メジロアブの季節がやってきた。この小さなアブの集団に取り囲まれると、発狂状況となる。手の届かない背中とザックの間にまで潜り込んで噛み付く。メジロアブは沢沿いの林道と二酸化炭素が大好きである。つまり、車のエンジンを掛けておけば幾らでも集まる。また、林道を歩くことは彼等が纏わり着くのに格好の速度を提供することになる。さらに早朝や夕方に活動の最盛期を迎える。
彼等に襲われた時はどうしたら良いか。これまで様々な方法を試してみたが、尋常な方法では無理なようだ。体中にメンソレータムを塗りたくるという話を聞いたことがあるが、通常の登山ではできる仕業ではない。私が試した方法で最も効果的であったのは、駆け足である。思いっきりダッシュすると、殆どのメジロアブを振り切ることができた。息が切れたら、動かないことである。動くと彼等が集まって来るからだ。これを幾度となく繰り返す訳だが、非常に疲れる。登る前にやったら、体力の消耗で登る余力がなくなる。従ってこの方法は、下山後の林道歩きでしかできない。さらにこの方法は、完璧ではなく、数十匹のメジロアブを十匹程度までに減らすことができるというだけである。
前置きが長くなったが、もっと有効な方法がひとつある。それは自転車である。自転車の速度で彼等の攻撃を避ける。これは効果がある。
ゲートのある奥胎内ヒュッテから出ている乗合タクシーの始発は05:50である。それより1時間前に駐車場に到着したが、既に何人かの登山者が準備をしていた。
05:00、私は一人、奥胎内ヒュッテの玄関にある登山届出箱にあらかじめ記載しておいたカードを投函して、自転車に跨った。すぐに登山者一名を追い抜くが、登りに汗が滴る。それでも変速を効かして進むが、最後の最後で力尽き、50m程自転車を押す。それにしても、ここの車道は沢と高度差があるからか、メジロアブは比較的少ない感じがする。
05:20-28登山口(450m)でメジロアブに備えて着ていたシャツを脱ぎ、ズボンのチャックを外して半ズボンにする。
05:57ロープが邪魔になるような簡単な岩場を通過し、06:03-13姫子ノ峰に到着する。到着と同時に朝日が主稜線から昇って光を投げつけてきた。1回目の食事を取る。最近は車の中で水分を普及し、1時間程度の運動をしてからお握りを1個食べるようにしている。
06:29、急坂を降り、さらに木の根を掴む急坂を降りきった鞍部にある岩場を通過する。この岩場は技術的には問題ないが、多少、高度感がある。岩場にマルバキンレイカが咲いていた。ホツツジの咲く尾根を登るが、これから暫くの間が、この尾根の中で最も急な所だ。
06:39滝見場のすぐ先が、06:40英三ノ峰(940m)である。06:59ヒドノ峰(1080m)で直射日光の襲撃を浴び、07:04水場分岐を通過する。標柱から左に折れると水場へ降る道となるが、うんざりする程に降る。幸い「たびたび」著者が水場まで行ってくれており状況が分かるので、私は省略することにした。
07:10-24ブナ林の坂の風通しが良さそうな所で2回目の食事とする。すぐ上に幕営もできそうな広場がある。さらに登って森林限界を抜けると、ヨツバヒヨドリが咲いていた。
07:37イチジ峰(1265m)を通過、目の前に大石山が立ちはだかる。急坂を登り切り傾斜が緩くなり、笹が低くなると、08:05西ノ峰(1525m)に到着する。ここからは頼母木小屋・杁差小屋・門内小屋が丸見えである。
朝露で半ズボンを濡らすものの、一投足で08:09大石山(分岐)に着いた。ここからは稜線歩きとなる。大石山から僅かに下り始めると、周囲はタカネマツムシソウ・シラネニンジン・ミヤマアキノキリンソウ・タカネツリガネニンジン(盛)・キオン・ギボウシ・オトギリソウ・タカネナデシコ・コゴメグサ・ノリウツギが咲くお花畑となった。
08:22最低鞍部を通過し、ヤマハハコを脇に見てジグザグな登山道で高度を稼ぐ。08:45-58鉾立峰で3回目の食事とする。携帯電話の電源を入れると、不在着信のメールが届いた。返信すると相手からの呼び出し音が鳴ったが、通話が全くできない。メールは可能だが通話ができないのは、電波が不安定であるからだ。
ヒメシャジンの咲く稜線を降る。高山蝶が多数舞うが、止まる時は草の中に潜り込むので写せない。09:03鞍部を通過する。鉾立峰の登りより随分と楽だ。エゾイブキトラノオ・ニッコウキスゲ・マルバダケブキ(終)・ハクサントリカブト・アザミ・クルマユリ(終)ミヤマコウゾリナが咲く中、小屋を通り過ぎて、09:23-10:03杁差岳山頂に到着する。
早速缶ビールを飲もうとしたが、まだ凍っている。こんなこともあろうかと、凍らせていない缶ビールも一緒に入れておいたのが、きんきんに冷えている。
喉を潤しながら無線を開くと、御西から本山向け移動のWKBと、頼母木小屋から丸森尾根を移動中のWZLが応答してくれた。また、山頂からの携帯電話は同じ場所でも受信レベルが変化し、ついには圏外となった。小屋の水場は、残雪が僅かになっていたので、これからは下まで下る必要があるかも知れない。
遅くなりたくないので、頼母木小屋は省略して下山することにした。10:33鉾立峰を通過する。カメラを構えながら、花畑を満喫する。
11:07-30大石山(分岐)で5回目の食事をし、11:33西ノ峰、11:49イチジ峰、11:57休んだ所、12:02水場分岐、12:06ヒドノ峰、12:21英三ノ峰、12:22滝見場、12:31岩場を通過し、12:46-59姫子ノ峰。団扇で扇ぎながら、結局はここまで1ピッチで降ってしまった。
13:05岩場を過ぎ、どんどん高度を下げ、13:27-32登山口に到着する。ここで自転車に乗り、途中の水場で顔を洗っていると、乗合タクシーが止まった。暫し運転手さんと情報交換をし、13:47駐車場に到着して、今回の山行を終えた。
杁差小屋周辺ではアザミが盛りであった。アザミも種類が分かりにくい。下山後に「やまがた・山の花」を開いてみた。ナンブタカネアザミ・ウゴアザミ・ミネアザミなどが掲載されていたが、ウゴアザミに「頭花が上向きに咲く」とあり、他は「ややうつむいて・横向きに」と書かれてあったので、ウゴアザミが有力かも知れない。
また、ギボウシも多数みられたが、飯豊連峰の主稜線ではこの周辺だけで見かける。先日朝日連峰でも見かけたが、その時はイワギボウシと教わった気がする。私達がウルイと呼んで食用にしているのはオオバギボウシであり、トウギボウシと呼称されている図鑑もある。私のレベルでは断定しない方が良いかも知れない。
大石山から杁差岳に向かうと、お花畑が広がった |
タカネツリガネニンジン(ハクサンシャジン) |
いったん降って、鉾立峰に登り返す |
鉾立峰から眺める杁差岳 |
杁差小屋の右下に伸びる水場への道、残雪は僅かしかない |
藤島玄氏のレリーフ |
小屋の後ろが杁差岳山頂である |
小屋手前のお花畑 |
日本海も見えた |
山頂から見下ろす杁差小屋 |
二王子岳 |
アザミ |
タカネツリガネニンジン |
エゾイブキトラノオ |
下山の途中で登山者とすれ違った |
ミヤマアキノキリンソウ |
タカネツリガネニンジンとタカネナデシコ |
山頂を振り返る |
鉾立峰 |
頼母木山も顔を覗かせた |
アゴク峰 |
季節は盛夏から晩夏へと |
地神山 |
お花畑に包まれる |
タカネナデシコ |
振り返る |
通ってきた道 |
ギボウシ |
ハクサンサイコ |
キオン |
コキンレイカ(ハクサンオミナエシ) |
大石山への登り |
振り返る |
シラネニンジン |
大石山(分岐) |
西ノ峰 |
水場の分岐 |
大石山を仰ぐ |
滝見場にて |
姫子ノ峰にて |
大石山 |
地神山を中心とした主稜線 |
頼母木川 |
登山口 |
乗合タクシーの時刻表 |