登山者情報898号

【2005年04月09日/西俣ノ峰〜頼母木山/井上邦彦調査.】

今回の山行は、小国警察署訓練山行と共同で行った。メンバーはHZU・LFD・鈴木・PWD・横山の5名である。
梅花皮荘の駐車場に全員集合、装備を整え、05:48歩き出す。05:56-06:03民宿奥川入で隆蔵氏からコースの状態を聞く。西ノ俣沢へ下るルートは最下部が危ない所もあるらしく、ノーマルコース往復とする。奥川入の周辺はかなりの積雪であり、苗代を作るための除雪作業がなされていた。今小国では融雪作業が急ピッチで進められているのである。
今回は私(HZU)のみがスキーである。当初はLFDもスキーの予定であったが、撮影機材の関係でワカンンジキにしたとのことである。
06:14枝尾根の手前から斜上し、岩場のすぐ下で尾根に出たが、スキーを担いだ私は藪漕ぎが辛い。尾根上の雪は前回(891号)とは比較にならないほどに少なくなっている。夏道の所々露出している。今年初めてマンサクを見た。
06:46-54主尾根に出た所で休憩、咲いていたマンサクはここまで。07:10十文字池手前の急斜面でスキーを履く。07:18埋まっている十文字池を通過し、07:20-34食事を取る。飯豊山はクリアに見えているが、目指す頼母木山方面は雲に包まれている。雲の動きが激しく相当の強風が予想される。
先行パーティの足跡が続いている。雪の硬さはちょうど良く、西俣ノ峰を仰ぎ見ながら皆ワカンンジキなしで順調に登るが、PWDがやや遅れ気味。私はシールで登るがシールに雪がなじみ、斜度がきつくなっても真っ直ぐに登れた。枯松山方面は雲に覆われている。最後の急登は面倒なので、5mテープでスキーを引きずりキックステップで登り、尾根の合流部で再びスキーを履いた。
08:25-38西俣ノ峰々頂で休憩とする。LFDは休む度に三脚を立てて撮影に余念がない。GPSを確認すると画像が消えている。慌ててチェックすると電池切れ、電池を替える。
大渕から天狗平へのルートを俯瞰すると、状況はかなり悪い。この数日は融雪が進み、朝でも結構水量が多い。雪崩はこれから本格的な時期を迎える。吹き付けにスノーブリッジが見えるが、仮に渡っても岩場攀りが求められるし、上部からの雪崩もありそうだ。今のところ天狗平に入る安全なルートはない。
以前栄一氏から、倉手山の中腹をトラバースするルートがあると聞いたことがあるが、これもかなり上部を通ることになりそうだ。冬越路ルートもヒトハネ峰の登りと岩魚沢の雪崩が心配である。
山頂から飯豊山・ダイグラ尾根方面はクリアに見えているが、頼母木山々頂付近は相変わらず雲が激しく動いており、杁差岳方面は姿を隠している。ここから先はスキーが楽である。皆を待ちながらシャッター回数が多くなる。蔵王GZKと無線が通じる。
09:24-38枯松峰山頂で食事を取る。微風・快晴、ここで遅れながら日焼け止めクリームを塗りサングラスを掛ける。眼前の三匹穴を眺める。先行パーティはブナ林を登っている。
枯松峰の下りは何時も雪の状態が悪い所なので慎重になるが、雪が多く全てスキーで下ることができた。
最低鞍部からひと登りしてオオドミを通過する。ブナ林に差し掛かると、ブナの影の部分が固くなっている。シールとエッジの効きが悪くなる。雪面は吹き飛ばされた小さな雪片が固められている。ブナの枝には霧氷がびっしりと付着している。突然にザックの中の携帯電話が鳴る。若干話をしてまたザックに入れる。
1,260m10:10-15スキーを諦めて担ぐこととする。アイゼンを履きピッケルを出す。キックステップで登れない程ではないが、アイゼンを履くとやはり楽である。ブナの森林限界から右に斜上し、広大な三匹穴の雪原に出る。左のダケカンバ群に先行者のザックがデポされていた。先行パーティは空身で山頂に向かったものらしい。
尾根沿いに登るとハイマツの藪になるので、左斜面を登っていくと、バラバラと音を立てて雪片を落としながら、自分達のデフ棒を引き抜いて、先行パーティが下ってきた。一昨年二王子岳でお会いした林さん達であった。上は視界がなく強風との情報を頂く。
さらに登ると風が強くなってきたので、カッパを着る。あっという間にLFDがアイゼンのケースを飛ばされてしまった。横山がポイントにデフ棒を立てて行く。登るにつれて段々と視界がなくなるが、時折下方の視界が開ける。
騙シ峰を左から巻いて、笹の露出した平坦地に出る。一瞬方向を失うが、ガスが薄くなった時に微かに登り斜面が見えた。最後の登りは皆空腹を訴える。LFDは一人ウイダーインを飲んでいたが、こちらは強風の中ザックからお握りを出す余裕がない。あと少しあと少しと念じながら山頂を目指す。
笹が出て傾斜が落ちる、11:46海老の尻尾に覆われた石柱と地蔵尊、頼母木山々頂である。風のため雪が積もらず、三角点も露出していた。交替で記念撮影を行い、早々に小屋を目指すこととした。
地図を出し、小屋にコンパスをセットし、登山道を下る。登山道は氷に覆われていた。ここでカメラのメモリーがなくなり交換する。若干下ると雪原になるが、これは巨大な雪庇である。風が不思議と収まり、雲が消え、地神山が姿を見せた。二ツ峰も現れる。すかさずLFDは三脚を立てる。
頼母木小屋が見えてくる。肩からは夏道を下る。カメラを片手に撮影するため急いで下り、アイゼンを引っ掛け、前のめりに転倒し、僅かであるが唇を切る。LFDを待たずに小屋の前で記念撮影。
12:05小屋のドアは二つの鍵を回し、ノブを回すと簡単に開いた。小屋の中に入り、雪を溶かしてラーメンを作る。2階の窓が開けられていたので閉じる。僅かばかり雪が吹き込んでいた。最近利用した登山者の仕業だろう。僅かでも窓を開けておくと吹き込みで大変なことになる、必ずしっかりと閉めるようにして欲しい。
13:42膨れた腹を抱えて小屋の外に出る。なんと全てのガスは消え去り、素晴らしい展望が一面に広がっている。遠くは越後三山だろうか、朝日連峰、杁差岳とシャッターを切る回数が多くなる。
稜線直下のクラストを考慮し、スキーをLFDに貸し、アイゼンをザックに入れて歩き出す。頼母木山々頂直下で旧道なりにトラバースをし、騙シ峰手前から斜面に入る。LFDが「エッジが効かない」と言いながら大斜面の滑降を満喫、横山はデフ棒を回収して下る。
皆が展望に見とれながら、三匹穴に下る。三匹穴の慰霊碑を今年撤去する計画があると聞いている。目印が無くなるので、留意して欲しい。
鈴木は借りてきたスノーシューを試してみる。トラバースには対応できないが、今回のようなコースには満足の様子である。ブナ林に入った所でスキーを返してもらい、今度はHZUが滑る。鞍部まで素晴らしいコースである。
スキーを引きずって枯松峰山頂まで登り返すと、ここからスキーで下った跡が2本あった。誰かが此処まで登ってきたらしい。15:05-13枯松峰すぐ下で休憩とする。見飽きることのない景色に包まれて立ち止まることも多くなる。ここでカメラのメモリーがなくなる。非常用のメモリーに替えるが、容量が少ないので、撮影はLFDとPWDに任せることにした。
HZUはスキーなので、のんびりである。進むにつれて時間が経過し、光線の角度が変化していく。鉾立峰に突き上げる尾根は、細長く銀竜が峰に昇って行くように感じられた。
NIYと無線が通じる。本来なら昼頃から登り始め、西ノ俣峰で合流する筈であるが、ルートを失ったらしく、諦めて下山したとのこと、無線の状態が悪く、詳細は分からない。
15:40-16:02西俣ノ峰で休憩。光がどんどん変化していく。LFDは何時までもこの様子を撮影していたい様子だが、夕方からは小国山岳会の総会が待っている。
西俣ノ峰から右手の斜面を滑り、尾根を真っ直ぐ途中まで滑り、一気に源頭部を横断しコースに出る。陽が翳った雪面は急激に変わり始めた。尾根上には私達の登降の足跡が雪面をかき乱し、ターンが厳しい。もう一度右斜面に出て、適当な所でルートに戻り、十文字池へと降る。
この後、藪を避けて尾根の左を滑り、一度スキーを脱いで尾根を越え、最後の滑走を楽しみ、登りにスキーを履いた所で、スキーをザックに付けた。
枝尾根を下り始め、左の小沢の状態を観察すると、何とか行けそうであると思っていたら、枝尾根で悲鳴が聞こえた緊張が走った。鈴木が滑った!幸い怪我もない様子にひと安心。
左の沢に入りデブリを下っていると「ラクッ!」上部で落雪が発生した。鈴木によれば獣が落としたらしい、カモシカであろう。これも幸いメンバーに異常なし。滝の落ち口が開いていたので左岸から巻いて、無事下りきる。
あとは平坦なルートを進み、17:02民宿奥川入、17:09車に戻った。

登りのログ
下りのログ
三匹穴からの滑降ログ 西俣ノ峰からの滑降ログ

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