登山者情報906号

【2005年05月08日/石転ビ沢〜梅花皮小屋/井上邦彦調査】

数日前に登ったMDEから冬期便所と水場の修復が必要との連絡を受け、梅花皮小屋まで往復することとした。
大渕橋袂の駐車上には既に数台の車が止まっていた。天狗平までは路肩が露出している場所が多いと考え、プラスチックブーツ(プラブー)を担ぎ、05:13ズックで歩き出した。
梅花皮荘との分岐にあるゲートは雪で曲がっていた。先行者の足跡があり、すぐ先には最近のものと思われる雪崩跡があり、その手前頭上を見上げると、今にも落ちてきそうな雪塊が岩に引っかかっていた。雪崩の中に人が埋まっていないだろうと心配したが、足跡は雪崩の先にも続いたので安心する。梅花皮荘から直接小橋を渡ってくれば危険地帯は通らずに済む。
05:31倉手山登山口、標柱が露出している。ここまで雪崩の危険性は感じられない。05:46オフタガリで前方に登山者1名が見えた。念のためピッケル出したが、核心部は露出した路肩を歩くことができた。天狗橋直前の清水は使用可。
06:11飯豊山荘を通過する。丸森尾根の標柱も露出している。先にスキーを担いだ2人を見る。面倒なので、そのままズック靴で雪の上を進む。ブナ林の雪面は弾けた芽の皮が一面に散乱している。
06:42-54上の砂防ダムで始めての休憩。追い抜いてきた3名はまだ来ない。ここでプラブーに履き替える。ブナ林の中を進むと下ツブテ石の登り夏道となる。上から落ちてきた大きなブロックが木々に掛かって止まっている。雪で埋もれている沢を登ると夏道に出た。この道はうまい水の直前まで続いている。うまい水では雪の切れ間から水が噴き出すように流れていた。彦右衛門ノ平には落下してきたブロックが作った穴が点々と続いている。
07:26婆マクレ入るところでピッケルを出す。イワウチワ・ショウジョウバカマが咲いている。夏道を僅かに進んだ所で本流に下る。本流は雪解け水が轟音を響かせて流れている。滑落することのない様に、慎重にカッティングで降る。そのまま左岸をヘツル用に進み、07:32地竹沢に到着すると、沢がいきなり広くなる。地竹沢の流れを考え薄い部分を避けて雪渓の中央に出る。地竹原の段丘は一段と高くなっている。段丘の上が一番安全であるが、様子を見るため沢沿いに進む。1箇所雪渓に穴が開いていたが、今々周辺が崩壊するほどではない、左岸寄りを通る。滝沢出合は窪んでいるが、まだ穴は開いていないようだ。
07:46梶川出合を通過する。岩はまだ露出しておらず、水場は慎重に近づけば利用できそうだ。次第に稜線部のガスが薄くなり、青空が出てきた。正面の門内沢を目指して進む。稜線の右端には門内小屋も見えた。
08:10-22石転ビノ出合に到着する。まるで私の到着に合わせたようなガスの消え方である。雄大な雪渓を楽しみながら食事をする。なお、出合付近の左岸はこれから雪崩の盛りとなる。水場も見えたが近づかないのが無難だろう。先ほどの単独行の方が追いついてくる。聞けばアイゼンとストックのみでピッケルはないとのこと、この時期の飯豊はピッケル技術をマスターすべきとアドバイス。日焼け止めを塗り、サングラスを掛け、2本ストックで周辺を眺めながら歩き出す。
09:10ホン石転ビ沢出合を通過する。ホン石転ビ沢・対岸の枝沢は共に雪がびっしりと着いている。下を向いて歩くと滴り落ちた汗がサングラスを濡らす。時折タオルで汗を拭き、上部の落石に注意しながら登る。スキーの2人も順調に追いかけてくる。今日の石転ビ沢は4人の貸し切りである。
09:17やや急になりピッチダウン。北股沢出合下の三角岩(仮称)の下に、天を突くような三角形の雪塊が立っていた。雪面は全体として雪崩で凸凹だった斜面にアイロンをかけた様に平滑になっており、スキーの滑降には最適である。
北股沢出合下にある大きなブロックの落ちた跡を辿っていくと、北股岳山頂の雪庇が崩壊したものであった。他にも雪庇の崩壊が見られたので、北股沢出合の窪地に向かわず、右岸の斜面で、09:44-58休憩し食事とした。休んでいると先ほどの単独の方(荒川町のオオヤさん)が追いついてきた。ここからの登りがひと仕事である。まじめにキックステップで登る。窪みの上には亀裂が数本入っている。スキーやグリセードで降る場合は注意が必要だろう。休んだ場所から斜上していく。縦縞状に斜面に模様がついている。白い所は軟らかく、黒い所は硬い、プラブーの利点を活かして標高を稼ぐ。振り返ると朝日連峰の眺めが素晴らしい。朝日連峰の背後には月山や鳥海山もくっきりと姿を見せている。昨日の雨が空気中の塵を洗ってくれたのだろう。柴と亀裂の下を通って直登すると雪渓がU字形になっている。一番低い所を目指していくと、梅花皮小屋が見えた。ここからさらにひと汗を流し、10:43梅花皮小屋に到着する。
管理人棟にザックを入れ、早速缶ビールを雪に埋める。無線でODDを呼び、飯豊山を登っているMDEと中継してもらい、作業の段取りを行う。水場に行くと情報どおりにちょろちょろと流れている。溜まった水をバケツに汲んで冬期便所に運び便器に入れ、棒でかき回すと、途中に引っ掛かっていた雪と大便が抜け落ちた。次にスコップを持って水源地掘り出しを2箇所試みたが失敗。奥の清水は一面の雪原で掘る気になれない。試しに奥の清水から引いているパイプの栓を捻ってみると水の音がした。しめたと思い、栓を開放してパイプを水場にセットすると、勢い良く水が流れた。本棟玄関の水溜りを掻き出す。オオヤさんは北股岳まで登って行った。スキーを担いだ2人も無事小屋に到着。
やれやれと思い、管理棟でラーメンを煮て、冷え冷えの缶ビールを飲み干す。一息ついて本棟に行くと、北股岳側1階の窓が開放されていた。そのため、1階の床が水浸しになっている。数日前にMDEが来ているので、その間の仕業だろう。故意ではなく単なる閉め忘れだと思いたい。ともあれ小屋中のタオル(雑巾?)を掻き集めて床を拭く。
12:53スキーで降るAさんBさん(名前は聞き忘れました)と一緒に下山開始。先ずは私がグリセードで降る。雪が軟らかく、途中からはバランスのみで滑る。その後にAさん、そしてBさんがスキーで滑る。滑降の様子をデジカメで撮影したので、もしAさんとBさんから連絡があれば、コピーして送ります。Aさんは途中から踵を解放してテレマークで下る。
13:19石転ビ沢出合通過。そのまま13:28梶川出合、13:37地竹原を過ぎて、婆マクレから彦右衛門ノ平に上がる。14:07撮影しようとしてカメラがないことに気付き戻る。14:12無事カメラは雪上に落ちていた。
14:15-49上の砂防ダムでのんびり食事を取る。オオバキスミレが咲いている。AさんBさんも降りてきた。今日は車で泊まり、明日は門内沢に入るので、スキーは途中においてきたとのこと。15:57倉手山登山口通過し、16:15大渕橋袂に到着した。結局帰りはプラブーのみで通した。

今回のコース

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