【2006年07月17日/梶川尾根〜石転ビ沢/井上邦彦調査】】
起床して天気予報を確認すると、昨夜までの悪天からすっかり変わっていた。すぐにVCKに「アイゼン・ピッケルを持参するよう」に電話をする。車庫で自転車を車に積もうとしている時、QKGが顔をみせた。大淵・天狗平間の通行が可能になったとのことである。喜んで、集合場所のコンビニに向かう。パッキングをし、1台に同乗して天狗平へ。
思いもかけない天候(曇り)に感謝しつつ、06:56天狗平を出発する。湯沢橋には水が橋を越えた跡があった。07:29楢ノ木曲リを通過する。コメツツジ・ツルアリドウシが咲いている。荷物が肩に食い込みお腹が空いて来たので、08:06-18湯沢峰の肩で食事を取りながら梅花皮小屋のOTJと交信する。
08:30湯沢峰を通過する。09:00-12滝見場で食事、石転ビ沢を望むと雲と雲の間に見えた。中ノ島(草付キ)左岸から出ている土石流が確認できた。9:42-59五郎清水で水を補給し食事を取る。水場を直す手が痺れるように冷たい。水場のあちこちから水が噴出しており、山が水を沢山含んでいると改めて感じた。
急登に喘いでいると何名かの登山者が下山してきた。昨夜は梅花皮小屋に泊まったとのことである。ダイグラ尾根は御前坂あたりで雲が上下している。遠くで雷の音がしたが、どうも違う。どこかで雪渓が崩壊した音がここまで響いてきたようだ。
10:26三本カンバから望む石転ビ沢は相変わらず、中ノ島(草付キ)付近から上が雲に覆われている。ここから花が目に付くようになる。ヤマトウバナ・シロバナニガナ・ミヤマコウゾリナ・ハクサンボウフウ・カラマツソウ・ウサギキク・ズダヤクシュ・ゴゼンタチバナ・ヒメサユリが咲いている。
10:52梶川峰から雲の中に入る。ニッコウキスゲ・イワイチョウ・アカモノ・ヨツバシオガメが咲いているが、ヒメサユリは透明になりつつある。11:03ケルンを通過すると、チシマギキョウ・ハクサンフウロ・マルバシモツケ・イワカガミ・ヨツバシオガマ・チングルマが咲き、霧雨になってくる。
11:25-36扇ノ地紙でカッパを着て食事を取る。ムカゴトラノオ・アカモノ・ミヤマキンポウゲ・ハクサンフウロの中を歩いていると、道刈りをしていた石井さん(門内小屋管理人)とお会いした。さっそく彼と記念撮影。
11:57-12:03門内小屋でトイレ休憩。「門内で自転車を漕ぐ」という言葉が「トイレに行く」隠語になりそうだ。ギルダ原はマイヅルソウ・ミヤマリンドウ・ハクサンボウフウ・ニッコウキスゲ・チシマギキョウ(盛)・マルバシモツケ・ハクサンシャクナゲ・タカネナナカマド・オノエラン(盛)・ヒナウスユキソウ・ヨツバシオガマ・マルバダケブキ・ハクセンナズナが咲き、先週とは全く異なり季節の移ろいを実感した。
12:50北股岳山頂でOTJに、お湯を沸かしておいてくれるように頼み、ハクサンチドリ・ウラジロヨウラクを見ながら下る。
13:05-14:40梅花皮小屋管理棟に到着すると、ザック用にブルーシートを敷いていてくれた。早速荷上げ品を取り出し、石油ストーブで濡れた身体を乾かしながら、OTJが作ったゼンマイ(太い!)をつまみにコーヒーやビールで喉を潤す。暫しくつろぎラーメンを食べて、塵類をザックに詰めて石転ビ沢を下ることとした。
あいにく雨が降ってきた。アイゼンを手に持って登山道を下り、アイゼンを着けて雪渓を下り、そのまま台地から夏道を下る。VCKがアイゼンをカッパに引っ掛ける。落石の音がした。視界がなく確認できないが結構大きい、北股岳方向から落ちたようだ。急斜面の雪渓を斜降し、中ノ島(草付キ)でアイゼンを手に持ち夏道を下る。
中ノ島(草付キ)は結構露出している。左手の沢の左岸の穴から吹き出した土砂が黒滝まで真っ黒に流れた跡がある。石も途中で引っかかっている。露出し始めた水場を過ぎると薄く石転ビノ出合が見えてきた。中ノ島(草付キ)末端の手前でアイゼンを履き、右の雪渓に上がる。そのまま降っていると右上から雪の塊が音もなく落下していった。途中から土石流を横断して黒滝左岸に降る。さらに左に巻き込み、とりあえず一息つく。
北股沢出合は落石が散乱していた。北股沢方面からの落石を意識しながら振り返ると、中ノ島(草付キ)の全景が見えたが、雨のため写真は水滴がついている。北股沢出合を過ぎると左岸の雪渓は亀裂が豊富で落石は途中で止まりそうだ、北股沢からの落石は右岸に飛ぶのでやや左岸寄りに降る。私のアイゼンが何度か外れるので、15:23-28ホン石転ビ沢対岸で2人ともアイゼンを脱ぐことにする。
亀裂を跨ぎながら順調に降る。見下ろすと石転ビノ出合周辺は見た事もないような状況だ。右岸は上の大石から下は雪がない。左岸は雪渓が崩壊し、そこから噴出した大量の土砂が帯状に下流の雪渓を走り落ちている。崩壊箇所の上流の雪渓は今にも崩れ落ちそうになっており近づけない。
私達は雪渓末端の厚さを確認して夏道に降り、そのまま下の大石に行き、右手の雪渓に上がって、チョコレートの上を梅花皮沢左岸に渡ったが、ここでも夏道に降りる部分が悪く、雪渓の上端まで登って土の上に降り、登山道に戻った。15:57石転ビノ出合を通過する。
石転ビノ出合から下流の雪渓は多数の亀裂が入り、通行できそうもない。夏道を辿ることにする。赤滝は足場が草に隠されて、滑りやすい。ここから滑ったら終わりだ、慎重に通過する。昨年転落者が出た箇所を過ぎ、滝を横切る。改めて雪渓の状態を確認すると、穴と亀裂で到底歩ける状態ではない。
以前雪渓の崩壊事故があった箇所は、これから崩壊しますよという教科書のような状態。梶川出合上流の大岩に降りる所は、最後の2mが鉄砲水に削り取られている。ピッケルのピックを突き刺せる場所を探しトラバースして通過する。
残雪の上から梶川出合を見ると、左岸の河床にある夏道が梅花皮沢本流になって濁流が流れており、全くの通行不能。梶川を遡って渡渉点を探し、靴の濡れるのも構わずに梶川左岸に移る。黄旗が枝に引っ掛かっている場所に巻き道の入口がある。ザックにつけたストックが木の枝に引っ掛かる。
巻き道の最上部付近で、登山道が崩壊して無くなっている。仕方なく手前から潅木を掴んで藪を漕ぎ、崩壊地の上をトラバースして巻き道に下る。崩壊地から下を除くと、崩壊箇所は梶川左岸であった。
登山道に戻ると最近の道刈り跡があった。落合から若干雪渓の端を歩き地竹原に出る。地竹沢付近も様相が一変していた。地竹沢でも本流による流出が見られ、石を崩さないように這い上がる。そのまま婆マクレを通り、彦右衛門ノ平に出ると一息つく。
17:17-23うまい水は大蛇が通ったように沢筋が掘りこまれていた。ここで梅花皮小屋を出発して始めての休憩を取る。
下ツブテ石にある2本の小沢のうち上流部の沢は、流れ出た岩石が微妙なバランスで積まれており、如何に崩さないで通過するかに腐心をした。雪崩跡は通行に支障がなく整備されていた。ブナ林を進み砂防ダムが見えてくると、登山道が流水で抉られ、ブナの大木が河床に倒れていた。
これまた様相の変わったミズナシ沢を渡り、17:48砂防ダムに到着する。砂防ダムの上流は河床が広がったように感じられた。また下流には皮を剥かれた大木が中州のあちこちに散在し、鉄砲水の激しさを物語っていた。
砂防ダムから下の林道も、大蛇の通り道のように洗掘されていた。温身平の十文字からは洗掘はなかったが、沢から出た土砂が見られた。
18:15無事に天狗平に到着して、今回の山行は終了した。
掘れた急斜面は荷が肩に食い込む | よっこいしょ |
滝見場から石転ビ沢を望む | 滝見場から三本カンバを見上げる |
ダイグラ尾根 | |
五郎清水で喉を潤す | 三本カンバから石転ビ沢を望む |
三本カンバにて | 扇ノ地紙でカッパを着る |
門内小屋管理人の石井さんと | 今回のメンバー |
ヒメサユリの中、門内小屋に向かう | 中ノ島(草付キ)からみる土石流 |
土石流の跡 | 雪渓が土石流に覆われている |
まだ石が残っている | 中ノ島(草付キ)末端を見下ろす |
黒滝まで降りてきて一息つく | 石転ビノ出合が見えた |
中ノ島(草付キ)を見上げる | 瞬間的にガスが薄くなった |
ホン石転ビ沢出合でアイゼンを脱ぐ | 石転ビ沢出合全景 |
噴き出した土石流 | この穴から噴き出した |
まるでチョコレートだ | 右は門内沢 |
チョコレートの上を歩く | |
夏道に下りるのも一苦労 | 赤滝のへつりから雪渓を見下ろす |
赤滝のへつりで滝を通過する | |
赤滝付近の雪渓 | |
今にも崩れ落ちそうな雪渓 | |
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登山道が壊れている | 梶川出合、登山道は流れの下 |
左端が今回崩壊した所 | 梶川上流から本流を見下ろす |
梶川を渡る | 巻き道をさらに高巻く |
巻き道の崩壊した箇所 | 崩壊の様子 |
登山道まで降りて梶川出合を振り返る | |
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うまい水にて | 砂防ダム手前の崩壊地 |
砂防ダム下にも流木が散乱している | |