【2008年01月05日/カンデ峰/井上邦彦調査】
白太郎山に登る途中の小峰で正面に仰ぐのがカンデ峰である。標高は白太郎山より若干低いがゴツイ感じが魅力的で、何時か登ってみたい山のひとつであった。以前、南側から尾根伝いに試みたことがあったが、思いの外に遠く諦めた経緯がある。
関さん宅に顔を出し、コースの情報を尋ねる。樋倉ノ沢左岸の尾根はやはり距離が長い。また樋倉ノ沢は途中が岸壁に囲まれた廊下になっており、雪崩が危なく通れるものではない。手前からなら尾根を詰めることが可能かもしれないとのことであった。
今日は除雪車が来る心配がないので路肩に車を止め、07:32樋倉ノ沢に入る。林道沿いに杉林を進むと、小さな動物が走っていった。リスだろうと見ていると、杉の幹の途中で一瞬静止した。かなり小さいが広げた両手足の間に膜がはっきり分かった。動物の色はグレー、背中に黒く太い線が描かれていた。モモンガである。この動物は夜行性のため、このようにはっきりと全身を見たのは始めてである。今日はこれだけで満足気分だ。
崖が出てきたので沢に降りて左岸に移り、林道跡を進む。程なく両岸が迫ってきて廊下になる。前回はここから左岸の尾根を詰めて主稜に出たが、結局カンデ峰までには至らなかった。
戻って、対岸に適当な尾根を探す。08:21右岸に移って若いブナ林に取り付く。快調に高度を稼ぎ、8:41斜面を登りきって細い尾根に出る。尾根上に人のトレースがあると思ったらカモシカの足跡だった。
尾根の正面を大岩が塞ぎ、左側は急峻な崖を有する沢である。潅木に足を取られながら登る。尾根最上部に差し掛かり、見上げると左側は岩壁、右は松尾根。松尾根との間は雪崩れが発生しやすい地形となっている。正面の密生した潅木を嫌い、雪面に露出している潅木を掴みながら雪崩地形を登る。
670mようやく尾根上に上がるとカンデ峰と飯豊連峰が見えた。期待を上回る天候となった。さらに痩せ尾根を登り、9:57主稜に着く。平坦な松尾根に雪庇が出ているが、さほど危険は感じない。見上げると白太郎山の山頂付近は霧氷に覆われている。
鞍部から右手の斜面に入り、若いブナ林を斜めに降り10:26沢の合流点で樋倉ノ沢を渡る。雪が被っているので枝を掴み力任せで対岸に上がる。
スパイク長靴に丸カンジキでここまで来たが、殆ど膝前後のラッセルなのでズボンが濡れてきた。10:30-41カッパのサイドをフルオープンにして履く。
10:58-11:05ブナ林の中で休憩としお握りを食べるが、すぐに寒くなってきたので歩き始める。若干曇ってきた。11:23松尾根まで登ると、飯豊の方向が見えるが飯豊連峰は薄くなってきた。
11:27藪を漕いでいる時、跳ねた木の枝が左目を直撃した。目の中に枝が入ったような感覚がはっきりした。痛くて目を開けられない。暫くしてようやく薄目を開けると物が見える。眼球は傷ついていないらしい。何としても歩いて進まなければ帰れない。片目で行動しようとすると左眼が痛い。
片目で何とか登りきったと思ったら、いきなり痩せた尾根の岩稜のコルに出た。岩の上は巨大なナラが太い幹を広げ通れそうもない。岩の左下を通って雪庇を壊して尾根に上がろうと試みたが、途中で危険すぎると判断、左側の尾根に移ることにした。
移動の途中で気が変わり、これまでの尾根を大きく左から巻いて、11:40尾根上に上がる。目の痛みも次第に治まってきた。
11:45-53カンデ峰の直下で一息入れる。徳網山の先に「燃え上がる炎のような神々しい峰」に見とれる。まるで三面の神峰といった迫力である。
12:20山頂の肩まで出る。カンデ峰山頂は細長くなっており、ここからブナ林となって傾斜が落ちる。白太郎山まではかなり距離がある。後ろの飯豊連峰は上部が雲に隠れている。小国町の中心部と横根スキー場が見えた。
12:23-32カンデ峰山頂、兎の足跡がやたらに多いが姿は見えない。飯豊連峰方面は樹木で見えない。三体山方面が開ける。
僅かに移動すると、石滝川の沢底からせり上がる祝瓶山が眼を魅いた。眼を転ずると、大朝日岳・中岳・西朝日岳と連なる。始め白太郎山と思ったのはホコ石で、白太郎山は樹間に隠れている。展望を満喫しながら白太郎山方向に下る。
12:41時間もなくなってきたので最低鞍部から上流を巻くように樋倉ノ沢に降ることにする。若いが充実感のあるブナ林の斜面を歩く。
12:55-00空腹のため休憩し食料を補給する。始めは沢の側面をへつっていたが、面倒になってカンジキを履いたまま沢を歩き、滝がある所はへつって下った。
13:50気がつくとすぐ下に、往路時の渡渉点に着いてしまった。沢を飛び越えてブナ林に取り付き、往路とは逆方向の右に斜上していく。
14:25やっと主尾根上に出ると、懐かしい徳網山が見えた。ここから主尾根を右に向かい、見慣れたコースを下る。
14:45携帯電話が鳴った。関さんから「兎鍋が煮えているから食べに来い。」とのお誘いである。小雪が次第に激しくなってきた。疲れきって満足した身体で、15:41関さん宅に到着した。
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尾根を登る |
前方の視界は開けない |
ミノムシ? |
町境の山々 |
前回登った峰 |
徳網山 |
杁差岳と二王子岳 |
急登に取り掛かる |
飯豊連峰が見えた |
飯豊連峰全景 |
白太郎山 |
目指すカンデ峰 |
主尾根の雪庇 |
白太郎山 |
樋倉ノ沢を渡る |
雪虫が出ていた |
ブナ林を登る |
獣の足跡 |
樹間から望む白太郎山 |
山頂直下 |
徳網山 |
徳網山の後方に神々しい峰が聳えていた |
白太郎山 |
飯豊連峰が薄くなってきた |
山頂のブナ |
カンデ峰山頂 |
三体山方面 |
町境の峰々 |
祝瓶山 |
朝日連峰 |
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白太郎山 |
樋倉ノ沢の枝沢 |
飛び越えた |
ブナと雪の造形 |
カンデ峰を振り返る |
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