登山者情報 第1157号

【2008年06月14日/ダイグラ尾根〜石転ビ沢/井上邦彦調査】

 15日は国体山岳競技山形県予選会の打ち合わせがあるので、日帰りで計画を立てた。ところがクサイグラ尾根を登るkennroku氏から、梅花皮小屋に泊まりましょうとの誘い、まあ小屋到着が遅くなったら泊って翌早朝下山しても良いかなという気にもなった。しかし久しぶりの長距離なので足回りはスパイク地下足袋にしたので、早朝硬くなった雪渓を下るのも嫌だなというあいまいな気持ちであった。
 ふと目覚めると02:30、もう一度寝なおすと危ない気がしたので、予定より早く寝不足だが出発することにした。
 駐車場に車を停め準備をしていると登山者がやってきて挨拶を交わす。ダイグラを登る予定というと「吊橋は渡れないよ」と助言をくださった。
 03:29ヘッドランプを点けて薄暗い天狗平から歩き始めた。03:44温身平十文字を通過し、03:52車道が下り始める所から右の登山道に入る。
 桧山沢の吊橋は下のワイヤーを取り外しているので、空中ブランコが沢山ならんでいるような状態、とても通れるものではない。何時もの通り上流に進むと雪橋は欠片もない。
 瀞から瀬に変わる場所が徒渉のポイントである。地下足袋やズボンを脱いで、腰バックも濡れないようにザックに入れて、04:03-12桧山沢の渡渉を行う。冷たいが膝上程度で特に問題なく渡り、右岸で身なりを整える。雨が数滴、嫌な雰囲気である。
 下流に向けて藪を分けると、04:16登山道に出た。ストックを使い急坂を登る。04:26岩場からは天狗岳付近の稜線が見えた。ただ風の音が賑やかだ。足下にはサラサドウダンの花びらがびっしりと敷き詰められている。
 04:31ホダワラ、04:32石楠花岩を通過し、04:34-44食事とする。ここまでストック長さの調整が効かず(事前に油を塗り過ぎた)、すぐに伸びるので歩きにくいことこの上なし。寝不足なのだろうか吐き気がする。
 04:58登山道は右の斜面へ移る。05:05御池ノ平の一角に出る。05:09種蒔ノ池は殆ど雪に埋まっている。雪が消えたばかりなのでタムシバ・ムシカリ・イワウチワ・カタクリ・ムラサキヤシオ・チゴユリ・オオイワカガミが咲いている。
 ここで我慢できなくなりストックにビニールテープを巻きつけて何とか支障のないように細工した。
 05:20長坂清水の標識を直す。ヤマツツジ・シラネアオイが咲いている。05:29、毎年のことだが1,036mの崩壊地は降りの時にルートを迷いやすいので注意が必要だろう。
 05:41コメツガの台地。ウワズミザクラ・ナナカマドに加え、このあたりまで来るとサラサドウダンがまだ咲いていた。ナナカマドが根から倒れ道を塞ぐ。05:46すぐ上でもブナの枝が道を塞いでいた。
 登山道は急傾斜になる。ガクウラジロヨウラク・マイヅルソウ・シラネアオイ(盛)・ツバメオモトに励まされ高度を稼ぐ。前方の頭上、樹木の間に穴が開くと登山道は右に折れて傾斜がゆるくなる。11:58-06休場ノ峰に到着。三角点は横たわっている。食事を取りメールを打つ。なお携帯電話は自宅を出る時にフォーマからムーバに切り替えている。
 風の音が強いが、足下には花々が咲き誇る。ヒメイチゲ・ミツバオウレン・ハクサニチゲ・ミネザクラ・コメバツガザクラ・エチゴキジムシロ・ナナカマド・ヒメサユリ(1輪)・オオイワカガミ・サラサドウダン・ガクウラジロヨウラク・マイヅルソウ・オオバキスミレ・シラネアオイ・白いスミレ・ウゴツクバネウツギ・ムシカリ・タムシバ・ツバメオモト・ムラサキヤシオ・ハクサンチドリ。
 06:33樹林の中の千本峰標柱、06:36ピークを通過する。地蔵岳方向に市街地が見えるが、飯豊の主稜線は雲の中だ。kennroku氏は何処を歩いているのか気になるがメールが返ってこない。
 06:40岩場を下る。雲が次第に低くなって来る。下りきった所で残雪の上を少し歩く。二つ目の残雪でピッケルを抜き、三つ目でカッティング。次の残雪の最後でチョンボをしたらこけた。半袖なので腕が痛い。
 1,499m峰を西から巻いて、06:55鞍部を通過する。05:59-07:06、1,486m地点で休憩し食事。携帯は3本立つ。ズダヤクシュが咲いている。
 07:08地下足袋のサイドを使ってキックステップしストックを突き刺して、残雪を登る。次の残雪は脇から登って雪頂を進む。次の残雪は下を行こうかと思ったが安全策をとってやはり上を行く。ショウジョウバカマ・カタクリ・オオバキスミレ・シラネアオイ(盛)・ミツバオウレンが咲いている。
07:29AQLがODDを読んでいるが、尾根の反対側なのでよく聞き取れない。オオサクラソウが咲いている。残雪が次々と出てくるが、ずっと続いているのではなく、所々切れている。登山道が雪に埋もれておりルートが分かりにくい。灌木を攫んで藪を漕いだり、岩場をトラバースしたり、残雪にストックを刺して突破する。
 07:45宝珠山の肩は標識だけ出ており、道は出ていない。ここからは一面残雪の登りなのでピッケルを抜く。登りなのに寒いので上着を着る。
 誰か2人下ったグリのような跡がある。残雪を直上し左にトラバースして、07:53宝珠山のピークを左から巻く。いったん夏道に出るがすぐ雪になる。雪は硬くブレードでのカッティングも楽でない。ピックがちょうど良く刺さる。足の爪先が痛くなってきた。私は何度も通っているので見当がつくが、始めての方は雪で覆われていたり道が崩れていたり、何処がルートなのか探すのが大変だと思う
 オオサクラソウ・イワナシ・ミネザクラ・シラネアオイ・オオイワカガミ・ミツバオウレンが咲いている。この辺りは道刈りがされていないので、ことさら分かりにくい。
 08:03宝珠山岩稜に着くが視界はなく、風で寒い。イワカガミ・コメバツガザクラ(盛)が咲いている。08:07-12風を避け岩陰で休憩し食事を取る。
 08:33AQLと無線がつながる。AQLは湯沢峰、ODDはさらに1時間遅れで梶川尾根を登っているとのことである。08:35何時も休む岩場を通過する。鞍部からは雪の上を歩くが、夏道を見落とさないように神経を尖らす。
 08:46夏道に出てピッケルをザックに固定しストックを出す。ミヤマカタバミ・イワカガミ・コメバツガザクラ(盛)・ミヤマキンバイ・ウラシマツツジ(盛)・ミツバオウレン・ハクサンイチゲ・イワウメ(始)・ヒメイチゲ・ミネズオウ(盛)の花畑、撮影するために立ち止まる回数が多くなる。
 09:25-49飯豊山々頂に到着する。カッパを着こみ寒さに震えながら、ひとり缶ビールで侘しく乾杯。単独の登山者が登ってきた。
 ミヤマキンバイ・コメバツガザクラ・ウラシマツツジ・ミネザクラが咲いている。歩きだせば暖かくなると思ったが、軍手をしていても手が痺れてくる寒さである。下りながら観察すると、この付近は朝日連峰三方境に似た植生の崩壊が著しい。朝日連峰の整備で方法が確立すれば、ここでも実践してみたいものである。
 10:03駒形山の標柱は風の侵食により芯しか残っていない。山頂の手前にはミヤマキンバイの群落がありオヤマノエンドウを見かけた。
 標柱から左に折れて笹藪に入り、10:09笹藪を抜けた所からは雪上になる。玄山道分岐は全て雪に埋まっている。10:12雪の上部を歩いて行くと夏道に出て登り塩梅になり、10:15から再び雪上、10:17からは夏道となる。草月平ではショウジョウバカマが咲き、ニッコウキスゲ・コバイケイソウは芽生えたばかり。ケルンの辺りまで行くとハクサンイチゲ(始)が咲いていた。ミヤマキンバイ(始)は気温のせいだろうか道脇に沿って咲いている。
 10:25から雪上となる。途中に道形もある。10:34右側の藪(草地)伝いに進んできたが、突然に前方は平坦部のホワイトアウトになってしまった。先は見えないが若干登りになっているようなので御西岳手前と判断し、地図とコンパスと出して潜水艦航法を行う。程なく右側に草原が出てきたので、それを目安に進むと、10:39標柱を見つけた。これで場所が判明した。
 10:41夏道になると、周囲の草原にはショウジョウバカマ・バイカオウレンが多く咲いている。
 10:44-52ガスの中に御西小屋が現れた。中に入ると西川山岳会の山中氏が一人休憩していた。明日ダイグラ尾根を下るというので、徒渉点をレクチャーして小屋を出発。
 ここから先は雪の上を歩くのだが、昨年張ったネットがほんの一部露出していた。まだ植物の萌芽はなかったが、ネットはしっかりと地面に張り付いている。これからが楽しみである。
 11:02天狗岳を通過する。ようやく雪が軟らかくなり、地下足袋でもキックステップが効くようになってきた。11:06夏道に上がり頂稜を歩く。
 ミネザクラ・オオバキスミレ・ハクサンイチゲ・シラネアオイ・ハタザオ・コメバツガザクラ・ミツバオウレン・ノウゴウイチゴ・イワカガミ・ツバメオモト・タケシマランが咲いている。特に西斜面の急な砂礫地の数箇所に群がっていたハタザオが気になった。
 11:21天狗ノ庭の標柱から見ると、昨年の施工個所は一面雪が盛り上がっていた。ハタザオ・ショウジョウバカマ・ミヤマカタバミ・エチゴキジムシロが咲いている。11:25天狗ノ庭の巻き道が終わった所から、また雪上となる。
 11:41-50御手洗ノ池は雪に埋もれており、標柱の頭だけが露出していた。ここでKennroku氏から「現在1,400m」とのメールが届いた。電話を掛けてみたが繋がらない。やはり携帯電話利用はメールが主流になる。
 雪庇が細くなったと思ったら、岩が出てきた。亮平ノ池(雪に埋まっている)を過ぎた鞍部である。
 僅かに雪を踏んで夏道となるが、すぐ上で笹藪が雪に埋もれている。笹藪が終わると花畑である。ハクサンイチゲ・ハタザオ・ミヤマキンバイ・エチゴキジムシロ・ミネザクラが咲いている。ここでミヤマキンバイとエチゴキジムシロの違いを観察する。茎の形態は風衝により変化するので、分類のポイントはやはり歯の形にあるようだ。
 12:23県境を越えてまた雪上になる。12:31-40クサイグラ尾根(ここから細くなっている)食事を取りピッケルを出す。kennroku氏を迎えに行っても良いのだが、彼らが何処まで来ているのか情報がないままではその気になれない。彼らはビバークも想定に入れているのだ。
 雪の斜面を下って登り、最後は登山道を若干登って、12:48烏帽子岳山頂に到着する。無線はメインチャンネルに無変調が入り、誰とも交信できない。
 梅花皮岳の登りにかかり、13:01から雪が出てくる。13:05夏道に移る所は滑落注意である。13:07梅花皮岳山頂を通過する。下り始めると、AQLと何とか繋がりサブチャンで交信できた。彼は北股岳の登りとのこと、私の方が若干早く着きそうである。
 ミネザクラ・ハクサンイチゲ(盛)・オヤマノエンドウ、小屋が近付くにつれて花畑が賑やかになって行く。
 13:24梅花皮小屋に到着。さっそく管理棟を開けて水を汲みに行く。本棟を除くと数名が寝袋に入って休んでいた。前回、山人さんに届けてもらった日本酒を無事に回収する。
 ラーメンを煮ているとAQLが到着、二人で食事をしていると、石転ビ沢を登ってきたMDEが顔を出した。ぞくぞくと登山者が到着してくる。
 まだ時間が早いのと、雪が軟らかいうちに下りたいので、ODDやkennroku氏を待たずに、14:50梅花皮小屋を後にした。
 まずは登ってきた登山者のトレースを使い草付の台地まで下りる。ここで2名とスライド。続いて急な斜面を斜めに下るが、自分なりのルートを取った方が楽なのでストレートラインで、14:57中ノ島(草付キ)上端に到着する。夏道は浮き石が多い。視界が開け、下から数名の登山者が登って来る。石を動かさないように慎重に足を運ぶ。15:02中ノ島(草付キ)下端からはグリセードと足スキーで快適に下り、15:09北股岳出合を通過する。
 15:35石転ビノ出合。すぐ上の大石が僅かに露出し始めた。15:46梶川出合を通過する。滝沢梅花皮沢の間の尾根に乾雪表層雪崩が走ったようで、滝沢出合に倒木が散乱し、見上げると雪崩ラインが分かる。15:56地竹沢を通過する。上ツブテ石がまだ雪の埋もれている。下ツブテ石の上流に大きな穴が開いている。左岸寄りに下り、穴の前で右岸に移り、穴を過ぎてから再度左岸に移り、下ツブテ石に触れるように通過し、左岸を下り、雪渓がなくなった所で灌木を伝い、16:06登山道に出る。
 16:21砂防ダムからは車道になる。タニウツギ・ウワズミザクラが咲いている。16:29温身平十文字を通過し、16:49湯沢ゲートに到着した。着

今回のコース
ダイグラ尾根取り付きの吊橋、とても渡れない
渡渉地点
岩場から稜線が見えた
お池の平(種蒔の池)
クサイグラ尾根を眺める
長坂清水分岐
ここの降りは迷いやすい
ナナカマドが倒れていた
ブナの落枝が道を塞ぐ
休場ノ峰
休場ノ峰から宝珠山を仰ぐ
スミレ
千本峰に向かう
千本峰の標柱
スミレ
市街地が望めた
ガスが降りてきた
晴れていれば素晴しい展望なのだが・・・
道を残雪が塞ぐ
千本峰を振り返る
ズダヤクシュ
雪が断続的に続く
高度を上げていく
kennrokuさん達は何処にいるのだろうか?
藪と残雪を行く
ルートを確かめながら進む
時折、嫌らしい雪がある
宝珠山の肩
オオサクラソウ
オオイワカガミ
コメバツガザクラ
ミネザクラ
嫌らしい残雪
イワウメ
ミネズオウ
ウラシマツツジ
駒形山々頂手前のミヤマキンバイ
芯だけ残った駒形山の標柱
登山道の崩壊が進んでいる
草月平のケルンとハクサンイチゲ
ハクサンイチゲ
「御西」の標柱
ショウジョウバカマ
御西小屋
荷下げが準備されていた
昨年施工の緑化ネット
砂礫地の花
ノウゴウイチゴ
ハタザオの仲間
御手洗ノ池(標柱が出ている)
ハクサンイチゲ
エチゴキジムシロ
ミヤマキンバイ
ミネザクラ
烏帽子岳山頂
凍結で割れた標柱
梅花皮小屋のお花畑
気温は氷点下
草付キノ台地
中ノ島(草付キ)途中から見上げる
中ノ島(草付キ)から見下ろす
北股沢出合にて
北股岳に突き上げる雪渓
石転ビ沢左岸壁
ホン石転ビ沢出合で振り返る
石転ビノ出合を見下ろす
石転ビノ出合の大石が姿を現した
門内沢
石転ビ沢全景
石転ビノ出合から下る
門内沢
赤滝下流の大岩が出てきた
雪崩跡
梶川
地竹原
滝沢出合(右上より雪崩が来たようだ)
これも雪崩跡
地竹原で振り返る
地竹原から下流を見る
下ツブテ石と穴
雪崩に運ばれた倒木
雪渓の末端
ウワズミザクラ
砂防ダムにて
温身平の工事標識
曲り沢の砂防工事