登山者情報890号

 【2005年03月19日/大境山-枯松山/井上邦彦調査】

起床してザックに山道具を詰め込むが、ピッケルが見つからない。集合時間が迫ってくるので山岳救助隊の倉庫に向かう。残念ながらここでも見つからず、仕方なくピッケルなしで出発する。
梅花皮荘に車を置き、中田山崎まで戻る。210m06:33発雪崩沢橋袂の除雪路に車を置いて、雪上に登る。今回は藪が予想されるのでスキーは使わないことにした。2人とも高坂カンジキの改良型を始めて使用する。雨量計脇を過ぎ、スノーブリッジを慎重に渡り雪崩沢と堂ノ沢の間の尾根に取り付く。
秋に見た雪崩沢の滝を確認し、ルートが間違っていないことを確信する。1箇所、雪が切れており右側から巻くように越える。改良型カンジキは従来型より大きいので、細かい足捌きには不便感がある。
やがて平坦なブナ林に出る。上部を眺めて方向をやや右手に取るが、顕著な尾根は比較的下部で森林がなくなるので、右寄りの森林を目掛けて登ることとする。輪カンジキの場合は左手の大セド峰に直登する尾根も使えそうであり、雪崩を考えるとその方が良いかも知れない。
雪煙が見えた。尾根に出ると風我ありそうだ。700m07:59-08:09森林限界でザックを置き食事を摂る。ここまでは順調である。
尾根近くになると、雪面がクラストしていた。足元から小さな雪崩が出たので観察をすると、アラレ層が滑り面となっていた。大きな亀裂が行く手を阻んだ。いったん左下にトラバースし登り直して雪庇を越える。尾根に出ると県境主稜が広がり、右手にはエノカッチや沼山が見えた。県境に近づくにつれ風が出てきた。
880m08:40県境に到着する。大セド峰から大境山に至る主稜線は雪庇と急な斜面があるので、いったん沼川の上流に下り、ブナ林の連続している尾根に取り付く。
雪が次第に硬くなってくる。ピッケルを持ってこなかったことが、つくづく悔やまれる。08:53-09:02ブナ林が途切れる手前で、無理をせずアイゼンに履き替え、確実に登る。急登を過ぎると大境山は緩やかな起伏が山頂まで続く。右下には真っ白な大石ダムと葡萄鼻山が見えた。
1,155m(地形図は1,101m)09:40-45大境山々頂大境山々頂には三角点が露出していた。ここでお互いに記念写真を撮る。山頂から南方の主稜を覗くと、やはり横向キ付近が厄介そうである。また枯松山直下には林がなく、両側が切れ込んだ雪稜であり、ここも手を焼きそうだ。
山頂から下り始めるといきなり急斜面になる。ピッケルがない心細さもあり、ルートをやや右に取り急斜面を避けるが、足元から亀裂が入り、雪板が落ちていく。ゆっくりと鞍部まで下り、小峰を過ぎて下りきった鞍部から核心部に入る。
切り立った主稜には鶏冠のように雪庇が立っている。これを避けて右の急斜面のトラバースを試みたが、弱層が認められたので、潅木の最下部沿いに移動し、行き詰った所から直上し主稜に出て、雪庇に振らないように注意をしながら核心部を通過する。
この後はブナ林の中を歩くが、風が強くなり、15m先のブナがやっと確認できるブリザードである。10:44-48立ち止まって食事を取る。
主稜を進むと、左手にブナ林を持つ平坦な尾根が走っている。分岐点を間違えたのかもしれないと思い、GPSと地図・コンパスでこちらが正しいことを確認する。向こうと比べこちらは気がなく下っているので不安もあったが、すぐに林が出てきて安心をした。
大境山から見たときは、枯松山の手前で林が途切れる筈である。11:20-36この先は林がないと判断し、9mm20mロープを出してコンテニュアスを行うこととした。私はピッケルがないので、スコップを出しストックを背負った。スコップなら多少は雪面に刺さるだろうし、私が先行していたので、雪庇の崩壊に巻き込まれるのは私だろうから何とかなるだろうという気があった。
大阪方式コンテニュアスで若干登ると、先がない。下りになっているらしい。慌ててGPSで現在地を確認し、地図とコンパスで方向を定めて下ると、再びブナ林が出てきた。
予報では天候は次第に回復に向かう筈なのだが、風はますます強くなりスコップは風に煽られ持っていることができない。体にピッケルを押し付けて風圧を避ける。傾斜きつくなり雪面が硬くてスコップの角も刺せなくなってきた。
12:12左に、こんもりと雪庇のように盛り上がっている所を通過した時、AXLが「枯松山でないか」と言い出した。GPSで確認すると、確かに枯松山々頂である。我々が大境山から見た白い稜線は、1,060m峰に突き上げる大きな尾根の最上部であったものと思われる。ロープを組んだまま記念撮影を行う。
この先は以前に通ったことがあるので、ある程度の予想はつく。林を若干下ったところでGPSを使い三吉峰分岐を確認し、コンパスを合わせて左の藪の上を通る。潅木にしがみつきながら雪崩斜面の最上端を横に下る。
この先は、前回と同じように林床の笹が露出した林を下って鞍部に出る。付近は雪がないので獣道がはっきりしている。
氷の粒が顔面を叩き、眼を開けていることができない。後ろを歩いていたAXLが左足の不調を訴えた。膝の外側が痛むとのこと、特に衝撃が加わった訳でないので、古傷かもしれない。ともあれペースを落として登り続ける。
鞍部から右に巻いて主稜に上がり、再び右斜面を横切るように進む。スキーを背負ってはとても通過できないだろう。
風も弱まり始め、視界も回復してきた。ブナ林まで来れば、あとはしめたものである。雪庇を避け、ブナ林の中アイゼンで快適に登る。13:22-27食事を取る。
13:36、969m峰は以前にラーメンを煮た所である。今回は振り返っても枯松山は姿を見せない。山頂から急斜面を下ると、以前にスキーをデポした所である。
この後はのんびりとブナ林を歩く。視界も徐々に回復してきた。927m峰の最高点はポイントより若干南にある。下降ポイントには1本の小さなブナが雪庇を支えるように立っている。
14:09念のためロープで確保してもらい雪庇の橋に近づく。すぐ下は数本のブナがある短い尾根となっている。雪庇を崩して尾根に下りる。西俣ノ峰が見えてきた。眼下には兎ダナイのピークが見える。なお兎ダナイの正確な位置は県境から下りきった鞍部を指す。
アイゼンを履いたままリッジを下るが坪足受胎である。14:27-44兎ダナイ手前で輪カンジキに履き替える。820m峰(兎ダナイのピーク)まで登り、安定した雪庇の平坦な尾根を下り、789m峰の南を通って、ブナ林を下降する。480m峰手前から北側をトラバースして462m峰に向かう尾根を下り、雪崩跡の著しい462m峰を南から巻く。カラッ沢左岸を降りていると、突然に兎が飛び出した。そのまま杉林を抜けて旧キャンプ場に降りる。
大淵橋袂の車道に出たのは良いが、壁になっている。スコップで足場を作ってようやく下り立つ。16:17梅花皮荘駐車場の車に到着し、本日の山行は無事終了した。

今回のコース

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