会員の山行002号

【2001年02月24〜25日/龍山中央尾根(山形県山岳連盟指導員会研修会in蔵王)/井上邦彦調査】

前夜、先導予定の山形山岳会会田さんの都合により、小国山岳会の鈴木さん(蔵王ペンションスイス)に変更とのことであった。指定された龍山ゲレンデに集合する。天候は風雪。鈴木さんが合流し、そのままリフト沿いにリフト終点まで1ピッチで登る。
ここで一度全員集合。雨で固まった雪面に20〜30cmの新雪。このコースをスキーで下るのは無理だよという鈴木さんの忠告に逆らい、私だけスキーをザックに固定して登る事とした。「坪足でバラバラに登ろう」と鈴木さんの指示。結構な急斜面であるが、膝を使って力任せに登り、一段ついたところで全員が集合する。
瘠せ尾根というが、何時も歩いているところに比べたら何ということはない。途中で山大WV部中村君と小国山岳会若手の渡部君に「せっかくの機会だから、鈴木さんにトップを替わってもらい、教えてもらえ」と話しかける。全くのところ、鈴木さんは、こちらが黙っていると何処までもトップで登ってしまう。中村君がルート選択を誤って雪の壁で立ち往生するが、鈴木さんは「これも練習、そのまま真っ直ぐ登れ。2輪で無理なら4輪駆動で登れ」と、両手をフルに使って登るように教えていた。
雪庇の具合から、この尾根以外は登れないという鈴木さんの言葉どおり、主稜に出ると、登ってきた尾根の分岐点だけが、雪庇は殆どなく垂直である。ここに雪洞を掘ることにした。2〜3mの感覚を置き、3ヶ所から同時に横穴を掘り始める。
各自が持参したスコップは様々であるが、プラスチックのスコップは雪の硬さに阻まれて思うように掘れない。またピッケルやスノーバーに取り付けるものは箆の部分が小さいため、不時露営用といった感じである。齋藤弥輔さんの自作スコップが一番使いやすい。これはアルミの角スコップの柄を短くし、別の壊れたプラスチックの取っ手を括りつけた物である。ともあれ、この3つの雪洞を繋ぎ、2ヶ所の堀口をブロックで塞いで完成させた。
ここで私が大きなドジを犯す。主稜に荷物を置いていたので、取りに行こうとしてうっかり、出来上がったばかりの雪洞を踏み抜いてしまったのだ。仕方なく、スキーを穴の上に並べ、鈴木さんの自衛隊ポンチョで穴を覆い雪を上げて応急処置をする。
さてここからが小国山岳会の本領が発揮される。他の山岳会は行動食をぼそぼそと食べている。小国山岳会は、鴨鍋、キムチウドンと次々に豪華な食料が熱々で出てくるのだ。宿の駐車場の都合で下山するという皆を鈴木さんが先導することとし、小国山岳会のメンバーは暫しの楽しい食事時間を終え、雪洞を破壊し下山にとりかかる。尻セードでキャーキャーイ叫びながら下る。私は尾根から外れないように、左の斜面を斜滑降で下る。ワイワイとゲレンデに出た途端、ブルーシートを出して、これに乗って皆で滑ろうと言い出すものが現れた。怪我人や遺体の搬送の経験が豊富なメンバーにとっては、ごくあたりまえの発想であるが、ゲレンデの真中をブルーシートに乗って下る登山姿の一行は、居合わせたスキーヤーにとってはさぞかし異様な集団に映ったことだろう。

中央尾根を登る 主稜に出た所で雪洞を掘る
雪洞の中は快適だ ブルーシートでゲレンデを滑る
小国山岳会メンバー