登山者情報 1,479号

【2011年08月27-28日/大日杉〜草月平/井上邦彦調査】 

 飯豊連峰合同保全事業下見については、関係者の日程調整が難航し予定が二転三転した。特に前日夜になって私がメールを熟読していなかったために生じた騒動については、この場を借りてお詫び申し上げたい。
 さて、前日夕方に出張から帰宅したため買い出しも何もなく、途中のコンビニで適当に買い込んだ食料をザックに入れて出発。大日杉小屋に登山者カードを届けに行くと、中津川中学校の関係者の方々がいた。そうこうしている内に、タイミング良くハイジが到着。06:04二人で大日杉小屋から登り始めた。
 ザンゲ坂を登りきった所で、ハイジが休憩したいと言い出したので、一人で先に進むと、程なく坂本・大ちゃんパーティに追いつき、長之助清水で川端パーティと合流した。後は、リョウブ・ミヤマママコナ・センジュガンピを見ながら、飯豊町立中津川中学校の皆さんと並行して先に進んだ。
 08:56-09:37地蔵岳山頂でゆっくりとし、コゴメグサ・ミヤマアキノキリンソウ・エゾシオガマ・ウメバチソウ・ゴマナ等が咲く中を歩く。御沢分れで穴堰を見学する中学生達と分れ、ダケカンバの尾根道を登る。林の中のガリー浸食が昨年よりも一段と進行していたが、同時に木の根の形状による浸食の程度が、登山道維持補修技術の良い教材となっていた。
 尾根から下った小沢は、大変に気持ちの良い所で、ウサギキクやズダヤクシュを始め高山植物も微笑んでくれた。誰が言い始めたか、今回のメンバーの中では「素敵な水場」という呼称が定まってしまった。
 切合小屋直前の小沢は、小屋の水源地であると同時に、遅くまで急峻な残雪が登山道を覆うため危険な場所である。そのため沢周辺のお花畑の踏圧が問題だと指摘を受けていたので、現状を調査することにした。
 お花畑の中に、直上する踏み跡が複数本あり、そのうちの1本はガリー浸食が始まっていたことから、相当数の方が歩いていると想定された。また小沢の最上部にある縦走路から観察したら、踏み跡があったので、辿ってみたら、お花畑の上部に出た。お花畑は笹藪で周囲を囲まれているが、その内側にやはり複数の踏み跡があったが、草が長く伸びて踏み跡が隠れている所もあった。やはり上部も複数の踏み跡があり、残雪の状況によって歩く箇所が変化していることがうかがえた。
 種蒔山分れの標識から種蒔山方面に向かう登山道は、始めて実証試験を行った所であり、興味深く観察を行った。旧道は浸食が止まり、風化した斜面にも植物の生育が確認された。一方、新道については黒土が今後において浸食される可能性があると感じた。今後の対応策を検討する必要があるだろう。
 切合小屋の手前には、広い砂礫地とケルンがある。これまでここは構造土であると思って来たが、先日「新潟の山旅」に「(切合で)キャンプ・ファイヤーを囲んで・・・」と記載されているのを思い出して、観察をしてみると、小さな砂礫が多いことに気がついた。もしかすると、過去において薪として使用や、大きめの石がなくなることによる凍上現象の顕著化が関係しているのかもしれないと想像を巡らせた。
 小屋管理人の長谷川さんと立ち話をして草履塚に向かう。ここも浸食が激しいが、岩盤まで浸食を受けており、対応の方法に苦慮する所である。しかし上部は、まだ打つ手がありそうだし、流れ出た砂礫が草原を埋めていることも気になった。
 御前坂で標柱の風食について確認をし、登りに取り掛かったところで雨が降って来た。カッパを着て登り詰め、一ノ王子水場に汲みに行く。水量は少なくなっていた。管理人の高橋は大震災の影響ではないかと話していた。ともあれ、コップなどを持参した方が無難である。
 17:00本山小屋に到着すると、シミケンさんと亮さん、さらにはマッチャンまでが迎えてくれた。高橋さんから「就寝は8時だからな!」と強い注意をいただき、大いに盛り上がったことは言うまでもないだろう。指示された時間を守り、外に出て空を見上げると素晴らしい星空が輝いていた。
 翌朝は、切合小屋から上がって来る菊池先生を待つため、のんびりと過ごす。駒形山の降りは、今年の集中豪雨の影響なのか、大きな石の下が水でえぐり取られており、何らかの対策が必要と思った。
 玄山道分岐で施工個所を観察していると、菊池先生と由井君が到着。ここからは施工方法の意見を交換しながら草月平に移動した。
 打ち合わせが終了して、11:28草月平から一人大日杉に戻ることにした。11:39玄山道分岐、11:49駒形山、12:02-04飯豊山頂。12:15本山小屋に顔を出し、12:28御前坂、12:38姥権現、ここで空腹のため小休止。12:55草履塚、13:14切合小屋で長谷川さんと立ち話をし、13:25-32素敵な水場で食事。13:50御沢分れ、13:54御坪、14:12目洗い清水、14:28-33「語らいの丘」標識のあるピークで食事。14:51地蔵岳を通過する頃から少し疲れが出て来た。15:34長之助清水、15:44ザンゲ坂上、15:56大日杉小屋に到着。管理人の伊藤さんと情報交換をして帰途に就いた。

大日杉小屋
ベランダからみた登山口と登山届記載所
記載所
記載所の内部
ザンゲ坂を登る
ザンゲ坂を登り切って
二つ目の登山者カウンター
長之助清水
剣ヶ峰遠望
リョウブ
地蔵岳山頂にて
エゾシオガマ
目洗い清水
ウメバチソウ
コゴメグサ
御沢遠望
既に雪渓は殆どない
浸食が始まった登山道
浸食と木の根ダムの良い教材である
観察をしながら登る
深い浸食
身長よりも深くなっている所がある
快適に進む
ウメバチソウ

続く ⇒