登山者情報931号

【2005年07月16-17日/ダイグラ尾根〜石転ビ沢/井上邦彦調査】

1週間前に蔵王坊平でカメラを破損し、今回は購入したてのカメラを持参した。濡らすのが嫌で天候に恵まれず最小限の撮影となった。結果、本人は嫌がったが写真はVCK特集となりました。
04:45湯沢ゲート前の駐車場に車を停める。雨なので車の中で準備をし、靴を履く。VCK車も到着、笠をさして登山者の指導をしているIIVや松山君・小国警察署員に挨拶し、05:07歩き始める。05:24温身平の十字路を通過、05:42桧山沢吊橋を渡る。蒸し暑い。06:23-35標高820mで食事休憩を取る。06:50御池ノ平を通過し、07:00長坂清水に到着する。来週ダイグラ尾根を下降予定のVCKを連れて水場まで下り、水量が充分にあることを確認する。07:30米栂ノ平(仮称)を通過する。足元にはツルアリドウシが咲いている。
07:46-58休場ノ峰で食事休憩とする。残念ながら視界はない。カッパ(上)を脱いで歩く。コキンレイカ・オオコメツツジ・カラマツソウが咲いている。08:38千本峰の標柱を通過する。ミヤママナコ・ガクウラジロヨウラク・ノリウツギが咲いている。09:07に1,499m峰を巻き終え、いよいよ宝珠山の登りに取り掛かる。登山道崩壊地を越えると高山植物が姿を現す。マイヅルソウ・ニッコウキスゲ・ハクサンチドリ・カラマツソウ・イワナシ・ハクサンコザクラ・オオサクラソウ・コバイケイソウ・ノウゴウイチゴ・ツマトリソウ・エチゴキジムシロ・モミジカラマツ・キソチドリ・ヒメサユリ・イワカガミ・ミヤマママコナ・ミヤマコウゾリナ・タカネアオヤギソウ・ミヤマクルマバナが咲いている。09:35-45、3回目の食事休憩。09:55-58水筒に雪を詰めて水を補給する。ショウジョウバカマ・アマドコロ・ヨツバシオガマ・タニウツギ・ハクサンフウロが咲いている。大又沢側の登山道は雪で道が崩れ草で覆われ、足場が良く見えず不安定で転びやすい。2箇所ほど登山道が雪で覆われていたので、手前の草付を登って残雪の上に出る。雪と夏道の間を移動する時には滑落に充分注意する必要がある。
10:12宝珠山の肩に着く。古い標柱と新しい標柱が転がっていた。これから新しい標柱を立てる作業を行うことになる。標柱にはこれまで「宝珠山」と記載されていたが、宝珠山々頂ではないので、「宝珠山の肩」に変更した。このすぐ上で融雪水を発見し、ザックを置いて水筒を満たした。残雪を巻くように登り、宝珠山を越える。オオバキスミレ・クルマユリ・ミヤマキンポウゲが咲いていた。10:36岩稜に着く。ミヤマクワガタが咲いていたが、危ない所であり風もあるのでよく観察できなかった。何時もならここで展望を楽しみながら休憩するところであるが、さらに進むことにした。岩場を下っている途中でヒメサユリの群れに会い思わず撮影。残雪を慎重に越える。シロバナニガナ・クルマユリ・ミヤマホツツジ・イワテトウキ・ゴゼンタチバナが咲いていた。11:09-21コキンレイカの咲く岩場で食事休憩とし、御前坂を登るパワーを補充する。マルバシモツケ・ミヤマダイコンソウ・ハクサンシャクナゲ・ツマトリソウ・ホソバヒナウスユキソウ・オヤマノエンドウ・キバナノコマノツメ・キソチドリ・チシマギキョウのお花畑を登る。途中でガスの切れ間から秋田ノゾミノ平が見えた。くしくもVCKの本名はNOZOMIである。
12:11-17飯豊山々頂に到着する。本山小屋に寄る予定であったが、AQLが大日杉から本山小屋を目指して登っているので、情報を後でもらう旨の連絡をして御西小屋を目指すことにした。玄山道分岐で雪渓近くまで降りている2人がいたので尋ねると、御西小屋に向かうとのこと、登山道が沢状に掘れているのでそのまま旧赤谷登山道に迷い込んだ様子だ。何らかの措置が必要かもしれない。草月平はニッコウキスゲ・コバイケイソウ(盛)・ハクサンフウロ・ヨツバシオガマ・キバナノコマノツメ・マイヅルソウ・ムカゴトラノオ・タカネアオヤギソウ・オノエラン(盛)・アオノツガザクラ・イワカガミ・チングルナ・イウイチョウ・バイカオウレン・ニッコウキスゲが咲いている。特にコバイケイソウはまだ若干早いが近年にない大群落を形成している。
13:10-14:02一面のミヤマキンポウゲに包まれた御西小屋の脇で、小型の重機が新小屋の建設作業をしていた。小屋に入ると管理人の松葉さんが迎えてくれた。缶ビールを頂き、暫し歓談する。水場は松葉さんが掘って使用できるようになっているとのことであった。なお飯豊山から御西小屋までは夏道が全て露出している。元気をつけ、梅花皮小屋に向かう。天狗岳でOTJから無線が入る。交信していると勢い良く雨が降ってきたので、慌てて合羽を着る。以前は天狗岳と天狗の庭の間はピッケルなしではとても歩けなかったが、昔と違い天狗ノ庭まで主稜上の道が使えるので危険性はない。イワオウギ・ハクサンシャクナゲ・タカネアオヤギソウ・ハクサンフウロ・ヨツバシオガマ・ミヤマキンポウゲと様々な花が咲いているが、会話も聞き取れないような雨の中では記録をとる気になれない。山形県側の登山道には数箇所残雪が夏道を覆っており、夏道と残雪の移動には注意が必要である。15:02御手洗ノ池を通過する。15:20亮平ノ池を通過するが、7月8日の滑落死亡事故は亮平ノ池手前の残雪の御西小屋側で残雪から夏道に移ろうとして滑落したものである。
花々の咲き競う坂を登り、主稜を越すとハクサンイチゲが咲いていた。15:43-50クサイグラ尾根で最後の食事休憩とする。ここから先は何時もながらの見事なお花畑だ、主なものだけでも、ハタザオ・シナノキンバイ・ハクサンイチゲ・コバイケイソウ・ミヤマキンポウゲ・ニッコウキスゲ・・・。16:00烏帽子岳山頂を通過、16:16梅花皮岳山頂を通過すると、後は下るだけである。これまで姿を見せなかったハクセンナズナやヤマハハコも加え、16:31梅花皮小屋に到着、OTJが迎えてくれた。OTJの手料理で晩酌を楽しんでいると、朝日山岳会の鈴木正典氏等が入ってきて、賑やかな一夜になった。
翌日はゆっくりと起床、ラーメンを食べてから08:21梅花皮小屋を出発する。先ずはアイゼンを着けないで雪渓を下る。表面が硬いので軽登山靴のエッジを利用して下るが、視界がなくルートが分かりにくい。うまく草付キノ台地に出ないと急斜面に動けなくなるだろう。勘を頼りに下ると水音がして台地に出た。ここから沢状の登山道を下る。道がなくなった所で二人ともアイゼンを付け、ピッケルを構えて慎重に斜め左に下降する。やがてぼんやりと中ノ島(草付キ)が見えてくるが、登山道までは雪渓を下り、夏道に上がってアイゼンを脱ぐ。この雪渓の部分が石転ビ沢で最も滑落事故の多い場所である。雪渓の両端に黄色い旗を立てているが、視界のない時には役に立たない。また中ノ島(草付キ)の上部は落石危険地帯である、アイゼンを脱いだら早々に登山道を下る。右上から落石が落ちる鈍い音がしたが、ガスで見えない。ただ音で落ちていく様子を探るのみである。相変わらず緊張する場所である。水音がした、右側の水場が露出している。ここには良く落石が直撃するので近づかないほうが良い。石を落とさないように心がけながら下ると、ガスが切れて石転ビノ出合が見えた。登山者が二人中ノ島(草付キ)を登ってくる。中ノ島(草付キ)の両側の雪渓は崩れ始めているので、登ってきた場合は早々に中ノ島(草付キ)に上がるのが良い。最下端で再度アイゼンを着ける。亀裂を避けながら黒滝を目掛けて下る。黒滝左岸の状況がやや悪いが、左岸の出っ張りを盾にして北股沢出合尾根の末端に降りる。登山者が休んでいたので確認すると、清水はまだ出ていない。
振り返ると、北股沢や北股岳にはまだびっしりと雪渓が続いており、落石が心配される。やや左岸沿いに下る。途中の亀裂は難なく越える。09:20-27ホン石転ビ沢出合左岸でアイゼンを外す。途端に飛び越せない大きな亀裂が出てきた。右に進んで合流する縦の亀裂を回り込む。すると、また亀裂が出てくる、回り込むと、また亀裂が出てくる。これらの亀裂は離れると分からない。
登山者がぞろぞろと登ってくる。中には大丈夫?と首をかしげたくなるパーティもいる。石転ビノ出合上部には大勢の登山者が登る準備をしていた。石転ビ沢は崩壊して門内沢との合流点まで雪渓がなくなっている。最も安心できるコースは、石転ビ沢を飛び石伝いに渡渉して、幸七ノ尾根末端を登って門内沢に入り雪渓を渡るコースだろう。下の大岩付近は雪渓の崩壊の最中であり、合流点下流には大きく円を描いて亀裂が入っている。さらにその下流部の雪渓は多少安定している様子であるが、右岸の小沢が入り薄くなっていることも予想される。今回は円状亀裂の下流側を通った。今年の雪渓は、雪渓の底から溶ける割合が多く、雪渓の表面だけを見ていると判断を誤る恐れがあると考えられる。
10:05-09石転ビノ出合で、ピッケルをザックに付けストックを出す。この先は一転して蒸し暑い夏道を辿る。赤滝で偶然に峡彩山岳会の皆さんとすれ違う。梶川は残雪の上を歩いて途中から踏み跡に移り(先に進むと崩壊の恐れ)、梶川を若干登って飛び石伝いに渡渉する。そこから梅花皮沢に降り、どうせ濡れた登山靴だと開き直って左岸の崩壊地下をばしゃばしゃと川を漕いで夏道に出た。増水時には高巻きしても梶川の渡渉が難しいかもしれない。また、残雪の末端が崩壊寸前だったので梶川の上流を渡渉したが、19日の合同パトロールに参加した舟山堅一氏によれば、梶川の合流点で渡渉し、梶川の右岸を登って残雪の上に出たとのことであった。
11:05-25うまい水で二人とも頭から水を被って生き返る。そこにひょっこりとUWSが現れた。雪渓を登って梅花皮小屋泊まりとのこと、今回山行唯一VCKとHZUの並んだ写真を撮って貰った。その後は淡々と歩き、12:20湯沢ゲートに到着した。

今回のコース
石転ビ沢上部 ポイントは小屋、台地、雪始め、中ノ島(草付キ)の上下端

画像