登山者情報868号 (投稿)

【2004年10月16-17日/ダイグラ尾根/山田亘調査】

記録
 ダイグラ尾根は、桧山沢と大又沢の間から立ち上がり飯豊山山頂へと突き上げる長大な尾根だ。ダイグラを初めて歩いたとき自分の山行観は変わった。なかなかまともなタイムで歩けないが、他所の山域に出る前と、戻った後、できるだけダイグラを歩くようにしている。
10月16日
 04:00起床、04:50新潟発、バイパスに乗り〆切橋経由でR290からR113。赤芝発電所から県道に入り、川入付近で冠雪した主稜を見て驚き、喜ぶ。06:30頃天狗平着。06:51天狗平を出てすぐ手袋を忘れたことに気づく(410)。しかし新雪の魅力には換えられずそのまま進む。広い林道を歩き07:09温身平で、右手に冠雪した主稜を見る(450)。行く手にダイグラ尾根下部があり、その右後ろの尖ったピークは宝珠山だと思う。砂防ダムで林道は終わり、玉川の左岸沿いに付けられた細い道となる。一旦、足場が悪くなり、また足許に余裕が出てきて桧山沢と大又沢の出合を通過し、程なく07:37桧山沢の吊橋を渡る(470)。桧山沢と大又沢の出合方向に少し戻ってから、急登が始まる。520m位で尾根に合わさると、白い丸い石が傍らに集められている。信仰の名残と聞いている。ここから666mピークまで、600m前後の岩場2カ所を除き、姫小松の急登が続くが、梶川尾根程ではない。シャクナゲに覆われた岩を過ぎると程なく08:08 666mピーク。ピークというより尾根の斜度が緩んだところで、姫小松が何本かある。再び斜度が出て、08:42畳のような岩から、尾根を桧山沢側に外れる(840)。樹間越しに主稜が見える。冠雪は梶川峰の上、1800m位からあり、烏帽子岳付近が一番深そうに見える。予報では晴だったが内陸側から雲が出て高曇りだ。西側の日本海には青空が残っている。尾根に戻ると、行く手に落雷に打たれたような枯木が見え08:59池の平(926)。
 この先斜度が緩み、長坂清水まで緩やかなアップダウンが続く。歩き出してすぐに、種蒔の池。枯れかけた稲穂が水面に揺れている。行く手に紅葉を前景として休場の峰が迫る。1170m付近に針葉樹がぽつぽつと出ており米栂の平とわかる。緩いアップダウンを続けながら進むと、楢の木と標柱が見え09:21〜09:28長坂清水分岐(970)。いい水場だが、今までの記録では、ここで30分使っているので、汲まずに休む。歩き出し、登路右手の倒木を越えた辺りから強い登りが始まる。滑りやすい赤土の斜面で、見通しがいいため、なおさら急に感じる。右手に米栂がぽつぽつ見えてきて10:01米栂の平(1170)で一時的に斜度が緩む。この先、休み場の峰まできつい登りが続く。梶川尾根のような手がかりのあるスカッとした登りではない。手がかりのあまりない、滑りやすい急な赤土の道が続く。10:29〜10:41休場の峰(1320.7)。行く手は紅葉しているが、宝珠山の岩稜から先はガスに隠れている。北の方に日本海から広がる青空があり、その中に光兎山が三角形の姿で浮かぶ。北東には朝日連峰が続き、月山がガスの後に少し見えるが、鳥海は見えない。休んでいると07:30に天狗平を出た人に抜かれた。
 歩き出し岩と苔と青松と紅葉に彩られた道を桧山沢側に回る。1340mピークを越えると、千本峰の紅葉に、枯れた針葉樹の灰色が冴える。緩やかなアップダウンを経て、千本峰の登りとなる。倒木を潜り11:31千本峰の標柱(1430)。千本峰は細長く、11:39〜11:45千本峰(1450)、11:53千本峰の岩場(1420)と時間がかかる。岩場を左脇に降り、針葉樹越しに主稜を見る。1499mピークの西を巻き鞍部から宝珠山の登りとなるが、その少し上で12:26ダケカンバが登路を覆っているのが印象的だ(1480)。この先ダケカンバが多くなる。緩やかな登りが続く。登路はわずかに大又沢側に付けられている。13:22 1677ピーク直下で、7月3日に雪渓にはまった跡を見る(1660)。そこだけ草がはげており、一目でわかる。多分何人か、はまったと思う。13:42宝珠山の肩(1730)。宝珠山の岩稜からガスが取れそうだ。宝珠山の大又沢側を巻いて14:20〜14:29宝珠山の岩稜(1830)。ガスが取れ全山見える。ここは飯豊の峰々の視線が一点に集まる所で、晴れていれば、山々に受け入れられたような思いを味わえる。コーヒー豆のように二つに割れた石がある。熊狩りの神事か何かで、強い熱を加えられたのかもしれない。この辺りから桧山沢側はハイマツ帯となる。岩稜直下にハイマツに囲まれた空洞がある。ビヴァークするならここと決めているが、動物の巣穴かもしれない。この先ガスに入り展望がなくなる。1780m鞍部までの下りは、長くもどかしい。緩いのだが、アップダウンもあり、大又沢側につけられているため足場も良くない。鞍部から、がれた登り少しで、道は右手の藪に入る。藪を抜けたところで右手の石の後に1969mピークを巻く登路が続くが、左手にも踏み跡があり少しわかりにくい。1969mピークの巻きに入ると登路に雪が見え始め、駒形沢から冷たい風が吹き上げてきた。半袖のアウトラストにネルシャツでは肘から先が寒く、ゴアの上衣を着た。下はアウトラストのトランクスだがショーラを履いているので風を感じなかった。ピークを巻き終わり南に向きを変えると寒気が増した。雪も少し増えたが登山靴の踵程度で問題なく歩けた。手は、手袋を忘れたものだからこたえた。ガスも強くピークも目視できず、赤ペンキを目で追いながらのろのろと歩く。先週の谷川岳で高度計を壊し現在地特定がしにくい。ガスの中、前方にぼんやりと標柱が見え16:38飯豊山(2105.1)。手が冷たいので、ダブルストックをザックに付け、ポケットに手を突っこみ歩く。北風とガスは小屋まで続いた。17:00本山小屋の前で、家に到着の電話をする(2102)。小屋に入ると、暗がりから栃尾なまりで静かに話す声が聞こえた。声を掛けるとやっぱりヒロタンだった。この人とは偶然会うことが多く、会うときは晴れることが多い。隣を空けてもらい、ダイグラを7時間で来たというSさんとの山談義に混ぜてもらう。自分の掲示板に書込んで、19:30頃寝た。22:00頃外に出ると吾妻の上にオリオンが出ていた。地平線近くは星が見えず、明日は大展望というわけではないが、まずまずの展望だろうと思いながら寝た。
10月17日
 04:40起床。小屋の一王子側に出て日の出を待つ。手が寒く、昨日履いた靴下を手にはめる。吾妻の西にオレンジの線が滲むように広がり05:47山の上から御来迎。神社に廻り、飯豊連峰北部に手を合わせると、自分の身体も朝日を受け赤く染まる。初めてこの展望を見たときは、頭の芯が痺れるような感覚があった。今はそういうことはないが、おなじみの景色に囲まれた安心感がある。小屋に戻り人参入りパスタとベーコンを食べる。ブナハリ汁を食べているヒロタンに挨拶し06:42小屋を出る(2102)。写真を撮りながら07:05飯豊山(2105.1)。寒い。かなりの強風で、カメラを手渡しするときの相手の声が聞きとれない。2枚撮った写真も顔が歪んでいた。山頂からダイグラ尾根に踏み出すときが最も風の抵抗が強く、一旦体が押し戻されるほどだった。御前坂も風が強く手が痺れカメラの操作が出来なくなった。昨日下から上げた2Lの水が500cc位になっていたので、雪を拾った。1780m鞍部からの登り返しは緩いが長かった。08:50宝珠山の岩稜で山々に囲まれ展望を楽しむ(1830)。岩稜を降り、大又沢側に入ると風が止み、手に感覚が戻ってきた。09:34宝珠山の肩付近で先程の雪を溶かし水を飲む(1730)。この時は良かったが、この後腹が緩くなって困った。宝珠山の肩から鞍部まで優しい感じの稜線が続く。もうすぐ鞍部というところで阿賀野のHさんとスライドする。10:27ダケカンバが登路に覆い被さる所(1480)を過ぎ1499mピークの紅葉を見て、鞍部からピークの巻きに入る。巻き終わると行く手に千本峰の白い岩肌が迫る。見た目標高差がありそうだが、南北に長いピークなので緩やかに登っていく。11:00千本峰の岩場(1420)を右脇から登ると、右手に宝珠山が松の額縁に入ったように見える。11:09千本峰(1450)で青空の中、宝珠山に別れを告げ、11:14千本峰の標柱(1430)を過ぎ緩やかなアップダウンの後、紅葉の1340ピークを登り返す。これは岩峰を真っ直ぐ越す、モヒカン刈のような登路で、随分急に見える。この先すぐ休み場の峰だと思ったが水平距離がまだあり、がっかりする。12:06休場の峰(1320.7)。その少し先の日陰で楽しみにしていた梨を食べる(1310)。透き通るような甘さが喉にしみ通る。12:22歩き出すと滑りやすい急な下りになる。13:10長坂清水分岐(970)を過ぎると行く手に池ノ平の枯れ木が見えた。緩いアップダウンが続く。種蒔の池直前で平らな石に足を滑らせ掌を打つ。13:27種蒔の池(920)。程なく13:30池の平(926)で休んでいるとHさんが戻ってきた。高度計の話をして840mで尾根に戻った後別れた。14:08 666mピークで水を飲み干し、急な尾根を下る。14:40吊橋(470)、15:05温身平(450)、後は林道を梶川尾根を見ながら歩いた。梶川尾根が落ちていき目の前に迫り15:26天狗平(410)。飯豊山荘で風呂に入り新潟へ戻った。ダイグラを歩くと落ち着く。剣の早月尾根や甲斐駒の黒戸尾根に通じる美学があると思う。なお、今回は筋肉痛は出ませんでした。      

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