会員の山行 136号

【2008年10月07―10日/槍ヶ岳、穂高岳/吉田岳】】

 「死ぬ前に一度槍ヶ岳という山に登ってみたい」と言う、とある和尚さん(HZUの後輩)から引率を頼まれた。いろいろとお世話になっている人なので、引き受けてみることにした。6日朝、小国を車で出発。7時間ほどで沢渡に到着。シャトルバスに乗り換え、上高地へ。前泊地として西糸屋山荘に宿泊をした。
 7日朝6時に上高地を出発。コースタイム通り3時間ほどで横尾に到着。やはり紅葉シーズンのためお客さんは多いが、ほとんどが涸沢方面を目指すようで、槍沢に入る人は極端に少ない。11時、槍沢ロッジ着。ここでうどんを頂く。傾斜が次第に増し始め、和尚さんのペースが落ちてきた。目指す槍ヶ岳山荘はちょっと厳しそうだ。16時40分、殺生ヒュッテに到着し、ここに泊まらせてもらうことにした。お客さんは他に6名ほど。ちょっと寒かったが、和やかに過ごすことができた。
 8日4時に起床。外を見るとうっすらと雪が積もっている。天気は良くなる予報ではあるが、槍ヶ岳へのアタックはちょっと心配である。朝食をいただき、6時に出発。東鎌尾根を伝い、7時に肩の小屋に到着した。どうもここに泊まったお客さん達は山頂アタックを諦めたらしく、今日はまだ誰も登っていないようである。「様子見がてらとりあえず向かってみましょう」ということで準備をしていると、山荘のスタッフの人が先に登っていった。少し滑りやすくはあるが、そう問題は無い。40分ほどで念願の槍ヶ岳山頂に到着した。
 肩の小屋に降り、今度は南岳を目指す。そこまでにかかった時間で穂高を目指すか槍沢を下るかを決めることにしたのだが、実際着いてみるとかなり微妙な時間になってしまった。このままでは北穂高岳山荘に着くのが17時を過ぎると考え、私は槍沢へ降りるコースを提案した。しかし和尚さんはどうしても穂高まで行ってみたいとのことで譲らない。結局私が折れ、北穂を目指すことになった。大キレットはやはりなかなか手強い。それでも和尚さんはたじろぎもせずその巨漢で難所をクリアしていった。ただ最後の飛騨泣きではやはりペースが落ち、時間が刻々と過ぎていく。ガスが沸き、展望も利かない。17時30分、何とか暗くなる前に山荘に到着した。
 9日。今日はゆっくり下って上高地泊まりにしたいという和尚さんの希望があり、それならば2人それぞれ別コースを下ることにした。和尚さんは北穂から南稜コースを下って涸沢、上高地へと下って行くコース。私は涸沢へは降りず、奥穂、前穂、岳沢から上高地へと降りていくコースを選んだ。紅葉が最高にきれいなこの時期に涸沢へ行かないというのは非常にもったいない気がするが、まだ通ったことのない吊尾根・岳沢のほうが魅力的に思えた。
 6時40分、山荘を出発。時々ガスが沸くが、景色は遠くまで見晴らせる。北穂山頂で和尚さんと別れる。「気を付けてよ!」の問いかけに「疲れたらヘリコプターを呼ぶから」と和尚さん。「おい、おい、・・・。」やや不安が残るまま私は稜線を歩き出した。涸沢岳、白出しのコルを経て、9時奥穂高岳に到着。やはりこちら側は人が多い。人の話によると、涸沢ヒュッテでは1つの布団に3人で寝させられたとのこと。平日というのにすごい人気である。左手にジャンダルムを見ながら吊尾根に入っていく。思ったほど危険なところはなく紀美子平に到着。ここから前穂へピストン。山頂では残念ながら視界が効かず、北尾根や明神を見ることが出来なかった。ここから岳沢に下っていく。ダケカンバを基調とした紅葉がなかなか綺麗で、静かなところがまたいい。コメツガ・シラビソの樹林帯に入り、13時40分、予定より早く上高地に到着した。和尚さんを携帯で呼ぶが応答がない。やや心配ながらもビジターセンターでぶらぶらしていると、16時過ぎに「上高地に着いた」との電話があった。無事合流し、旅館にて祝杯を挙げた。
明神岳を左手に見ながら 屏風岩が現れた
カンボクの実 マユミの実
槍沢の紅葉が始まった 稜線はまだまだ
殺生小屋より出発 東鎌尾根に取り付く
雪の槍ヶ岳へアタック 肩の小屋を眼下に
登頂! 北鎌尾根方向
大キレットへ下りていく 北穂小屋より槍をバックに
槍から穂高への稜線 前穂から続く北尾根
涸沢岳への登り ジャンダルム方向
吊尾根方向 イワヒバリ
秋毛の雷鳥 涸沢方向
岳沢方向 右手に西穂
左手に明神 再び岳沢
河童橋より奥穂方向