登山者情報942号

【2005年08月06日/大日杉〜石転ビ沢/井上邦彦調査】

自宅からLFD宅までEAGに送ってもらい、LFD宅からはLFDセカンドの車で大日杉に向かう。大日杉の駐車場には沢山の車が止まり、登山者が出発の準備をしていた。車を降りると予想どおりにメジロ(虻)の群れが襲ってきた。登山者カードを記載しているLFDに「俺の分まで書いてくれ」と言い、04:57大日杉からスタートする。
メジロは何処までも追いかけてくる。こちらは半ズボン・Tシャツ・運動靴スタイルである。さっさと杉林に入り、鎖場を登る頃、ようやくメジロから開放された。
LFDは私と同じコースであるが、本山小屋泊りなので食料(EHJから刺身が食べたいとの注文あり)、カメラ(交換レンズ3本)・三脚と重装備である。無線で交信しながら各自勝手に登ることにしてある。
05:12ザンゲ坂の上に出る。ちょうど日の出である。05:30長之助清水の菱形標識は文字が剥がれかけている。御田杉を過ぎ、ブナの林を登っていると数人のパーティが登山道の真ん中で小さな焚き火をしている。焚き火をしないように話すと、虫がひどいので火を焚いたとのこと。ハッカスプレーを教えて、焚き火はやめるように指導する。付近にはリョウブ・ツルアリドウシが咲いている。
06:14-27国体時の特Gゴール(滝切合数m手前の広場)で食事を取る。OTJ・LFDと無線が繋がる。06:44標柱のある窪地から地蔵岳山頂までは道刈りがされていない。三角点で飯豊山を眺める。
下り始めると、センジュガンピ・ヤマトウバナ・ミヤマコウゾリナ・オトギリソウが咲いている。地蔵清水に行く2本道を分けるが、今は雪がないので使用できない。シロバナニガナ・ミヤマアキノキリンソウ・ミヤマママコナ・タカネツリガネニンジンと花が増えてくる。陽が痛く感じられ、木陰になると涼しくて快適である。
07:16目洗清水、標柱は傾いている。下るのが面倒なのでLFDに確認を頼む(後ほどLFDから水が流れていたとの報告を受ける)。すぐ先の広場の標柱にチョッキの忘れ物が掛けてあった。ニッコウキスゲ・コゴメグザ・ウメバチソウが加わる。
07:40ダケカンバ林に入ると雰囲気は一変し、コキンレイカ(盛)・エゾオヤマリンドウ・タカネマツムシソウ・ノリウツギ・タカネアオヤギソウが咲いている。07:44御坪を通過する。切合小屋に直接突き上げる御沢の雪渓はボロボロになっている。ウツボグサ・ツルリンドウ・ミヤマホツツジが咲いている。
尾根からトラバースを始め、08:12-20開けた小沢で休憩を取り食事をし、日焼け止めを塗る。モミジカラマツ・ハクサンコザクラ・ハクサンボウフウ・チングルマ・ニッコウキスゲ・コバイケイソウ・ヨツバシオガマ・ミヤマリンドウ・ゴゼンタチバナ・ヒメサユリ・シロバナニガナ・ミヤマアキノキリンソウ・オトギリソウが咲いている。08:28切合小屋原水の小沢は残雪に覆われている。巻き道跡があるので上を巻くのが良い。
08:32種蒔山分岐で主稜線に出ると大日岳が聳えていた。此処からはすれ違う登山者も多くなる。タカネマツムシソウ・ミヤマキノキリンソウ・ハハコグサ・シラネニンジン・ミヤマセンキュウ・ミヤマコウゾリナ・ウメバチソウが咲いている。
08:35-43切合小屋で佐藤さんからジュースをご馳走になり、情報交換を行う。この先、エゾオヤマリンドウ・ウメバチソウ・タカネアオヤギソウ・コゴメグサ・ヒメシャジンが咲いている。偶然に新潟の玉木さんとスライドし、立ったまま暫し歓談。草履塚の登りになると僅かに雪の上を歩くが問題はない。09:02夏道脇に水が流れていた。チングルマ・ミヤマキンポウゲ・カラマツソウ・イワイチョウ・コバイケイソウ・アオノツガザクラ・ハクサンフウロが咲いている。
09:10草履塚に到着する。大日岳方面に雲が出てきた。ハクサンフウロ・ヤマトウバナ・ムカゴトラノオ・ヒメシャジンが咲いている。09:15-20御前坂を見ながら食事を取る。イワオウギ・クルマユリが咲いている。今度は亀山さんと会い、暫し言葉を交わす。さらに中野さんと会い、御秘所を経て御前坂に取り付く。御前坂からは本山と交信できない。AXLはNHK撮影一行の案内で切合小屋付近を登っているし、三島君もその後を登っているとのことである。
10:03一王子を通過し、10:09-56本山小屋に到着する。早速EHJが缶ビールで迎えてくれた。仙台山想会の皆さんも同床、小国に何度も来られている方もおられた。アサギマダラ(蝶)がやけに多い、アカトンボが空を一面に覆っている。11:07飯豊山々頂を通過する。イイデリンドウ(盛)・コゴメグサ(盛)・シラニニンジン・ミヤマアキノキリンソウが咲いている。
11:20駒形山の標柱は風雪で削られ文字がない。ここからの花畑も楽しみである。コバイケイソウ・ニッコウキスゲ・ハクサンフウロ・ヨツバシオガマ・ミヤマホツツジ・シロバナニガナ・ミヤマアキノキリンソウ・ハクサンボウフウ・ミヤマコウゾリナ・ムカゴトラノオ・タカネマツムシソウ・イイデリンドウ・アオノツガザクラ・チングルマ・エゾシオガマ・イワイチョウ・ミヤマリンドウと咲いている花は枚挙に暇がないが、特筆すべきはやまりコバイケイソウだろう。
御西の標識に至ると、ガスの中から御西小屋が姿を現した。12:00-55御西小屋に入ると松葉さんが雪でガリガリに冷やした缶ビールを出してくれた。新小屋建設現場で監督に紹介していただき、苦労話などを伺う。
御西小屋から天狗岳を目指す。ハクサンイチゲ・イワイチョウ・コバイケイソウ・チングルンマ・ニッコウキスゲ・ミヤマアキノキリンソウ・イワカガミ・ミヤマキンポウゲ・ウサギキク・ハクサンボウフウ・ヤマトウバナ・イワオウギ・シロバナニガナ・ヤマハハコ・ミヤマホツツジが咲いている。
13:32天狗ノ庭を通過する。ここから山形県側へと道が変わる。タカネマツムシソウ・タカネツリガネニンジン・トモエシオガマ・エゾオヤマリンドウ・ヨツバシオガマ・ハクサンコザクラが咲いている。13:54御手洗ノ池を通過する。平坦な山稜部にはチングルマ・ハクサンコザクラが咲いている。
14:11亮平ノ池から下り、烏帽子岳の登りに差し掛かると、あたりは素晴しいお花畑である。
タカネナデシコ(盛)・エゾイブキトラノオ・キオン・ニッコウキスゲ・タカネマツムシソウ・ヨツバシオガマ・ハクサンフウロ・ミヤマホツツジ・タカネツリガネニンジン・イワテトウキ・ミヤマアキノキリンソウ・イワオウギが咲いている。クサイグラ尾根を越えた所も良いお花畑であり、書ききれないがオタカラコウ・クルマユリ・ミヤマキンポウゲ等が咲いている。
14:43烏帽子岳山頂には18名のツアー客がおり、他の登山者は自分達が泊まれるのか心配していた。15:00梅花皮岳を通過する。OTJにこれから梅花皮小屋に向かっている登山者の数を知らせ、場所の確保を頼む。
15:16梅花皮小屋に到着。OTJの他にODDと南陽の朱美さんが出迎えてくれた。OTJはひっきりなしに来る登山者の対応に忙しく追われていた。私はここで缶ビールを飲み、ラーメンを煮て下山に備える。
16:01梅花皮小屋を出発する。小屋から草付キノ広場までは左に雪を見ながら夏道を下る。広場から沢状の登山道を浮石に気を付けながら下り、左の小沢を横切ると中ノ島(草付キ)に出る。足場に留意しながら、右に水場を見てさらに下ると、左の小沢に大きな岩がある。ここから左の小沢を横断し、小尾根の登山道に出て下る。このトラバースのタイミングが遅れると中ノ島(草付キ)を下り過ぎ、崩壊中の雪渓に出てしまうので注意が必要である。
小尾根を下って小沢に出る。ここを横切ると左岸に夏道がある。本流の雪渓はズタズタに崩れ近寄れない。黒滝の上に立って雪渓の状態を観察する。左岸から来る夏道はまだ一部が雪に覆われている。雪渓末端は薄くなっている。
16:25-29岩の上でズックからスパイク地下足袋に履き替える。その上で、雪渓の厚さを観察しながら一気に雪渓に上がる。北股沢出合の清水が露出していた。そのまま、雪渓をズンズン下る。
一本の亀裂が雪渓を横断している。この場所はGPSでポイントを取った。亀裂の規模は大きいが深さはさほどではなく、雪渓の中心部付近を容易に越えることができた。
次は問題のホン石転ビ沢出合である。亀裂の全体像は見せてくれないが、複数の亀裂が交錯しており、全体として右岸寄りがやや窪んでいる感じがした。雪渓の真ん中を行って行けないこともないような気もするが、雪渓の厚さと亀裂の具合が見えない。私は左岸の枝沢に上がり、ガレ場を慎重に下る。脇から見ると雪渓の薄さと入り乱れた亀裂の様子が良く見える。とても近づきたくない。もしかすると、一体性を失った雪渓の塊がかろうじてバランスを保っているのかもしれない。そのバランスが崩れた時は一斉に大崩壊を起こす可能性がないとは断言できない。
ガレ場を下ると、薄い雪渓端が頭を覆うように伸びており、気持ちの良いものではない。ここでバランスを崩し身体を岩に接触させてしまった。このような時は半ズボン・Tシャツ姿はダメージが大きい、何箇所かに痛みを感じた。そのまま岸壁沿いに下るが、下部の岸壁と雪渓は密着しており、すんなりと雪渓の上に出ることができた(ここでもGPSポイント)。
最難関を越えて雪渓を快適に下り、右岸から入る小沢は河床に降りて越え、再び雪渓を下るが、左岸寄りの雪渓は崩壊中なので右岸寄りを通って、雪渓は終了する。
右岸の踏み跡は途中で幾つかに分かれるが、川沿いに進み多い輪の付近で川原に下りる。ここで大きな石の上から渡渉点を探す。渡渉点は大水の度に石が動くので、よく確認する必要がある。目星をつけて渡渉点に移動し、足を濡らさないように乾いた石(緑色の苔が生えている石は滑る)から石へと飛び跳ねる。
石転ビ沢左岸に移った所で尾根の末端に移動し、門内沢に入り雪渓に上がる。雪渓には大きな穴が黒く開いているので、その上流部を迂回し門内沢左岸に移り、左岸沿いに進んで17:20-26石転ビノ出合左岸の大石に出る。ここから先は夏道になる。ザックを降ろしてズックに履き替える。ここまで予定を大幅に超える時間を要してしまった。無線でOTJを呼び出し、天狗平到着時刻が送れることを自宅に連絡してもらうよう依頼する。
梶川出合の残雪は全てなくなっていたが、ルートが幾つかあるので適当に選んで大岩の下を潜るようにすり抜け、梶川とその下流を飛び石で渡った。
うまい水で登山者3名を抜く。OTJから登山者はいない筈なので確認してくれと依頼があった。尋ねると梅花皮小屋には立ち寄らないで来たとのことである。
ブナ林に入る頃から数匹のメジロ(虻)が纏わり着いてきたが、気にせずどんどん下る。18:25砂防ダムでメジロの大群を予想し、長ズボン・長袖シャツが頭をよぎったが、面倒なのでそのまま林道に下った。飛び回るメジロを潰しながら温身平の十字路過ぎ、登山者を抜く時「あら、元気になったの?」と声を掛けられた。適当に返事をして追い抜いたものの気になって戻って内容を尋ねた。するとダイグラ尾根で疲れて動けなくなっていた登山者がいたので、その登山者と私を勘違いしたと分かった。嫌な予感がして詳しいことを尋ねようとしたが、どうも要領を得ない。今の時点でトラブルとは断定できない。帰ってこなければ捜索要請が出るだろうと考え、18:45湯沢ゲートに到着した。

今回のコース
左:上部亀裂 右:巻き終了 石転ビノ出合

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