登山者情報1,564号

【2012年07月14日/婆マクレ遭難/井上邦彦調査】
 18:17AJKから電話、「いま飯豊山荘にいる。砂防ダムから20分石転ビ沢に向かった所で転落事故発生。通報者が警察の事情聴取を受けている。」とのことである。早速、小国警察署に電話をする。中央班長のLFDに出動を要請。飯豊班のNBWに2名の出動を要請。ザックにロープを入れ、小国警察署に向かう。ここで警察の対応を確認。遭難者は下山中に登山道から転落、声はするが姿は確認できない状態で同行者が通報したとのことである。レスキューハーネスを借用し先行することとし、担架も上げてくれるように頼む。梅花皮小屋のOTJに無線中継を依頼。AJKに通報者にライトを持たせて湯沢ゲートを開けておくこと、通報者に現地まで行ってもらう旨を依頼する。
 湯沢ゲートに着くと、広域消防が待機していた。AJKからNBWとGCSが通報者を連れて先行したとの伝えられる。砂防ダムには車が1台、ここからライトを点灯し無線を開けて歩き出す。OTJと交信する。善意のパーティが現場に向かっているようだ。NBWの動きは良く分からない。善意のパーティが現場についたようだ。遭難者と会話をしているようだが、10mのロープしかなく遭難者まで降りることができないらしい。現場は彦右衛門の平の10分先とのこと。恐らくは婆マクレだろうと見当をつける。通報者に追いつく。現場が確認されたのでNBWとGCSは通報者を置いて先行したのだろう。
 婆マクレにかかり、大声を上げると返答があった。善意のパーティから落下地点を教わる。二人はその先で下降の準備をしていた。この場所の地形は頭に入っている。それ程面倒な所ではない。40mロープを頭上の灌木に固定を頼み、ハーネスをバンドにぶら下げ肩絡みで降る。声で遭難者の位置を探り合流する。
 遭難者はわき腹と頭を多少打ったとのことであるが、元気である。ハーネスを着けてもらうが、若干足がもつれる。ロープを結んで上に引き上げてくれるように声を出す。引き上げの途中で何度か落石があったが、落石コースを避けていたので問題はない。彼が落ちる途中で紛失したという眼鏡を探すが見当たらない。引き上げが終了した時点で、私のためにロープを投げてくれるように頼むが、障害物が多く無理とのこと。仕方なく遭難者のザックを担いで、滑落コースを登る。急斜面に草が生い茂っている。草の根元に衝撃を与えないように力を加えながら這い上がって皆と合流する。
 LFDも合流し、これで救助隊は4名が揃った。通報者のザックを担いでくれると言う申し出を有り難く受けて、善意のパーティが下山する。ハーネスにやや短いロープを受けて猿回しをすることにした。20:11NBWが確保、LFDが先導支援として下山開始。歩きだしてすぐ、5〜6mの地点で遭難者が転落、すかさずNBWが止める。やはり相当足にきているようである。とりあえずもう少し歩いてもらい、状況をみて背負い搬送に切り替えることとした。PWDが署員を連れて合流、転落現場を検証に向かう。署長も自らヘッドライトを点けて合流。その後は何回か休みを取りながら、結局最後まで歩き通していただいた。
 21:28砂防ダムに到着すると、救急車を始め消防関係や警察の車両が何台も待っていた。天狗平ロッジでAJKに挨拶し、22:30帰宅。
現場を出発
下ツブテ石付近
砂防ダムに到着

おわり