会員の山行 228号

【2011年10月8-9日/明星山南壁(左岩稜、左フェース〜山頂):糸魚川市/吉田岳調査】

 3時に小国を出発。胎内ICで高速イン、糸魚川ICで国道へ。コンビニに寄ってから、ヒスイ峡へ向かった。明星山南壁は石灰岩できた標高差300mの大岩壁で、ルートが20以上もできている。アプローチも短く、渡渉が楽な場合は15分で岩に取り付くことができる。とは言え自分達は初めてなので、まずは入門コースとなる左岩稜コースを初日に、左フェースコースを2日目に登る事にした。
 7時、ヒスイ峡の駐車場に到着。何組かのクライマーが準備を行っていた。外はけっこう寒い。そのためゆっくりと準備を行い、8時に踏み跡を辿り沢へと下りていった。昨日までの雨で、沢の水量は以外にも多い。流木を伝い、必死の飛び石で繋ぎ、何とか対岸に渡る事ができた。他のクライマーは皆、靴を脱いでズボンを腿までまくり、ジャブジャブと冷たい川を歩いてきているようだった。
 ルートを探す。3ピッチ目以降は分かったのだが、取付きが良く分からない。とりあえずクライミングの準備を行い、「ま、これだろ」と思って取り付いてみると、案の定、ルートは行きたい所とは別の方に繋がっていた。五月ルートというコースだったようだ。ロワーダウンで下ろしてもらう。こんな所でフリークライミングを楽しんでいる場合ではない。気を取り直して、再度それらしきコースに向かってみる。実はこれもハルシオンという別のルートだということに終わってから分かったのだが、3ピッチ目から左岩稜のメインの部分に入る事ができた。やはり経験者と来るべきだったと後悔。ただ、結果的にはこの1,2ピッチ目が核心部だった。3,4ピッチの人工登攀を無難にこなし、後は上部のV級の岩場をつるべで4ピッチほど登り、終了点に到着した。
 下降路は、藪の中に続く踏み跡を辿って下りていく。ただこれも道が分かりづらく、滑ったり、とげのツルが引っ掛かったりと、あまり快適な道ではない。明日もこの道を下るのかと思うと、少し憂鬱になった。「そういえば、南壁を登攀した後、そのまま山頂に登って、影側の登山道を下山するということはできないのだろうか?」そんな事を考えながら下っていくと、1時間弱ほどでヒスイ峡への散策路に到着した。
 駐車場で登ってきた南壁を眺めていると、新潟の大御所クライマーIさんが声をかけてきた。65歳と70歳のペアで明日南壁を登るとのこと。すご過ぎる。でもおそらく余裕で登ってしまうのだろう。ついでにいろいろと南壁についてのことを聞き、山頂へ抜けられるのかも聞いた所、「俺は行った事がないし、知り合いでもいないけれど、2時間ほどで登れるらしいよ」との返事。明日はその方向で行く事に決めた。糸魚川市内でおかずを買い込み、温泉に入ってからキャンプ場へと向かう。寝不足と初めての岩場だったせいか、意外と疲労感を感じた。今日は早めに眠ろうと考えていたところ、キャンプ場には山形ナンバーの車が。なんとそこで3人の知り合いが宴会を始めているではないか。結局、買い込んだ日本海の刺身と糸魚川の地酒は没収され、山形県人会が9時過ぎまで続く事になった。
 2日目朝5時30分起床。宴会の方付けを行い、朝食を取り、テント撤収を行い、ヒスイ峡駐車場へ。山形チームや新潟組はすでに岩に取り付いているが、それほど他のクライマーは多くなく、マイペースでやれそうだ。アプローチと2ピッチ目までは昨日と同じルートのため、今回は安心して取り付くことができた。3ピッチ目からは右上する形で登っていく。ルートが分かれば、そう難しくはない。上部のピッチは、柴で支点を取る感じになり、13時、終了点に到着した。
 さて、予定通りここから山頂を目指すことにする。ロープはしまい、ハーネスとメットは装着したまま登り始める。ただ、所々に岩場が現れ、気は抜けない。さらに浮石やガラ場での落石には要注意。落としたら下にいるクライマー達に直撃の可能性がある。やっとP6と言われるピークにたどり着くと、山頂ははるか彼方にあることに気付かされた。「やはりそうか・・・。これは2時間で着くというのはウソっぽいぞ」。ただ、景観は素晴らしく、紅葉の稜線から、北アルプス、雨飾山そして上信越の山々が綺麗に見渡せられた。それに励まされ、永遠と続く尾根道の岩場歩きと藪こぎを繰り返しながら、黙々と山頂を目指した。16時、やっと山頂に到着した。結局終了点から2時間30分かかった。落葉が進めば、もう少し楽に歩けるのかもしれない。十分に稜線歩きを堪能することができ、自分としては登攀以上に楽しむ事ができた。
 後は登山道を辿って下りていく。と言ってもこちらもけっこう急でそして長い。途中からは西壁を左に眺めながら下りていった。最後はトレランで下るWKBにがんばってついていきながら、17時にヒスイ峡に到着した。

明星山南壁
いや〜、どこ渡ればいいの??
3ピッチ目の人工登攀
セカンドは余裕です
下降路へと下りていく
カヤの実がたくさんありました
再度、南壁
2日目、左フェースルート
何か、顔みたいな岩だな〜
下には、大勢の観光客が
登攀終了点にて
P6を目指す
まだまだ気を抜けない
おっと、お決まりのポーズ
眼下に小滝の集落、遠くに雨飾山
明星山登頂
紅葉の登山路を下っていく
西壁を左に眺めながら