飯豊朝日連峰の植物達
先日、助川暢先生より、このたび石栗正人氏が執筆された「山形県の植物誌」を譲っていただき、はやる心で頁をめくってみた。期待にたがわぬ内容であり、昔の想いが甦ってきた。
卒業し飯豊朝日連峰の山麓に勤めることとなった私の山行は、より一段と飯豊朝日連峰に傾斜をして行った。地域を限定して山を歩くので、それまで見向きもしなかった山域の動植物に目が向いたのも当然のことだったかも知れない。
高山植物の写真を撮り、図鑑を開いて名前を記してみたが、それだけではどうにも納得がいかなかった。思い余って、米沢市在住で植物分類学をなされていた石栗正人氏宅に押しかけ、自分が名前を記した写真を見ていただいた。突然に素人が自宅に押しかけたのだから、氏にとっては大変な迷惑であったろう。いま振り返れば汗顔の至りである。
氏は微笑みながら若造の相手をしてくださった。「この写真だけではなあ」と言いながら、誤りを正し、「あまり細かい分類は止めたほうが良いよ」と諭していただいた。
この時まで、植物の分類をするためには、一部分ではなく、さまざまな部位の観察が必要であることを、私は知らなかったのだから、呆れ返る。
全く植物の基礎知識がない私は、膨大な分類という知識の海で溺れかけそうになった。そこで一計を案じた。
飯豊連峰や朝日連峰の植物が記載されている文献や調査報告書を掻き集め、片端からその名前を書き出し、それ以外の植物には蓋をして、自分が撮った写真と比べてみたのである。
この作業は、同じ植物であっても、図鑑によって和名が異なっている事を教えてくれた。また、学生時代に自然保護活動と造園業を経験していたので、植物が生育する環境の違いや環境による形態の変化という概念は有していた。
厳冬期山行の経験は、そのまま植生分布と一致した。とてつもない強風に吹かれた場所、胸を越すラッセルに苦しめられた場所、危うく雪崩に巻き込まれそうになった場所、衣類を凍てつかせる湿った雪、それらは取りも直さず植物の種類を支配していたのである。
このようにして出発した私の植物知識は、飯豊朝日連峰限定の直感に頼る代物となってしまった。
近年、加齢のせいだろうか、ただでさえ鈍い頭の活動がゆっくりとなって、新しい植物名の記憶どころか、知っている筈の名前さえ思い出せなくないことが多くなった。
そこで、私の備忘録としての頁を作ってみようと思い立った。無理せずのんびりと作ってみることとしようと思う。
参考文献 |
書籍名 |
著者・編者 |
発行期日 |
発行所 |
略称 |
やまがた山の花 |
吉田悟 |
1995年4月第1刷 |
山形新聞社 |
吉田 |
新潟県樹木図鑑 |
山本敏夫 |
1993年6月改装第1刷 |
新潟日報事業出版部 |
新樹 |
山渓カラー名鑑・日本の樹木 |
林弥栄他 |
1985年9月1刷 |
且Rと渓谷社 |
渓樹 |
飯豊山・花の旅 |
小荒井実 |
1984年6月初版 |
褐至ァさつき研究社 |
小荒 |
日本の野生植物・草本・T、U、V |
佐竹義輔他 |
1982年1月初版第1刷 |
兜ス凡社 |
野生 |
牧野新日本植物図鑑 |
牧野富太郎 |
1979年2月第35版 |
竃k隆館 |
牧野 |
原色日本高山植物図鑑・続原色〜 |
武田久吉 |
1976年7月増補改訂19刷 |
兜ロ育社 |
原高 |
山渓カラーガイド・カラー山の花1・2 |
丸山尚敏 |
1975年4月26版 |
且Rと渓谷社 |
渓花 |
原色日本樹木図鑑 |
岡本省吾 |
1972年11月31刷 |
兜ロ育社 |
原樹 |