登山者情報1180号

【2008年08月06-07日/石転ビ沢〜玄山道分岐/井上邦彦調査】

 今回は、昨年施工した箇所である弥陀ヶ原(御西小屋)のモニターと、来年施工を予定している玄山道分岐の設計・測量作業である。自宅に届いた計画書では、6日12:00に御西小屋集合、その後は玄山道分岐に移動し、16:00解散とあった。そろそろ有給休暇の残日数が気になるので、当日朝に石転ビ沢を登って、作業が終わり次第梅花皮小屋に戻り、7日早朝下山し出勤することとした。
 またメールや掲示板などで7日〜9日に入山する方で、梅花皮小屋・御西小屋間の残雪状況や石転ビ沢の状態の照会が複数あったので、携帯電話からblogへの実況中継を試してみることとした。
 04:47半袖半ズボン姿で天狗平を出発する。すぐにメジロアブがまとわりついてきた。04:52曲リ沢は独特の形をした砂防ダムの工事中である。05:01メジロアブと戯れながら温身平十文字を通過する。
 05:10砂防ダム通過、山道に入るとメジロがいなくなるが、替わってブヨがまとわりつく。05:30うまい水通過。
 05:40地竹沢手前から雪渓に入るが、雪渓の右岸寄りは崩壊し、地竹沢も薄くなっているので注意が必要だ。
 滝沢出合では左岸寄りに大きく円を描いて亀裂が入り、中央部は陥没している。間もなく崩壊するだろう。すぐその上で左岸に横切って、問題の巻き道に入る。05:57高巻きをして梶川を飛び石伝いに渡る。この辺りの雪渓はズタズタだ。06:06前回と同じく、雪渓がなくなる赤滝手前から夏道に入る。
 06:18石転ビノ出合着。まっすぐに水場に進み06:23-32水場で食事をする。大岩の左から踏み跡に入ると、オオサクラソウ(盛)・ノウゴウイチゴ・キクザキイチリンソウが迎えてくれた。
 06:35から雪渓となり、06:36から踏み跡をたどり、すぐまた雪渓に入る。上着を着ても寒く、手が冷え切って手袋が欲しい程だ。06:46右岸の枝沢は雪渓に水道ができてきた。
 07:08-14ホン石転ビ沢出合到着、食事を取る。携帯電話の受信レベルは3本立つが「接続中」が続き繋がらない。
 07:16ここまで新しい土石流が流れている。3日にはなかったからこの2〜3日の間に出来たものである。
 07:40-48北股沢出合清水でやっとメールの送信できた。blog第1号を送る。食事をしてピッケルを出す。
 黒滝は完全に開いている。まっすぐ詰めると雪渓が薄いので、やや下から左岸の踏み跡に入り、小沢を横切るようにして黒滝の上に出る。黒滝の上流にある雪渓は穴があり何時崩れるか分からない。雪渓の脇の踏み跡を歩き、08:00枝沢を渡って、すぐ尾根道に取りつく。そのまま沢を詰めないように注意すること。
 尾根を詰めて左の小沢を渡り、中ノ島(草付キ)の夏道に出る。下山の時はこの分岐を通り過ぎないように注意する必要がある。
 08:15水場でカメラの電池を入れ替える。オタカラコウ・ミヤマキンポウゲ・ハクサンボウフウ・ミミジカラマツ・ミヤマコウゾリナ・ヤマハハコ・シナノキンバイ・ヒトツバヨモギが咲く中、高度を上げて行く。
 08:34草付の台地を通過し、アラシグサ・ハクサンボウフウ・イワイチョウを見て、
08:40-09:03梅花皮小屋に到着した。ここまでの間、何度もblogに送信したが、文字の書き込みが遅いため時間を要した。冷えた缶ビールで喉をうるおし、OTJと情報交換をして出発したが、うっかりして水筒に水を入れることを失念してしまった。石転ビ沢では水場以外では休まないのでそもそも水筒は空である。
 梅花皮岳を登って行くと、タカネマツムシソウ・ニッコウキスゲ・シラネニンジン・コゴメグサ・タカネナデシコ・ウヒナウスユキソウ・イイデリンドウ・ヒメシャジン・エゾイブキトラノオ・ミヤマアキノキリンソウ・ハクサンフウロ・ヨツバシオガマ・タカネツリガネニンジン・イワオウギ・ミヤマホツツジ・ミヤマコウゾリナ・ヤマハハコ・マルバダケブキ・ヤマトウバナ・キオン・オンタデが咲き、ベニヒカゲ(高山蝶)が飛び交っている。
 09:22梅花皮岳山頂を通過する。コバイケイソウ・ハクサンボウフウ・ミヤマキンポウゲ・ヤマハハコ・ハクサンフウロ・ニッコウキスゲ・ミヤマキンポウゲ・シロニガナ・カラマツソウ・コバイケイソウ・イワイチョウ・ヨツバシオガマ・ハクサンコザクラ・ウツボグサが咲いている。特に与四太郎ノ池付近は、右を見ても左を見てもイイデリンドウだらけである。
 09:4044烏帽子岳山頂を通過する。何時ものお花畑は、ミヤマキンバイ・ミヤマキンポウゲ・ダイモンジソウ・ハクサンボウフウ・コバイケイソウ・ニッコウキスゲ・オタカラコウ・ミヤマリンドウが咲いているがやや物足りない。
 09:50クサイグラ尾根分岐を通過し、稜線を右に越えると、トモエシオガマ・ヨツバシオガマ・ハクサンシャジン・オンタデ・キオン・シラネニンジン・タカネマツムシソウ・タカネナデシコ・エゾイブキトラノオ・イブキジャコウソウ・ニッコウキスゲ・・・一面のお花畑だ。
 11:05亮平ノ池を通過する。御手洗ノ池手前の窪地には、下へ下る踏み跡と昔の幕営跡があるので迷わないこと。
 10:25御手洗ノ池を通過する。そのすぐ先に雪があり下部まで続いている。端を歩けば問題ないが、雪渓と登山道の移動で滑れば重大事故となるだろう。その先の雪は大丈夫だろう。10:40また雪が出てきた、ここも上を丁寧に歩けば大丈夫と思われる。結局、危ないのは1箇所だけであった。事故現場と思われる所には黄ガムテープと竹にデフがあったが、雪は全て消えていた。
 登山道から外れて旧道跡をへつり、10:50天狗ノ庭に到着する。すぐ脇で若干の融雪水がとれた。昨年の施工箇所をモニタリングする。ここも予想以上の好成績だ。
 藪を漕いで登山道に戻り、11:25天狗岳通過する。11:32最後の登りで雪を若干踏むが、全く問題はなく、11:39御西小屋に到着した。Blogの中継で時間をかけてしまったが、何とか集合時刻にはまにあった。
 小屋の中では佐藤さん川端さんVCK等が食事中であった。一緒に食事を取り、その後、昨年の施工箇所をモニタリングする。
 浸食地の石組みはしっかりとしていた。上部の石組みには土砂が堆積していたが、下部には堆積していない。これは最上部で水を外に逃がしたのが理由だろう。ある程度水を流すことによって石組みの効果を最大限に発揮できるように工夫する必要を感じた。
 緑化ネットの効果は確実に認められた。ネットの下から発芽が見られたが、ネットにより土砂の供給が止められた場所で植物が旺盛に繁殖しているのは驚きであった。
 登山道端でネットにチングルマがしっかりと進出しており興味をひいた。あとで聞くと昨年の施工時にカヨさんが、木本で地面を這うチングルマの幹を丁寧に解いてネットに被せたものが、そのまま根付いたもののようである。これは今後の作業で貴重な手法になりそうだ。
 次に玄山道分岐を目指す。ハクサンイチゲ・イワカガミ・コバイケイソウ・ニッコウキスゲ(盛りは過ぎた)の草原を過ぎて、目的地で測量業者の方々、喜多方の平野さんと合流する。
 玄山道分岐は登山道から数本の踏み跡が降り1点に集中に、そこから1本となって実川に下っている。理想的には南側の草原地帯ではなく、稜線の笹原地帯に登山道を付け替えることであるが、現段階では既存のルートを活かすこととし、弘法清水の利用も念頭に置いた。
 最初に駒形山方面の笹薮の掘れた道から流れてくる水をどのように処理するかであるが、1箇所から実川側に排水路を作る。その下流は流線を辿って何箇所か石組によるダムを作り水の勢いを弱める。ラインは現状のままとすることにした。
 次に広くなった登山道であるが、傾斜の低い側に水路が形成されていることが道幅拡大の一因となっている。そこで傾斜の高い側に水路を導き、流路の工夫により流速の低下を図ることとした。この時、登山道と既存の地表との高度差に対応するため、傾斜がある所には緑化ネットを使用することにより安定させる。傾斜が90度を超えるような所には石をあてがって斜度を落として流速を下げることとした。
 基本的な設計ができたので、弘法清水に行き、雪を割って清水を露出させ喉を潤した。後は測量業者に任せ、私は御西小屋に向かった。
 一服後、16:58御西小屋を出発、17:09天狗岳を通過、17:21天狗ノ庭を通過した。17:31遭難現場通過、携帯電話で測位(北緯37°51′30.763″東経139°40′3.783″)。17:41危険個所通過、残雪と登山道を移動する部分が良くない、測位(北緯37°51′39.161″東経139°39′44.648″)。
 ※ 後日、国土地理院の地図閲覧サービスで上記のデータを入力したところ、たちまち地図上に誤差のない正確な場所が復元された。
 17:43御手洗ノ池通過、17:57亮平ノ池通過、18:14クサイグラ尾根分岐通過、18:21烏帽子岳山頂、18:39梅花皮岳山頂通過する直前に陽が北股岳に沈んだ。18:53梅花皮小屋でぎんぎんに冷えたビールを手にUWSが迎えてくれた。
 03:14ヘッドランプを頼りに梅花皮小屋を出発する。03:22中ノ島(草付キ)上部に取り付き、03:30左の尾根に移る。03:40北股沢出合通過。03:57ホン石転ビ沢出合通過、今日も受信レベルは高いが送信できない。04:03空が赤くなってきたが、ライト消すと足場が良く見えない。04:14ライトを消す。
 04:27-30石転ビノ出合通過、ウィダインと水を飲む。04:47梶川出合を通過し、04:54雪渓に出て、05:06夏道に入る。05:13うまい水を通過する。
 05:35-42砂防ダムを降りると、AXLがいた。今日は読売新聞の記者をガイドして梅花皮小屋まで登るとのことである。その後は覚悟していたメジロも少なく、06:06天狗平に到着した。

婆マクレ手前から見る
地竹沢手前から雪渓に上がる
滝沢出合
左岸側が崩壊しつつある
梶川出合手前で右岸の巻き道に上がる
梶川出合全体の様子
崩壊の状況
梶川出合の様子
(7日早朝)崩壊が進んでいる
梶川徒渉点から下流を見る
雪渓から下流を見る
左が梶川
梶川出合すぐ上流の水場の岩が露出した
赤滝手前から夏道に入った
石転ビノ出合全景
石転ビ沢
正面の大岩の左から夏道に入る
門内沢
途中、左岸からの小沢が入る
先日発生した土石流
北股沢出合
北股沢出合の水場
黒滝の上流の雪渓は通行できないので左岸の踏み跡を登る
大岩から小沢を横断して黄旗のある中ノ島(草付キ)に移る
中ノ島(草付キ)途中の水場
オタカラコウ
中ノ島(草付キ)を見下ろす
梅花皮小屋が見えた
扇ノ地紙方面
イタドリ
梅花皮岳山頂より
門内小屋遠望
烏帽子岳
与四太郎ノ池
烏帽子岳山頂より
御西小屋方面
亮平ノ池〜御西岳
飯豊山
右下が亮平ノ池
真中が御手洗ノ池
中央の裸地が天狗ノ庭
ニッコウキスゲ
九才蔵尾根を振り返る
亮平ノ池
二つの登山道とも残雪に覆われている
下の登山道が良く使われているようだが、急な斜面がある
登山道下の裸地に迷い込まないでください
御手洗ノ池
この残雪で滑落すると厄介だ、よく見ると道が何本もある
7月29日の滑落事故現場には既に雪がない
天狗ノ庭、土嚢の効果が認められた
かつてはこんな地塘が散在していた
核心部の全体像
緑化ネットに芽生えた植物達
のり面に貼った緑化ネット
発芽しているのが分かる
よく見ると
ここにも
近づくと
登山道に戻り御西小屋を目指す
崩壊地の植物達
御西小屋に到着
おひさしぶりです、VCKさん
昼食後、モニタリングを開始する
さて、どうかな?
出ていた!
よく見ると
こんなに沢山
チングルマがネットに進出している所も数箇所あった
斜面を観察してみると、色が変わっている
近づくと
さらに近付くと
石で組んだダムも効果が確認できた
全体像です
ここは何を蒔いたんだっけ?
様々な植物が発芽している
次は玄山道分岐に向かいました
下の道が旧赤谷登拝路です
GPSによる測量
水をどうして抜くか?
登山道と水路の区分を検討します
穴を開け、弘法清水が使えるようにしました。
帰途、御西小屋を振り返る
烏帽子岳の登り
左から烏帽子岳・北股岳・梅花皮岳
大日岳
赤とんぼ
日没と同時に梅花皮小屋に到着