登山者情報1102号 作業中

【2007年08月03-04日/登山道維持管理修復技術講習会/井上邦彦調査】

《目から鱗の研修会》
 8月3日夕方から4日午前中にかけて、天狗平で行われた研修会は「目からうろこが落ちる」ものであった。
 講師の福留氏については、あらかじめインターネットで近自然工法の大家であることは承知していたが、土木については全く無知な私にとって、スクリーンに映し出される映像と、彼の平易な解説に、身震いするような衝撃が走った。
 以下、若干記憶に残った内容を記載してみたい。
 水は単純に低い所に流れるのではなく、登りもすれば降りもする。始め意味が分らなかったが、河床の断面図を見せられれば、確かに淵では深く(低く)なり、瀬では浅く(高く)なる。
 平坦な砂地に傾斜をつけて水を流せば、時間の経過と共に流路は蛇行を始める。蛇行して方向が変わる場所が淵となり深くなる。それが直線部で瀬となり浅くなり、再び淵となって方向を変える。
 蛇行には大きな蛇行と小さな蛇行が組み合わさっている。平水時は小さな蛇行に沿って流れているが、洪水時には大きな蛇行に沿って流れる。これを見極めることが重要だ。
 川が蛇行し淵と瀬があることによって、生物の多様性が成り立っている。これが自然な形であり、逆らう必要はない。
 洪水時の流れは、平水時の流れと異なる。平水時の流れに目を奪われて洪水時の流れを失念していないか。
 例えば、登山道が掘れて水路になっている時、水を左の溝に落とそうとして丸太を溝の下に、左を下流に右を上流に斜めに置いたとする。平水時は左の溝に流れるが、大雨になると水は丸太にあたり90°の角度で曲がるから、右に流れて溝には入ることがない。このケースの場合は、溝よりも高い所に左を上流に右を下流に斜めに置くべきである。
 水は水をもって制するのが良い。濁流が淵に当たって岸の侵食が進み問題になる場合は、淵の上流に斜めに石を積んだ出っ張りを作る。するとそこで水は曲がり淵に行かないばかりか、曲った水が淵に直進して来る流れとぶつかって直進する流れを変える。この結果、侵食どころか、淵に土砂が堆積することになる。
 石造の橋は上からの力を両岸の石にかかるように計算されている。このアーチ橋をそのまま上流に倒した場合、上流から加わる水の力はアーチを強くするだけである。さらにこのアーチで流れが曲がり、アーチの下流でぶつかり合って落下エネルギーを放散させる。
 水を直線的に流すのではなく、淵(プール)と瀬を組み合わせてコントロールして行くことがポイントである。
 アーチの基本的な構造は、《頂点を上流に向けた石組み半円アーチを、斜路とした床固めの河床に埋め込んでいくものである。「力石」としての巨石を半円下流側の2支点と頂部1箇所の3箇所に据え、その間にアーチリングの「輪石」を配置する。そしてすべての石材は長径の胴を上流側に向け、その先端部を河床より下に下げ、高水や土石の流れに抵抗しないよう、逆にこれを安定方向に使う構造とした。これで巨石の直下流に流速ゼロのポイントができ、輪石部の流速は早くなりその下流に深みを形成できる。》

様々な道具の解説 これが秘密兵器 興味津々
登山届出所にて 実技指導開始 聞き漏らすまいと真剣
作業開始 根石と力石を念頭に 淵の側面に石を貼る
石を動かす なかなか思うように動かない 講師がポイントを指導
雨が上がってきた 石は傾斜をつけて VCKも東京から駆けつけた
基本の石組みは・・・ ただ置けば良いというものでない そこにある物を組み合わせる
これはアーチ型 各班が課題に取り組む 少しずつ石が動くようになった
講師の評価 LTQが講師に説明 亀山班
説明に力が入る 講師のチェック さて採点は?