登山者情報1175号

【2008年07月21日/大境山/井上邦彦調査】

 1日で飯豊連峰交差縦走を目指しためおとやま+konchan、○○っち+イチゴチャン。20日夜、全員無事に天狗平ロッジに集結した。乾杯後はバタンキューかと思いきや、これがなかな・・・。たまたま居合わせた石井さん(一般登山者です)とロッジ管理人の武田顧問はあきれ果てて、途中でお休みになりました。
 翌21日、konnchanは仕事(バイト)があると帰宅、私を含む5名はソーメンと焼き肉で朝食を取り、アルコールが完全に抜けるのを待ち、おもむろに大境山に向かいました。・・・ただし○○っちは自宅が遠いので、大境山はパス。
 中田山崎の酒店向いに車を置き、4人で歩きだしたのは09:00近くになっていたと思います。私がブッシュを持ち、めおとやまは鉈鎌、イチゴチャンは鉈と鋸に身を固め歩き出しました。山道が登りに差し掛かると、右の対岸は枯れたナラに痛々しく覆われています。私達が歩く尾根上も頭上はナラ枯れに覆われていました。
 ブナの林になり、急な尾根道になり噴き出す汗を拭いながら、右手の小沢で僅かな水を得ていると、マリッチがバテバテの様子。一休みして再び歩き出しました。しばらく登って左の小沢を横切ると再び急坂が続きます。この辺で、数箇所ブッシュの試し切り。
 突き上げて行くと、おかしいと気づき戻って左に折れる。小さな広場から右に入る(ここが一番迷いやすい)。山道は一段と急になる。尾根上に出ると藪が道を覆っていたのでブッシュを本格的に稼働させる。後処理は後続の3人がやるだろうからと、刈りっぱなしだ。
 次第に灌木が密生してくる。草などは全くなく、単なる藪刈りである。今回のブッシュは灌木に備えて、最軽量ではなく馬力も加味した機種を選んでもらった。アクセルを手前に倒すと、凄まじい爆音で耳がおかしくなりそうだ。あらかじめ持参したメガネを装着し、左右上下にブッシュを振ると、木片が顔や腕に飛んでくる。
 笹藪になると、県境である。ここから暫くはブナ林となり、道もしっかりして刈り払いの必要もなくなる。何気なく目の前の登山道を見て、首をかしげた。全く人が歩いた形跡がないにもかかわらず、畳半分ほどの登山道の泥濘で何者かが転がって遊んだような跡があるのだ。さらにその先には蹄とも見える足跡があった。一体これは何だろう?実は今年7月5日にも牛ヶ岩山の湿原で、やはり何者かが転がったような跡をみているのだ。その時はさほど気にも留めなかった。しかし今回、頭を横切ったのは川西町玉庭まで進出してきていると聞いている「イノシシ」であった。もしこれがイノシシのヌタ場だとすれば、大ニュースであり、地元農作物の被害は深刻になる。さらにこんな藪の中で銃を撃つなど出来る訳がないし、習性が分らない獣には対応のしようがない・・・
 この山道をまっすぐ行くと新潟県の沢に降りて行ってしまう、途中で左折するのだが、ここも迷いやすい所である。あちこちに赤布が枝に取り付けられている。左折して笹藪を進んで下り始めると、以前からある倒木が道の変わりになっている。すぐ先、掘れた沢状地形を跨ぐと、小沢に着く。ぬるくなっているが貴重な水である。水筒に水を入れ、林の中を登る。県境に戻ると、予想通りではあるが凄まじい灌木の藪が待っていた。ここまで休んでいたブッシュはフル回転になる。まるで新道を開くかのような刈り払いである。
 登りに差し掛かった時、息を切らしてイチゴチャンが追い付いてきた。マリッチが暑さのため途中でダウン、kenrokuも水場の手前まで来ているが限界の様子との事である。ここで3人には下山してもらうことにして、私ひとり山頂を目指すこととした。
 適当に手を抜きながら急傾斜を登り切るが、大境山の嫌らしさはここからが本番である。騙しの数が半端ではないのだ。さらに足下の登山道はしっかりしているものの、両側から覆いかぶさった灌木と笹のため、道は全く見えない。時折、赤布がルートを示しているだけである。
 フル回転しているブッシュはすぐにガス欠になる。頻繁に背負ってきた缶から混合油を補充する。半袖のシャツだけではなく、長ズボンもパンツも汗でびっしょりと濡れ、首にかけているだけのタオルは何度でも絞れる。
 2度ほどバランスを崩して転ぶ。頭がボ〜としてきたようだ。混合油を補充すると同時に水を飲むが、すぐに汗となって噴き出す。私も限界に近くなっていることが自覚できた。あの峰を越せば終わりだろうと何度も思うが、それでも果てしなく騙しが続く。怪我だけはしたくないので、擦り足にして足場を確保する。腕が上がらなくなってきたので、手持ちを避け肩紐にブッシュはの重量を乗せ、両手で左右に振るだけにして体力を温存した。
 ようやく池が出てきた。池の脇の湿地を通過する。藪はまだおさまらない。どうしても上下に振る場所もある。念願の草地となる。キンコウカが花をつけていた。ここまで来れば安心である。
 ようやく大境山々頂に着いたのは15:30頃だろうか。そう言えば、朝から何も食べずに登ってきてしまった。三角点からの眺望を遮るものはない。杁差岳を始めとする飯豊の主稜線は雲に覆われていたものの、充実感に浸ることができた。山頂からはFOMAの送受信が可能である。自宅にメールをし、blogに書き込みをする。
 帰路は、ブッシュに入っている油が完全になくなるまで刈り払い、以後はひたすら下山した。しかし、ずぶ濡れのズボンで長時間作業をしたため股ずれをおこしたらしく、痛くて歩くに歩けない。開き直って休みながらのんびりと下山する。
 腰を下ろして何気なくブナの樹を見上げると、クマの爪痕が・・・。バキッと枝が折れる音がした。何物かの気配がする。重い腰を上げて再び下り始めると、50m程向こうでガサリと音がした。一瞬ぎくりとしたが熊が音たてるわけはない。その時、2頭の獣が斜面を走り登っていく姿を視認した。薄茶色、大きさはカモシカ位だが、それにしては異常に足が短く、地面を這うような感じだ。「キュッ!」と鳴き声がした。
 さらに若干下ると、道脇に1匹のサルが私を見つめていた。先ほどの動物はいったい何なのだろう。もちろん熊ではない、カモシカ?サル?それともイノシシ?頭が混乱してきた。野生のイノシシを見たことがないので何とも言えない。
 痛む足を庇いながら、車に着いたのは17:30を過ぎていた。

20日夜、M縦走に満足感いっぱいの自称変態5人衆
杉の根元が膨らんでますが・・・
傾斜地に生えている針葉樹は下が膨らんでいます
登り終えて笹原を進むとヌタ場?があった
写真では判然としないが、蹄のような足跡・・・これは何だ???
ようやく山頂に到達
大境山々頂から見た飯豊連峰主稜は雲の中 手前は枯松山
帰路、ブナの根元でうたた寝をして見上げると
熊さんマークがありました