登山者情報166号

【連休時の予測:長者原〜天狗平】
民宿奥川入迄は通年除雪。国民宿舎飯豊梅花皮荘がバスの終点(夏の1月間のみ天狗平が終点)。梅花皮荘に駐車場はあるが、連休時は混雑する。梅花皮荘手前で玉川に架かる大淵橋右岸の分岐点に案内看板がある。4〜5台の駐車スペースがある。ここから右岸沿いに天狗平に向かう車道は、連休後に除雪を始める予定。歩き始めてすぐ岩山が川に迫っており、気温の低い早朝は滑落に注意。梅花皮荘裏から歩道橋が合流する、橋けたが外されて通行禁止になっていることもある。さらに進むと地元の人が上の斜面から薪を切り出し棚に組んでいる、除雪されてから運ぶのである。牛の倉の上の沢に架かる牛の倉沢橋の約200m先が国有林と民有地の境、通称官民境である。国立公園の入口であり、ここから雪崩の危険地帯が始まる。上方の雪の塊や膨らみ・亀裂の状態に充分注意する。危険を感じる場所や枝沢の口では絶対に立ち止まることなく一人一人素早く通過する。特に砂防ダムの付近が悪い。といた沢を過ぎると河岸段丘となり、対岸のおおふたがり沢からの雪崩が玉川本流に巨大なスリーブリッジを作っている。この先は急峻な岸壁を削って作った車道(通称吹き付け)であり、過去この時期に大学 山岳部員2名が滑落している。上方の雪は殆ど落ち尽くしているが確認する。路肩が露出しているが、一部カッティングが必要だ。雪が多い年は発電所の人が作ったトレースを辿るが、早朝等はアイゼンが欲しくなることも多い。吹き付けを過ぎ、上部の岩場からの雪崩が終っていることを確認しながら通過する。対岸に旭又滝を見てブナ林に入ると一安心である。本流に架かる天狗橋の右岸袂にふなしずく(清水)が湧いている。さらに車道沿いに進むと左手に飯豊山荘があり、ピロティで雨宿り程度は可能である。右手の天狗平ロッジは雪に埋もれている。例年、飯豊山荘のオープンはここまでの除雪が完了する5月末になる。天狗平のオープンはさらに遅れる。

【連休時の予測:天狗平〜石転び沢】
飯豊山荘前で丸森尾根、湯沢橋を渡った所で梶川尾根と分かれる。共に尾根の下部は夏道が出ているが、本コースは全て雪の上になる。ブナ林を進み、正面に宝珠山が雪煙を舞上げてそびえると、まもなく砂防の看板の前が温身平の分岐点である。正面梅花皮沢に架かる橋を渡るのがダイグラ尾根方面、左手は発電所の取水口方面、右手が石転ビ沢方面になる。右に折れてすぐ砂防ダムの背後に梅花皮岳がそびえる、右端に石転び沢の上部と梅花皮小屋が遠望される。天狗平から、車道の終点である二つ目の砂防ダムまでは、危険性は少ない。山道に入ると右手からのブロック雪崩に留意する。沢のまん中にあるツブテ石の手前のヘツリから彦衛門の平に上がる部分が悪い、何時雪崩が落ちてくるか肝を冷やしながら通過する。雪の多い年はツブテ石の手前または下流のスノーブリッジから沢筋を歩くこともあるが、慣れていない人には勧められない。彦衛門の平を過ぎたヘツリ(通称ババマクレ)の夏道は毎年崩れ、自分で道を作るか沢の近くまで下りて通る。雪が少なければそのまま夏道をトラバース、雪が多ければ沢沿いが良い。地竹沢もブロック雪崩が恐いし、足元の崩壊もありルート選択に迷うことが ある。地竹沢から雪渓の上を通る年が多いが、途中で穴が開いていたり亀裂があったりするので、確かな判断が必要である。危険を感じたら、左岸の台地(夏道)が良い。滝沢出合は雪が多ければ問題ないが、雪が少ないと穴や亀裂がルートを迷わせる。梶川は大きな沢で雪渓が上部まであるので、ここに迷い込む登山者がいるので注意する。梶川出合のすぐ上流で左岸からの枝沢が毎年露出しており、貴重な水場になっている。連休には決ってここにテントを張るパーティがいる。水場付近は雪渓が薄くなっているので注意したい。雪渓がしっかりさえしていれば、夏道よりも楽で早い。石転ビノ出合は石転び沢と門内沢の合流点であり、広い。快晴時の景観はまさに圧巻である。正面の沢が門内沢であり、稜線の右端に門内小屋が見える。この時期、実力のあるパーティであれば通れないコースではない。ただしどの沢を詰めるかの選択が難しいし、上部が急峻である。扇ノ地紙に出るコースは、途中で大きな滝が露出する。石転ビ沢は数年に一度、北股沢出合とホン石転び沢出合の間の左岸から、とてつもなく大きな土砂混じりの雪崩が発生し、石転ビノ出合付近まで一面がデブリに覆われる。また小屋位の 大きさの岩が転がってくることも珍しくない。大規模な崩壊が発生するのは4月末から6月初旬の間の雨天時が多い。このような雪崩に巻き込まれたら逃げようがないので、雨天地の入谷は控えたい。石転ビノ出合で幕営するには、幸七尾根の末端の台地が安全性の確立が良い。そもそもこの時期に飯豊に入山するのだから、絶対安全と云うことは有り得ない。ホン石転ビ沢出合の下で傾斜がきつくなり始める辺りから雪崩の危険地帯にはいる。大きな雪の塊(ブロック)が右左とコースを変えながらジャンプして落ちてくる。ブロックは複数で落ちてくることが多いことも留意したい。本流だけでなくホン石転ビ沢からのブロックも多い。またホン石転ビ沢に迷い込んで滑落下登山者を背負ったことがある。ホン石転び沢出合と北股沢出合の間が、最もブロック雪崩に神経をすり減らす地帯である。特に左岸の枝沢と、見えにくい北股沢からのブロックに注意が必要である。傾斜が落ち沢が広がると北股沢である。北股岳へ登る沢には三角形の岩が目だつ。羊岩といって氷河地形によく見られるものである。右手の北股沢の入口は左手正面の石転び沢本流よりもむしろ広く、迷い込む登山者も少なくない。ここか ら梅花皮小屋まで正念場の急傾斜が続く。一面の白世界の中で、視界がない時は慣れた者でもルートを外すことがある。傾斜の緩い方へ進むと右手の北股岳に向かってしまい、切り立った雪渓上で見動きがとれなくなるしブロックも多い。僅かに左上するのだがその程度が難しい。私の場合ルートを失った時は小屋のやや左に出ることが多い、北股岳側の恐ろしさを意識していることによる。梅花皮小屋は北股岳と梅花皮岳の鞍部にあり、通年露出している。山形県側にある夏期入口は雪で開かなくなっているが、脇の梯子を登って容易に中に入れる。アイゼンを脱いでから梯子を登るのは常識であるが、非常識者により2回入口の床が破損されている。この時期に便所と水場が使える小屋は稜線では梅花皮小屋のみである。水場は、梅花皮岳寄りへトラバースする。詳しくは梅花皮小屋のデータを参照すること。今年から夏期以外も協力金の徴収が行われる予定なので注意すること。
1995.04.24井上邦彦