登山者情報883号

【2005年01月29日/大里峠〜沼山/井上邦彦調査】

同行者:吉田岳・横山利夫
町境縦走第3弾である。エノカッチ付近の地形と前夜からの放射冷却現象を考慮し、ピッケル・アイゼンの他に、ハーネスと40mロープを準備した。
05:30道の駅横根集合。先ずは中田山崎の酒店と片貝に各1台の車を配置し、玉川の大里峠登り口まで戻った。
06:36スキーにシールを付けて玉川集落の大里峠標柱を出発する。エノカッチの上に月が出ており荘厳な感じがする。
数種類の動物の足跡が縦横に走っている。指が開いているので小猿と知れる。砂防ダムから右岸沿いに進む。07:05-16尾根取り付きでNIYがスキーの不調を訴える。登山靴がスキーから頻繁に外れるので、兼用靴に取り替えるため下山したいとのこと、私も無線機の電池を予備に換えたばかりなので、ついでに持ってきてもらうこととした。さらにNIYの無線機が不調、周波数の設定が奇数しかできないとのこと、AXLの無線機を持ち、荷物を置いて空身で1人戻る。
私とAXLはのんびり先に進むこととした。杉林を抜けて07:28-40休憩。送電線のために伐採された雪原には、雪の結晶が氷の針となって重なり、雲母状に光が反射する。一面は宝石を散りばめた様に輝いている。
AXLが手ノ倉沢対岸に猿の群れを見つけた。鉄塔のすぐ側で磁石を出したところ、狂っているのが確認できた。最後のブナ林を左手の斜面から巻くように登ると、08:29大里峠から僅か南の県境に出た。
ひと滑りで08:31-35大里峠に到着。前回から比べ雪が深くなっていたが、神社の前で記念撮影をし、県境を南に戻る。
08:38-48汗を流して追いついてきたNIYと合流し、食事を摂る。ここから県境尾根は快適である。東側に小さな雪庇があるが、さほど気にならない。それより眼前に聳えるエノカッチの急斜面が問題である。高度を徐々に上げると、朝日連峰・蔵王連峰が遠謀され、光兎山の山頂部も見える。前回は吹雪で見えなかった峰々が広がる。眼下には玉川集落が確認できた。
いよいよ急斜面に取り掛かろうと言う所、標高630m09:28-48で輪カンジキを履きスキーを担ぐ。雪面は海老ノ尻尾の破片が敷き詰められ硬い。キックステップの要領で登る。ようやく小峰に出ると、ここから右手に折れる。巨大な尾根が合流する前衛峰までは痩せた尾根で、左に張り出した雪庇の状態が分からない。カモシカのトレースが急な雪面を横切っている。
片手にピッケル、片手にストックを持ち、AXLが急斜面に挑む。雪の層があり足場が崩れる度にピッケルを差込み、滑落を避けながら慎重に進む。最後は、雪庇を壊して前衛峰に攀じ上がる。
前衛峰でスキーを履くと、再び快適な尾根歩きとなる。10:39-11:00エノカッチで休憩。11:30-38サムサ峰の真ん中に窪地がある。ここで食事を摂る。左の峰にルートを取ったところ、右尾根が正解なことに気付き戻る。AXLとHZUは適当な所で強引に雪庇を越えたが、遠巻きに迂回したNIYに抜かれた。雪質が変わりスキーが重くなったので、シールに直接ワックスを塗る。ブナが素敵だ。
12:12-32突然トラブルが発生した。先頭を歩いていたHZUが、雪面から出ている木の枝を左のスキーで踏みつけ、右のスキー板を枝から抜くように持ち上げようとした時、いきなり左足が沈んだ。雪上に残ったスキー板を見て、最初は意味が分からなかった。左足は雪の穴に落ちており、4個の穴が開きビンディングのないスキー板が目の前の雪上にある。左足を確かめると、ビンディングは登山靴に固定されたままである。よく観察すると、ビンディングのネジが折れている。応急的な修復は不能である。まずはこの穴から脱出することが肝心と、もう片方のスキーを外し這い上がろうと力を込めた瞬間、ザックを担いだままズボッと身体が埋もれた。穴に潜ってみると、大岩の前の空間が広い。
AXLとNIYに山頂で待っているように伝え、何とか穴から脱出し、輪カンジキを履いて一人登る。クラストしている西側から山頂を目指す。
12:45-14:07沼山々頂で2人と合流する。無風快晴!AXLが炊事場を作っていた。ベニヤの板にストーブを載せお湯を沸かす。蓋を取ろうとしてAXLがコッフェルから熱湯をこぼす。幸い火傷はなかったが、HZUから「コッフェルの蓋は逆さま」と注意を受ける。
いよいよ下山に取り掛かる。AXLとNIYはシールを外し滑降の準備を行う。始めにHZUが下る。かなりの急斜面のため柴を掴んで落ちるように下る。雪庇の大きさやルートの状況を無線でAXLに送る。AXLは西側の林から巻いて下るが、NIYがかなり苦労しているようである。
最低鞍部に着くと、雪庇がなくなる。ここでコンパスを地形図に合わせ、目標物を定めて降りる。平坦な地形で目指す尾根は見えない。広い平坦地から突然尾根が出てくるので、視界のない時は難しいであろう。輪カンジキに雪が付着し、鉛の靴を履いているような感じである。AXLが颯爽と追いついてくるが、NIYは慣れない登山靴での滑降に四苦八苦している様子、なかなか追いついてこない。
尾根を視認し、輪カンジキのHZUが先行し、AXLはNIYを待つことにした。スキーで下るには格好の尾根が続き、ブナの平坦地を過ぎると尾根が細くなる。尾根の下部にトレースが見えたので、誰かが登って来たのかと思ったが、良く観察してみるとカモシカのようだ。
490m15:04-27ここから松が出て尾根が痩せ始めるので、ここで二人を待つことにする。NIYがスキーを諦め輪カンジキに切り替え、ようやくAXLと合流したと無線が入る。ダイグラ尾根・飯豊山・天狗岳を見ながらゆっくりとする。来た尾根を見上げると、日が翳り始めた。
3人が合流し、下山を始める。尾根上をスキーでは下れないのでAXLは、側面を下る。松の落とし穴にはまってNIYがもがいている。300m16:02杉林となる。再び雑木林となると、アガリコが点在し、里山の雰囲気が出てくる。220m16:13NIYの輪カンジキが壊れたためAXLの輪カンジキを借りるが、慣れない締め方のためすぐに外れる。最後は輪カンジキを手に持ち下る。
16:30県道に出ると、AXLの軽トラックが見えた。

今回のコース

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