げるためにアイゼンは使用しないで下降することとした。小屋の下の残雪を下り、台地から沢上の登山道を下り、7〜8m程の急斜面雪渓を斜めに下る。雪渓は固くなっているが軽登山靴のエッジを利用し、ピッケルを構えて素早く中ノ島に移動する。中ノ島上部は岩塊の直撃を受ける可能性がある、息をつくまもなく中ノ島を下ると、両側沢の雪渓が切れていた。ここまで下れば一安心である。恐らく大岩塊はまっすぐに落下せず、上から見て左にカーブしながら落下し、中ノ島の左の沢を経て雪渓崩壊地で止まったものと考えられる。しかし残りの岩塊が同様のコースを取るとは限らない、中ノ島上部もしくは斜上コースを直撃する可能性は十分に考えられる。
中ノ島末端から雪渓を下り黒滝左岸にいったん上がる。黒滝には亀裂が入り始めていた。北股沢出合の水場は開いていた。上を見上げると、全体としては雪渓が切れ始めているので落石の可能性は比較的少なくなっている。ただし長雨の影響で浮石が多くなっていることが予想される。
ともあれ最大の問題は、岩塊の残骸である。21日朝梅花皮小屋OTJとの交信では、ガスのため視界が効かず、落下コースが予想できないとのことであった。
北股沢を過ぎて暫く下ると、雪渓に亀裂が入っていた。ホン石転ビ沢は途中で半分くらい崩壊し落石の危険性は低くなった。左岸の枝沢付近の雪渓が薄くなっている。ホン石転ビ沢出合を過ぎるとまた亀裂が出てきた。下るにつれて亀裂の数が増え、左岸寄りには崩壊の危険性を感じる箇所もあった。時折雨が激しく降る。見下ろすと石転ビノ出合を流れる水は濁った濁流となっている。
渡渉の危険性を少しでも減らすために、雪渓の比較的安定した所を選んで左岸に取り付く。左岸を下ると川岸が濁流に洗われていた。やむなく藪を漕いで高巻きし石転ビ沢と門内沢の間、15:24幸七尾根末端に降りる。
ここで食事を取りながらルートを考える。合流点から下流は雪渓もなく凄まじい濁流で問題外である。門内沢に架かる雪渓は後退が進んでおり、仮に雪渓を渡ってもその後に岸壁のトラバースが待っていて、危険性が高すぎる。残るは門内沢の渡渉しかない。流れを十分に見定めルートを決める。
鈴木に5mテープをもやい結びで固定する。末端を8の字結びとし私が持つ。ピッケルは必ず川上側に付くこと、滑ったら声を出すことを確認し、先ずは私が門内沢に入る。私と鈴木が渡りきるとKIK、つづいてKZMが渡る。渡りきった所で梅花皮小屋のOTJに無線で無事通過を報告する。
シャワーのような赤滝を過ぎ、梶川出合もそれ程問題なく通過する。大雨による登山道の崩壊を心配していたが、彦衛門ノ平の小沢が多少抉れていた程度で、問題はなく通行できた。17:30天狗平に到着。
なお、石転ビノ出合は平水時であれば、門内沢と石転ビ沢を問題なく渡渉できる。

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