会員の山行 019号

【2003年3月6日/蔵王・地蔵岳(八方沢コース)/吉田岳調査、写真は飯澤徹】

 この八方沢コースは蔵王のお地蔵さんからそのまま裏側に滑り、蔵王ダムに出るというコースである。ロープウェイを使う為ほとんど登らなくてもいいが、車の移動が玉にキズである。今回の参加者は小国山岳会からMDE、IBYと私、そして小国のT氏と南陽のI氏。平日の真昼間に働き盛りのおっさんが5名も顔を揃えちゃう事に不安を覚えたが、実際スキー場では浮いていたに違いない。まず一同は下山口となる蔵王ダムに、8時30分集合。そこから2台の車で蔵王スキー場へ向かう。ロープウェイを一つ乗って中間駅まで。そこで20分待たされた後、二つ目のロープウェイで山頂駅に到着した。中間駅ではガスに囲まれ視界が効かなかったのだが、山頂駅はまさしく雲の上。360°のパノラマが待っていた。
 我々はそこからスキーを担いで地蔵岳に向かった。スキーヤーの人達もけっこう山頂へ歩いていた。しかし我々が滑っていくコースは誰も入っていないヴァージンスノー。胸が踊った。メンバーのうち3名は山スキー、2名はスノーボードである。不安はスノーボードがこのコースでどれだけ滑れるのか、バックカントリーデビューのT氏は付いて来れるのか、そして私の道案内である。
 11時、地蔵岳山頂からコーボルトヒュッテに向かい滑り出す。新雪で気持ち良いが、所々深かったり堅くなっていたりしている所があり、油断すると足を取られる。ヒュッテからは雁戸山を正面に見ながら、谷筋を滑る。しかし傾斜はだんだんと無くなり、雪もべとつくようになってきた。たまらずスキーにワックスを塗り、顔にも今更ながら日焼け止めを塗った。ボードは平ら地では滑れないので、スキー組が先に行ってコースを指示する。緩い傾斜に小さな谷筋がいくつか走り、さらに樹氷に成り立てのアオモリトドマツも加わって、先の状況が分からない。そんな中、先に行ったMDEが見えなくなってしまった。無線で繋がっているため大丈夫なのだが、叫んでも通じない。ふと左斜面を眺めると足跡らしきものが見えた。「いつの間にあんな所へ?」、おかしいと思いつつもそちらへ滑って行くと、MDEと合流した。しかし改めてその足跡を眺めてみると、それはカモシカのものである。「MDEはカモシカなのでは?」と疑問を持ちつつも、滑降を続けた。
 暫くするとまた傾斜が出てきて、しかも雪質はパウダーに戻った。各々奇声を上げながら滑り降りてくる。しかし突然崖が現れ、慌ててスキーを止めた。どうも滝になっているらしいが、雪が多ければ埋まっているのだろう。仕方なくスキーを脱ぎ、左の斜面に巻くように登って行った。15時、ある程度登って行った所で昼飯にした。
 地図で現在地を確認してみる。今居る斜面はコース上の斜面より急に思われる。東側の八方沢に降りてしまったら大変である。念の為、北の方へトラバース気味に降りて行く。しかし下に見えた平ら地は自然園からの夏道との合流地点であると判断。そのまま急な谷を滑り降りることにした。するとここは思いもよらず最高のゲレンデであった。深い新雪に思いっきり突っ込んでいく。転ぶのもまた楽しである。平ら地で、ボード組はまた徒歩を強いられた。T氏の顔に疲れが現れてきた。14時15分雨量計着。しかしこれは使われていないようだった。夏道に出たという事で、少しのビールで喉を潤した。
 この下のナラ林ではまだ滑りを楽しむことが出来た。昔、山岳修行・断食が行われていたたという不動様を通過。その先の尾根が狭くなり薮が濃くなってきた所で3名は滑降を止め、かんじきに履き替えた。IBYと私はしつこくスキーを続行した。途中何度か沢に向かって滑り過ぎ、その度に登り返しを強いられた。蔵王ダムが近くになった所で、左斜面に入り込み、木の葉沢を渡って、林道に出た。二人は結局沢の近くまでスキーで滑ってきてしまった。これは昨日おとといに降った大雪のお陰である。14時蔵王ダムに到着。メンバーそれぞれ満足のようで、「来年も誘ってくれ」とのこと。それを聞き私も安心した。次回はもっといいコースをとれると思う。

朝日連峰をバックに、地蔵岳山頂 大きな伊藤さんが小さく写る
地蔵岳からの雄大な滑走、後方は熊野岳
トドマツの林を下る吉田君 ブナ林を滑る高貝氏
ボードで初山、谷さん たくさんあった熊棚
熊棚があったブナの木についていた爪跡 熊棚を下から眺める
1,050m付近の台地
雁戸山に向かって進む飯澤
滑走終了、粘ったけど
雪がついていなければ滑れません