登山者情報1,371号

【2010年07月24-25日/ダイグラ尾根〜石転ビ沢/井上邦彦調査】

【概略】
 ダイグラ尾根の残雪は、宝珠山と岩稜の鞍部で踏むが、殆ど問題はない。下山時に御前坂で右手に曲がる場所で、正面のガレ場の多数の踏み跡があった。迷い込んだものと思われるので、十分注意が必要である。
 今年はニッコウキスゲの当たり年、草月平では素晴らしい花畑が見られた。
 御西小屋から梅花皮岳の間には残雪が登山道を覆っている箇所が多いが、特に残雪から夏道に移る箇所で危険な場所が2箇所あった。
 石転ビ沢は、中ノ島(草付キ)と梅花皮小屋の間は全て夏道が露出している。左岸寄りのコースから中ノ島に移る箇所の雪渓が大変に悪い状況にあるので、登りでは中ノ島最下部に取り付くことになる。黒滝の亀裂が開き始めた。これより上部で滑落した場合は、亀裂に落下する可能性があり危険な状態となっている。全体として落石の危険性は低くなってきているが皆無ではない。北股沢出合の水場は露出している。石転ビノ出合は、石転ビ沢と門内沢の合流点下流の雪渓は崩壊の危険性があり渡れない。門内沢の雪渓を渡ることになるが、穴が開き始めているので、奥を通ることになる。石転ビノ出合から下流は全て夏道である。
 メジロアブは24日早朝で数匹が手に触れた程度。

【報告】

 天狗平に到着すると、湯沢ゲート前の登山届出所で、小国警察署員・小国町役場職員・高橋会長が登山指導を行っていた。情報を交換し、04:40歩き始める。
 林道を歩いていると、時折、手に虫がぶつかる。メジロアブが出始めたのだろうが、気になるほどではない。04:57温身平十文字を通過し、途中から右手の登山道に入る。
 05:18桧山沢吊橋を渡ると急登になる。登山者を追い越し、05:32-37岩場で休憩する。稜線には雲がかかっているが、その下ははっきりと見える。
 06:18種蒔ノ池を通過し、06:29-44長坂清水で食事を取り、梅花皮小屋のOTJと無線を交わす。若干の風があり、助かる。
 07:29休場ノ峰を通過し、07:31-38すぐ先の岩脇で食事とする。コキンレイカ・オオコメツツジ・コシジシモツケソウ・ツルアリドウシ・オトギリソウ・タカネアオヤギソウ・カラマツソウ・ミヤマコウゾリナを見ながら先に進む。
 08:16千本峰の標柱を過ぎると、ミヤマママコナ・ハクサンシャジンも出てくる。岩場を下っている時、下の方で声が聞こえると思ったら、08:26-38二人の登山者が休んでおり、一人の登山靴は靴底が完全に剥がれており、修理している最中だった。針金を出して補強をする。
 シロニガナ・ヤマトウバナ・トリアシショウマ・タテヤマウツボグサが咲いている中、峰を巻いて宝珠山の登りに取りかかる。
 雪窪地形には、オオサクラソウ・ミヤマキンポウゲ・モミジカラマツ・マイヅルソウ・アカモノ・ハクサンイチゲ・ハクサンコザクラ・ヨツバシオガマ・ハクサンボウフウ・ガクウラジロヨウラクが咲いている。
 09:29-41道下にあった雪の欠片を水筒に入れ、食事とする。ミヤマコウゾリナ・ニッコウキスゲ・コバイケイソウが咲いている。
 09:50-57宝珠山ノ肩で道下に降り残雪を取って水筒を満たす。10:07宝珠山を過ぎた鞍部で僅かに雪の上を歩く。
 10:20-25宝珠山の岩場で休憩とする。傍らにはヒメシャジン・タカネナデシコ・ミヤマホツツジが咲いていた。
 鞍部から御前坂の登りとなるが、11:06斜めに登って直登に変わる場所で、道下のガレ場に道ができているではないか。昨年、道迷い事案が発生したと想定されている場所である。飯豊山から下ってきて右折するわけだが、右手の道は潅木に覆われ見落としやすいのに対し、正面下のガレ場には相当数の人間が歩いた跡があるのだ。下山者は十分に留意して欲しい。
 11:15-24御前坂の途中で食事を取る。コゴメグサ・ハクサンシャクナゲ・シラネニンジン・タカネサギソウ・ヒナウスユキソウが咲いている。
 11:55-12:06飯豊山々頂で腰を下ろしていると、数人の登山者が御西方面から登ってきた。このまま御西小屋に向かうつもりであったが、大日杉から登ってくるECB達はまだ姥権現とのこと。ダイグラ尾根の留意点を伝えたいと思い、本山小屋に向かうこととした。途中にはイイデリンドウ・マルバシモツケ・ニッコウキスゲ・ヒメサユリが咲いていた。
 本山小屋で管理人の高橋さん達と話しこんでいると、ECB達が登ってきた。また先日、天狗平ロッジで一緒になった4人パーティとバッタリ。ECBの後を追いかけて、12:39飯豊山々頂を通過する。
 14:00玄山道分岐で施行箇所を観察する。なお弘法清水は埋まっていた。ここからはお花畑の中を歩く。ハクサンフウロ・クチバシシオガマ・ミヤマリンドウ・イワイチョウ・チングルマ・ヨツバシオガマ・エゾイブキトラノオ・タカネアオヤギソウ・ミヤマコウゾリナ・イイデリンドウ・ニッコウキスゲ・コバイケイソウ・チングルマ・イワカガミ・アオノツガザクラが咲いている。特に草月平のニッコウキスゲは絶景!ECBも竹爺も、しばし撮影タイムとなる。
14:54ガスに包まれた御西小屋でIWUの歓迎を受ける。ここの施行箇所を観察するが、緑化ネットから旺盛な植物の生育が確認された。
 翌日は、ガスで視界はないものの、雨は降っていない。ツアーの団体さんを見送ってからのんびりと出発することとした。06:25御西小屋発、ECBは大日杉に戻り、私と竹爺は梅花皮小屋に向かうこととした。
天狗岳の登りでは若干、残雪を踏む。道脇にはハクサンボウフウ・ヨツバシオガマ・コバイケイソウ・イワカガミ・ハクサンコザクラ・チングルマ・ハクサンイチゲ・ニッコウキスゲ・モミジカラマツ・アオノツガザクラ・ミヤマキンポウゲ・ガクウラジロヨウラク・コバイケイソウ・クチバシシオガマ・ハハコグサ・イワオウギ・ヤマトウバナ・トリアシショウマ・キオン・ハクサンフウロ・ヒナウスユキソウ・ミヤマアキノキリンソウ・マルバシモツケ等が咲いている。
 06:57登山道を離れ、天狗ノ庭を観察する。想像以上に植生の回復が進んでいた。07:07旧道沿いに登山道に戻る。
 この先は予想通りに残雪が点在し、2箇所ほど残雪と夏道を移動する部分に危ない所があった。
 07:33御手洗ノ池にはシラネアオイが咲き始めていた。さらに残雪を踏んで、07:51亮平ノ池でツアー一行を追い越す。ここの鞍部にもわずかだが残雪があった。
 烏帽子岳への登りでは、ニッコウキスゲ・クルマユリ・エゾイブキトラノオ・タカネヨモギ・タカネツリガネニンジン・ヨツバシオガマ・イワオウギ・マルバダケブキ・ミヤマホツツジ・ヒナウスユキソウ・マルバシモツケ・ミヤマアキノキリンソウ・ヤマトウバナが咲き誇り、山形県側に移るとショウジョウバカマ・ハクサンコザクラ・チングルマが咲いていた。
 残雪の上を歩いて、08:15クサイグラ分岐をする。ニッコウキスゲ・エゾイブキトラノオ・クルマユリ・ミヤマキンポウゲ・ハクサンボウフウ・ウサギキク・ヤマハハコ・オタカラコウ・ハクサンフウロのお花畑を見て、08:24烏帽子岳山頂を通過する。
 山頂直下で雪を踏み、08:45梅花皮岳山頂から降る。この先はタカネナデシコ・ニッコウキスゲ・イワテトウキ・ヨツバシオガマ・キバナコマノツメ・エゾイブキトラノオ・イイデリンドウ・ハクサンフウロ・ヒナウスユキソウ・ハハコグサ・ミヤマホツツジ・イイデリンドウ・イワオウギ・ミヤマコウゾリナ・タカネアオヤギソウ等々の素晴らしいお花畑なのだが、残念ながら視界がない。
 09:00-56梅花皮小屋管理棟でOTJと情報交換しながら持参したラーメンをすする。私はトレランからスパイク地価足袋に履き替えて、下山を開始した。
 すぐに登ってきた小林さんと会い、立ったまましばし歓談する。特に地名の表現について意見を交換した。
 中ノ島(草付き)まで、全ての夏道が露出していたが、小沢の横断部分は上からの落石も考えられるので素早く通過したい。ここまで降ると、予想通りにガスが切れてきた。
 中ノ島の中程に左手(上から見て)から合流してくる夏道は、小沢の横断部分の雪渓に穴が開き非常に危険な状態である。
 私達は末端まで下ったが、大変に石を落としやすい状態であり、下に登山者がいたので気を使った。
 末端で竹爺はアイゼンを装着し、二人でまっすぐに黒滝左岸に向けて降った。雪渓は結構硬くなっている。
 黒滝左岸に持って来た黄旗を立て、付近の状況を探った所、亀裂が口を開け始めていた。黒滝と中ノ島の間で滑落し、この亀裂に落ち込んだら救出することは不可能に近いだろう。
 露出していた北股沢出合の水場にも黄旗を立て、そのまま降る。途中で左岸の小沢からでた大量の土砂が印象的である。
 石転ビ沢は途中から雪渓がなくなるので、右岸の夏道を降る。雪渓の状態を確認するためにそのまま梅花皮沢まで行ったが、雪渓の状態が悪いと判断し、登り返して石転ビ沢を飛び石伝いに渡り、門内沢の雪渓に上がる。この雪渓も下流部に穴が開いていたので、大回りをして左岸に出た。
 石転ビノ出合(梅花皮沢)左岸から見ていると、集団の方々が梅花皮沢の雪渓を渡って来るので、ひやひやしながら見守り、夏道を降る。
 11:12-12:01梶川出合は、合流点直下の左岸が一段とえぐられたので、高巻きが必須となった。暑さにほてった身体を沢水で冷やす。
 12:30-51うまい水で最後の食事を取り、13:13砂防ダムを通過する。温身平でOTJと交信した所、ダイチャンとハイジが天狗平で待っているとのこと、まもなく天狗平ロッジにいるZZU(武田)からもロッジに回るよう連絡があった。
 13:45頃、天狗平に到着、ロッジでダイチャン・ハイジと再開し、今回の山行を終えた。

登山届出所では高橋会長達が登山指導を行っていた
檜山沢吊橋
ダイグラ尾根下部にある信仰登山の痕跡
岩場からクサイグラ尾根を望む
お池の平(種蒔ノ池)
長坂清水
休場ノ峰にて
ひとつひとつ峰を越えて行く
マルバキンレイカ
千本峰の岩場にて コキンレイカ(ハクサンオミナエシ)
千本峰を振り返る
宝珠山の肩
残雪のある部分が宝珠山の肩
宝珠山の岩稜手前鞍部で残雪を踏む
宝珠山の岩稜から飯豊山を仰ぐ
ヒメシャジン
岩稜を振り返る
モグラが死んでいた
宝珠山を振り返る
降ってきた時、ここから右に折れるが、正面のガレ場に
沢山の足跡があった 迷い込んだ登山者のものだ!
タカネサギソウ
飯豊山々頂に到着
飯豊山々頂
本山小屋に挨拶に出掛けた
飯豊山と一ノ王子を振り返る
ECBと竹爺に合流
イイデリンドウ
駒形山にて
コバイケイソウ
玄山道分岐の施工箇所
弘法清水はまだ雪に埋もれていました
振り返る
草履塚と種蒔山
ミヤマリンドウ

続く⇒