会員の山行 266号

【2012年12月24-26日日/南ア・黄蓮谷左股、篠沢七丈瀑/吉田岳調査】

【日程】
24日 竹宇駒ケ岳神社-(黒戸尾根・5h)-五合目小屋跡
25日 五合目小屋跡-(1.5h)-千丈ノ滝上-(1h)-二股-(1.5h)-大滝-(3.5h)-八合目-(1.5h)-篠沢七丈瀑着-(3h)-篠沢七丈瀑発-(1h)-五合目小屋跡
26日 五合目小屋跡-(3h)-竹宇駒ケ岳神社
【行動概略】
 南ア・甲斐駒岳へと続く黄蓮谷へ、アイスクライミングの計画を立てた。ここはアルパインアイスをやる者には憧れのような所で、この時期には休み毎に人が入っているようである。ただ今年は、氷結はいいが雪が多くラッセルでかなり手間取り、ヘッドラを点けながら下ってくるパーティーが多いようである。天気は良さそうだが、かなり強風の予報が出ており、不安を抱えつつ白州へと向かってみた。
 24日、駐車場で時間を調整し、やや薄明るくなった6時に竹宇駒ケ岳神社駐車場を出発。80Lザック満杯の荷物を背負い、長丁場の黒戸尾根を登っていく。途中でアイスクライマー風の人と会い話をする。「テン場に戻ってきたのが夜9時だった。ラッセルがきつく、道にも迷い、散々だった。」とのこと。ありがたくアドバイスをいただいた。予定通り5時間で五合目のテン場に到着した。休んでいると、ヘリコプターが黄蓮谷のほうへ飛んでいき、しばらくして戻って行った。遭難事故のようである。「おいおい、やめてくれよー」。
 気を取り直し、テントを設営し、予定通り篠沢七丈瀑へと向かった。しかし下り口が良く分からない。この辺かという所から下りていったが、どうも違うようで登り返してきた。時間もあまりなく、明日の本番前に疲れてもいられないので、残念ながら篠沢七丈瀑はあきらめる事にした。明日以降状況によっては登る機会もあるだろう。
 テン場に戻ってくる間に5人ほどのアイスクライミングパーティーと遭遇。篠沢七丈瀑に行っていた様で、下り口を教わった。Pm2時過ぎからゆっくりと水作り、そして晩酌を始めた。4時頃一人の登山者が降りてきて、テントを撤収し、下りていく準備を行っていた。話しかけてみると、さっきの遭難事故の当事者のようで、連れの方が滑落して足の骨を折り、ヘリ収容の後1人で登ってきたとのこと。大滝にアイススクリューを二つ残置してきたと言われたので、回収できたら送ってあげますよと約束をした。前日のパーティーが落としていったロープもあったそうである。暗くなってきてから雪が降り出し、8時に就寝とした。
 25日、3時半起床。4時ヘッドラを点けて出発。黄蓮谷へ降りていく道は所々に赤テープが付けてあるが、暗いため見つけにくい。案の定途中から分からなくなってしまった。確実な所まで戻るのが鉄則だが、おおじゃくしてトラバース気味に行けそうな道を探しながら下りていくと、幸運にも赤テープの道と合流することができた。6時30分、黄蓮谷に到着。昨日のトレースが残っており、それを使わせていただく。最初の小滝は凍っておらず、右側から巻いて行った。坊主滝、チムニー滝はロープレスで登っていった。滝と滝の間は凍っておらず、踏み跡を歩いていく。ナメ滝が凍っていればもっと快適な登行ができるのだろう。9時、大滝が現れた。予想したほど難しくはなさそうだ。残置されたスクリューが3つあった。やはりアイゼンをはいたままの滑落は、簡単に足首骨折になる事があるのだろう。自分達も気を引き締めて登攀にかかる。40mほど登った所でピッチを切り、WKBのビレーにかかった。その後30分ほど歩くと最後の滝が現れた。そこに残置されたロープがあるはずだったが、新雪に埋まっているのか発見できなかった。滝を登りきり、ハーネスを外す。ここからは怒涛のラッセルとなった。トレースは吹き溜まりとなってほとんど埋まっていた。しかし、小国で鍛えたラッセル力で、腰までの深雪をものともせず、前進していく。12時30分黒戸尾根の登山道へと出た。八合目を越えた所で、やや遠回りをしてしまったようだ。しかし、ヘッドラを想定していたので、あまりの早さにビックリ。「よし、このまま篠沢七丈瀑へと継続しよう」という事になった。
 昨日教えていただいた下り口から篠沢へと下りていく。意外と滝は遠かったが、道は良かった。七丈瀑は見事な大滝だった。これは結構手強そうだ。左側をロープレスで一段登った所でビレーにかかる。最初の垂壁部分では足場がなく苦労をした。その後は何とか順調に登りきり、ロープを50m伸ばした所で左手の潅木でビレー。WKBに登ってもらう。しかし、3度ほど重い引きを感じた。滑落しているようだ。「登るかー?」と聞いたら「や・め・るー」とのこと。支点の潅木は懸垂で下りるには心もとない。しかし、スクリューを回収しなければならないし、WKBもロープなしでは下りられない。心を決めてその潅木で下りていく事にした。慎重に懸垂を行い、WKBのところまでたどり着いた。そこからトラバースして、再度今度はまともな大木を使い懸垂下降で取り口に到着した。16時40分、やや複雑ながら継続登攀を終了。ヘッドラを点けて登り返す。明日は下りるだけなので、時間はそう気にならなかった。17時50分、テン場に到着した。
 26日、5時半起床。風がものすごい。今日はとても登れそうはない。1日ずれていれば敗退していただろう。どうも我々は南アとは相性が良いようである。飛ばされそうになりながらテント撤収を行ない、下山を開始する。風は中腹まで強かった。アイゼンもかなり下まで履いたまま降りてきた。3時間で駐車場に到着。吹雪の小国町へ向かった。
黒いカモシカが出迎える
対岸の山裾を朝日が照らす
黒戸尾根刃渡り
眼下に篠沢七丈瀑が見えた
暗いうちに出発
最初の小滝
坊主の滝
チムニー滝
遠くに八ヶ岳が見える
下の大滝が現れてきた
大滝登攀中
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上の大滝に挑戦
最後のラッセル
八合目に出た
篠沢へ下りていく
七丈瀑が見えてきた
下部ルート工作中
下山開始
北杜市を見下ろす

 おわり