登山者情報 1,441号

【2011年06月11-12日/日本山岳協会指導委総会兼研修会/井上邦彦調査】 

2011年指導委員総会および研修会の報告

登山部長:井上邦彦

* 総括的感想
 今回の指導委員総会は、47都道府県中、欠席は6という例年にない出席率で開催されたが、内容が極めて濃く深刻であり、絶対的な時間が不足しているようにも思えたが、これは参加者の事前知識の多少による。私の場合は、数年ぶりの出席であったが、代理出席してもらった管埜君の復命や、清野県岳連会長からの情報があったので、なんとか話についていくことができた。
 また以前から指摘されていることであるが、日山協の事務は各役員の献身的な活動により維持されている。このため、多少のもたつきやトラブルは許容することが必要であると共に、我々が行うべき事務処理の適正化に努めるべきだとの認識を強くした。
 現在「社団法人」である日本山岳協会が「公益法人」に変わることで、相当の改革がなされるようであり、新しい日山協のあり方が検討されている。このことが、各都道府県岳連(山協)や末端である加盟団体に及ぼす影響は極めて大きいものがあると実感してきた。

* 今年、新しく日山協の会長となった神崎氏より挨拶。

* 指導委員会の新しい方向性(指導委員長永井豊)
 公益法人への移行により、これまで組織内という特定の対象者から、今後は不特定多数を対象とすることになる。
 指導員はACとSC、さらには上級等があるが、日体協は全て公認指導員として一元的に管理している。このため、日体協のデータだけでは、どのような資格なのか分からず、日山協のデータではその点を補足している。なお、ACは高齢化が顕著である。
 まだ名称は未定(ハイキングリーダー・ハイキングインストラクターと仮称している)であるが、日体協ではなく日山協独自の資格を作るべく検討している。この制度の検定基準作成が今年度の重要課題である。これは1,500m無雪期を想定しており、中高年や山ガールをも念頭に置いている。
 全体として指導員検定基準はUIAAとの整合性を検討する必要がある。また、これらとは別にトレイルラン指導員の要求も出てきている。
 文登研、ガイド、クライミングジム、ジュニアとの調整連携も課題である。
* 公認指導者更新登録に伴う義務研修会システム
 2013年10月から、更新手続きにおける義務研修が厳格に行われることになった。これは全ての日体協団体に適用される。各県での対応を徹底する必要がある。
 研修会の時間数が、これまでの4時間30分から3時間に短縮された。
 指導者資格復活制度が大幅に変更され、2011年11月26日以降、資格失効期間の長短に関わらず、再登録することが可能となる。
 現在カード業務を提携しているセディナ(旧OMC)との契約が終了した。カードにクレジットを付けETC等で使用している場合は速やかに変更する必要がある。なお、新しい契約業者はまだ未定である。現在はコンビニ等での払い込みになっている。
 各県の体育協会や日本体育協会で行っている研修は、指導者更新手続きに必須の義務研修とは認められないので注意すること。
 2012年4月から指導者の登録システムが変更になるが、まだ詳細は決定していない。インターネットを使用できる者については、相当の利便性が出てくると思われる。

* 最近の雪氷技術研修会の流れ
 SABは、これまで止めるまでの研修を行ってきたが、その後に脱出するまでとした。その結果、従来の谷足でスリングを踏む方式では、脱出時にバランスを失う者が続出した。そこで山足に切り替えたところ、そのまましゃがみ込んで容易にグリップビレイに移行し、簡単に脱出できた。

* 最新の登はん技術研修会の流れ
 最近のロープは細くなっている。ダブルロープにフリクションノットを使用し、片方のロープに弛みが生じた時、1本のロープだけを引くと両方のロープが滑り出すことがあり危険である。このような時は、引く前に結び目を作っておくことが必要である。グリップビレイを連想し、大丈夫であるように錯覚するかも知れないので注意が必要である。

* 日本山岳協会公認ハイキングリーダー(インストラクター)制定について
 「大阪府岳連認定登山インストラクター」をモデルとして、説明があった。

* 懸垂下降時のロープ結束強度試験について
 昨年度の報告は中間報告、今回はまとめたものとしてオーバーハンド(OH)、エイトノットの強度試験結果の報告があった。
 これに対して、「現場では異なるロープや新品でないロープを使っている。このデータはそれを加味していない。」という意見や、「そもそもがフランス式の場合に、ロープが立つ必要があるのであって、日本では殆どがドイツ式に角をスリングで通過しているので、立つ必要性がない。」という意見が出された。

* 2010年指導委員会事業報告
* 2011年指導委員会事業計画
* 2011年指導委員会が実施する義務研修会
* 登はん研修会および主任検定員養成講習会
* SC指導員養成養成講習会
* 規約・規定集の改訂
* AC上級指導員検定基準規定

* SC指導員(上級指導員)検定基準(H23年度暫定版)
 指導員の受験資格は10.0以上をリードできる(人工壁でよい)ことが受験資格でる。
 上級指導員は、自然壁を想定しており、11.0の他に、ヘルメットや懸垂下降も加えられている。

* 日体協・スポーツ指導者オフィシャルブック改訂
 カリキュラムの番号が変更になっているので、申請時に留意すること。

* 山岳指導者要項改訂
 8年ぶりに改訂された。用語が改訂前と変わっているので、戸惑うことがある。またスポーツクライミングは全面改定となっている。

* 主任検定員の認定について
* 主任検定員制度の見直し案
{主任検定員制度}
・上級指導員の減少、高齢化により新規取得が技術的、体力的に困難になっている。
・指導員養成講習会の実施には必要不可欠である。
・研修会参加して一定の評価が認められ、また論文審査等免除して資格を更新する。
{指導員養成講習会対象の主任検定員}
・ジャンルが異なる登山活動が主たる指導員の検定に上級指導員資格が必要か。
・底辺の登山を支え、広い見識を有する人こそ指導育成に適任である。
・指導員養成講習会に限定する。

* 日体協体育功労者中央協議団体推薦案

* ブロック別意見交換会での様々な意見
 クライミング人口が少ない。公共の人工壁がない。ACは高齢化が進み、指導できるが検定はできない。構成団体が、ハイキングや中高年クラブになっている。クライミングジム経営者との連携。県単位の指導委員会が機能していない。クライミング人口を把握できていない。講習会の開催数が減少している。指導員のメリットが明確でない。講習者が集まらない。更新手続きの変更により指導員の減少に拍車がかかる恐れがある。県単位でなくブロック単位で講習会を開催する。近県との連携強化。ジム利用者は組織化が難しい。


用語
SC=スポーツクライミング
AC=アルペンクライミング
SAB=スタンディングアックスビレイ

山岳指導者指導要綱第2版において変更された主な用語
・燃料切れ=空腹等
・コンロ=コンロ(ストーブ)
・コッヘル=コッヘル(コッファー)
・ラントクルフト=ベルクシュルント
・ヤッケ=アウタージャケット
・オーバーズボン=アウターパンツ
・クランポン=アイゼン(クランポン)
・アイスアックス=ピッケル(アイスアックス)
・スコップ=ショベル
・スノーバー=スノーピケット
・ゾンデ=プローブ
・プルージック結び等=フリクションノット
・ラピネツーク=雪崩の通り道
神崎新会長の挨拶
指導員資格の再登録が可能になります!
切島さんからダブルロープ時フリクションノットの危険性が指摘されました
懸垂下降時のロープ結束強度試験結果が報告されました
切断シーンの動画も交えての報告でした
最後に皆で記念撮影
なかなか準備が揃いません
これで決まったかな?