登山者情報1125号
【2007年11月01-02日/山形県山岳遭難対策委員会救助訓練/井上邦彦調査】
例年は積雪期に行われている訓練であるが、今回は蔵王坊平を会場にしてに秋期に実施された。講師はHZU・QVH・PWD、QVHとPWDは初級者担当、HZUは上級者担当とした。予算の関係で1泊2日、時間がもったいないので開校式の後すぐに昼食を持参して千人沢に向かった。
上級班は橋を渡った右岸壁でレスキューハーネスを使った背負い吊り下げ。今回の上級班指導ポイントは「教えないこと・そこにある道具だけで行うこと」である。受講生が自分達で全てやってみる。講師はその安全性を確認することと、誤ったやり方をしていた場合は正しいやり方を指導する。 もっとも作業は場所も道具も場当たり主義で対応するというのだから、これが正しいなどということはない。自分で創意工夫して始めて本番でも使える技術になるのだ。
足場が不安定な急傾斜地なので、とりあえずHZUが固定ロープをセットし、必ずセルフビレイを取って作業することを指導した。受講生達は安全な所でレスキューハーネス着用方法を確認し、急傾斜に移動した。ECBをK君が担ぐ、エイト環で確保し徐々に下り始める。オーバーハングに差し掛かった時点で、K君とECBから「ロープを止めろ!」と連絡があり、何か必死になって叫んでいる。始めは何を言おうとしているのか分らなかったが、要は「ロープが岩に擦れている、このままではロープが切れて落ちてしまう」とのことである。既に20m程下降している。一人の隊員がシートを持って下り始めたので、慌てて止めて何をするのか尋ねると「ロープが擦れている所にあてる」とのことである。セルフビレイも取っていない。「必要ない、すぐ戻れ」と指示をする。冷静に考えれば、オーバーハングの所で自分が動けなくのが分かるはずだし、そこで宙吊りになっている二人の体重がかかっているロープの下にシートを当てることなぞ至難の業、さらには当ててもすぐに外れる可能性が高い。全員にそのまま続行して下まで降ろすように指示をした。ECBの悲鳴にも似た絶叫が渓谷にこだまして、無事に到着。このままでは吊り上げもされると思った二人は急いでレスキューハーネスを脱いで対岸から上がってきた。
安全な所で、二人に説明する。「確かにクライミングロープはゴムのようなものであり、張り切った状態で角ばった岩に擦れば絶対に切れないという保証はない。しかし、一番危険なのは、ロープを停止して左右に揺すれば、岩に擦れるのはロープの一定の場所であり危険性は飛躍的に増大する。それよりもスムーズにロープを下降させることにより、擦れる箇所が移動するのでリスクは小さくなる。」彼らによれば鋭角な岩角ではなかったという。「急斜面を下降しオーバーハングにさしかかれば岩に擦れるのは当たり前である。それより、あの状況で吊り上げに切り替えたら、リスクはさらに増えてしまう。」
次は対岸(左岸)で吊り上げのため、先ずは吊り下げを行う。ここには太い樹がないので柴を使い流動分散方式で支点を作る。さらに念のためもう1本のロープで確保する。オーバーハングまで降り姿が見えなくなった段階で、ロープ停止の合図があい、鈍い音が聞こえてきた。落石が起きているようだ。それも大きい、何発か下の川原に落ちたらしく、岩と岩がぶつかる音が響く。
降り着いた時点で危険と判断し、吊り上げを中止する。上がってきた班長は「岩が浮いていたので、蹴って落としながら下った。」とのこと、自然落石にしては派手な音だと思った。
翌日は、小雨模様。ゲレンデからずれて藪の中を登る。りふと終点からは登山道をあるいたが、初級班はここから藪に入り小隊に分かれて、藪と悪戦苦闘。上級班はタイムリミット地点で2班に分かれ、それぞれ現在自分達が持ってるものを利用して搬送用具を作り、搬送を行う。A隊はザックカバーをベースにガムテープ搬送法を行った。最初は良かったが、途中でザックカバーの短さが露呈し、何度も外れてしまった。一方、B隊は通常のハーネスとザックを組み合わせた独自の搬送用具を開発した。最初は試行錯誤のため時間を要したが、完成してからは快調に進みA班を追い越してロッジに到着した。
開講式が終ったら早速身支度 |
訓練現場に到着 |
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先ずは装着方法の確認、以後は撮影できず |
登山届けがありました |
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参考資料になります |
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A班の搬送準備 |
B班の搬送準備 |
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こちらはA班 |
こちらはB班 |
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A班はザックカバーを使ったガムテープ方式 |
B班は何とハーネスを・・・ |
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搬送準備完了 |
B班も準備完了 |
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A班が先行 |
B班も後に続く |
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足元に気をつけて |
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頻繁に交替 |
交替時は両側から支える |
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黙々と進む |
B班が調子を出してきた |
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途中でB班が先になる |
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全員の協力がポイント |
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だいぶ慣れてきた |
スキー場に |
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こちらは初級班 |
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A班は時折ザックカバーが外れて苦労している |
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A班作成 |
後ろが痛いのでタオルで補強 |
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B班作成 |
ハーネスをザックに固定 |
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腿を吊る |
ポイントはここです |
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こんな搬送方法、HZUも始めてです |
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参加者全員で記念撮影 |
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