登山者情報907号

【2005年05月16-17日/イツアゴ沢〜オリッパナ/井上邦彦調査】

朝食を終え出発の準備をしているメンバーと学園の食堂で合流。若干の装備点検を行う。一行は生徒11名教師1名と私の総勢13名である。
07:45小雨の中、学園から歩き出す。河原角集落が近くなると、コンクリートの擁壁やアスファルトが盛り上がり亀裂が入っており、雪の力を改めて感じた。08:40-56河原角集落で休憩を取る。1名の長靴が破損していたので学園に電話連絡し迎えを頼む。車は河原角集落で交通止めとなっていた。身体が冷えるので皆は先に進み、私一人が生徒を待つ。
無線で連絡しながら後を追いかけ、09:37-44皆に合流する。掛摺山裾を巻くように進み、10:00イツアゴ沢手前から旧道に入る。いきなり雪のうえとなるが路肩は露出している。道幅は広いが倒木等で荒れて歩きにくい。途中に巨大なスノーブリッジが残っていた。また左岸から入っている大きな沢の中ほどに、高さを揃えて折れている樹木群があった。おそらくは上部からの乾雪表層雪崩によるものであろう。
マゴシロウ沢の合流部を過ぎ、コゴミの出ている湿地で休む。地形図で確認すると、427m峰先の鞍部付近で渡渉地点を探す。この先の右岸は切り立っており、鞍部には人工的な切土のような跡が見えた。直感で渡渉点はここしかないと感じた。
最も狭く両岸にしっかりとした樹木のある地点で左岸から9mmと6mmのロープを対岸に投げる。さらに上流で流れの程よいポイントを探し、一人でズボンを脱ぎ長靴を持って沢を渡る。長靴を履いてロープを回収し、樹木に巻きつけてロープを張る。
方法としては、左岸の樹木にカラビナをつけた2本のロープを1回巻く、これで細いロープを引くと、簡単に全てのシステムが解除できる。次に右岸側で9mmロープに変形エイトノット結びをしてカラビナを掛ける。樹木の後ろを回したロープをカラビナに通し、1/2加重システムを作る。次にカラビナを通したロープを樹木に巻きつけクローブヒッチを作る。後は力任せにロープを引いて固定した。両岸に張られたロープに滑車(救助用)を掛け、カラビナで右岸と左岸から各々引くことができるようにセットして完成である。
11:07-12:10いよいよ沢をチロリアンブリッジで越える。始めに生徒1名を渡し、次にザック、最後に人間を渡す。人数が多いので結構時間がかかる。チロリアンブリッジを行う生徒にはあらかじめ5mロープ(テープ)とカラビナを配っておき、簡易ハーネスを作り、滑車にハーネスをセットすれば、安全に渡ることができた。
右岸の樹木には古いワイヤーがあり、以前にはここに橋があったものと考えられる。さらに鞍部に向かって進むと、石垣を積んで道を作った痕跡も認められた。切土を越えるとさらに広い道が続くが、道なりに進むと雪が多く斜面をトラバースすることになる。今回は全員が長靴を着用しているが、靴底の形状により行動能力に差が出たようである。長靴で雪の斜面を歩くことは、靴の側面をうまく使うことである。しかしここで2名ほどが滑落。事前(5月1日)に滑落時の訓練を行っていたので大事に至らずに済んだ。
さらに沢沿いの広い道を辿ると崩壊地で消滅した。ここで右手の尾根を目指して直登をすると、尾根上に赤いデフ布を見つけた。昨年の参加者によるとここで迷ったとのことである。よく観察すると、尾根上に夏道が露出している。現在地を地図で確認し夏道を登る。途中から杉林となり尾根も広くなってきた。コンパスを地図に合わせて進路を設定する。左側にはブナを始めとする広葉樹林になっている。右手から広い尾根が合わさった所で再度コンパスを設定しなおし進んでいくと、広く緩いうねりのあるブナ林に着いた。
13:24平坦な場所を選んで幕営地と定めた。例年であれば数箇所水場が露出しているとのことであるが、全く見当たらない。天幕を設営し、近くの沢を掘ることにした。4m強掘り進んだ所でようやく沢に着いた。ロープをセットしてチムニー登りの要領で水を汲む。料理に取り掛かる段階で、天婦羅用の小麦粉を忘れてきた!ことに気付く。しかしその夜は、コゴミのおひたしをマヨネーズと醤油で楽しんだ。・・・満足。

2005年05月17日
翌日は鳥の声で目が覚めた。快晴である。掛摺山と猿鼻山の間に朝日連峰の以東岳が連なり、見上げる白倉山の岸壁が威圧的である。
07:13幕営地を出発する。白倉山西の鞍部を目指す。試みに生徒にルートを選択させてみた。案の定、目の前の歩きやすい所に足が向き、上部のルート読みが甘い。故意に自由にさせていたら2名ほどが滑落した。しかし、昨日同様に雪上での体さばきを身に付けているため大事に至ることはない。行き詰った所で助言を行い、全員分水嶺に到達する。
膝の不調を訴えた1名(引率者)を残し、07:36分水嶺にザックを置いて白倉山のテラスを目指す。獣道があるのでさほどの藪漕ぎはない。最後の岩場は気を引き締めて通過し、全員テラスに到着、大展望を楽しむ。私達が昨日登ってきたコースが眼下に広がる。栂峰や夜蚊鳥屋山も良い。振り向くと純白の飯豊連峰、飯豊山から杁差岳まで一望である。杁差小屋を見つけ、杁差岳隊の健闘を祈る。帰路は岩場を避けて一部藪を下った。
08:26ザックに戻り、雪庇の名残を利用して740m峰を目指す。地図とコンパスで確認し、08:38山頂から下り始めるとすぐに古い赤布を見つける。今回は全員の装備がザック内に収まっているので、順調に下る。岩場は後ろ向きに足場を確認しながら下る。シャクナゲが美しい。
09:41-56 途中の551m峰で休憩。雪の上で白倉山を見上げる。ここでお腹を満たし、両側が切れ込んだ場所を慎重に通過する。
10:30-11:43オリッパナに到着する。水がやや濁っている。私ともう1名が内川を渡渉しチロリアンブリッジをセットする。昨日と異なり結構長い距離である。順調にクリアし、内側左岸にある歩道を進むが、雪がかなり多い。
12:42横岩沢東の駐車場でニリンソウラーメンを楽しむ。私はここでQKGがサポートして運んでくれた彼の車で帰宅した。
今回のコース
核心部

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