登山者情報1,958号

【2016年05月24日/大日杉〜飯豊山〜御西小屋/井上邦彦調査】
 
【概要-FB掲載】
 今年もまた山小屋管理の時期が近くなってきた。来月の荷上げに向けて準備をしている時に「昨年壊れた御西小屋トイレのドア」の状況が話題となった。
 今年はまだ本山(飯豊山)まで登っていないので、大日杉から登り調子が良ければ御西小屋まで足を伸ばしてみることにした。タイムリミットは12:00とし、その時点で戻ることに設定した。
 起きたのが04:00準備をし、途中のコンビニで買い出しをして出発。現在、手ノ子から中津川までは通行止めになっているが、小国から九才峠を経由するぶんには問題ない。
 歩き始めは05:45、当初の予定よりも1時間近く遅い。走ってみようとしたが、すぐ息が切れる。無理しない程度で歩いてみる。持参したSPO2で脈拍を測りながら登ると、概ね135/分前後で推移している。1時間近く登ると足が動かなくなる。ザックを降ろしてお握りを1個食べる。すると足が回復する。その繰り返しである。水筒は500mlのみを持参し、飲んだ分だけ残雪を入れて補給した。
 下りの部分は走ってみたが、へつりになっている部分は障害物が多く危ないので早足とした。下りの測定は概ね125/分であった。
 飯豊山(三角点)に着いたのが10:39、休憩時間も含めて5時間弱となる。御西小屋まで行けると判断。今回は踝が露出するズック型の登山靴に、ショートスパッツを履いた。御沢の雪渓ではやはりキックステップを長く続けると足首に違和感が生じた。玄山道分岐から御西小屋までは殆どが雪の上だったが、ここでは特に問題はなかった。
 御西小屋で幾つかの作業を行い、12:12出発。下山も御沢を使用し、グリセードで下った。地蔵岳山頂で持参した食料を食い尽くす。ザックの中には非常食の他、ノンアルコールビールとラーメン(ガス・食器あり)があったが、これは結局使用しなかった。山頂発16:12、17:00まで下山したいと思い、ジョギングで下山。しかしザンゲ坂上で木の根で滑り手をつく。さらにザンゲ坂でスリップし左掌をついてしまった。太腿前部の筋肉が疲労してきているのが分かったので、そこからはゆっくりと歩いて下山し、17:14車に戻った。
 写真を撮り、山の状況を記録しながらの山行であったが、脈拍を意識して記録することにより、身体の様々なデータを得ることができた。最後にスリップしたのは、熱射病の前兆があったかもしれない。135/分前後に徹すれば、1時間で筋肉疲労が始まるが、10分弱の休憩を取り食事をすれば、10時間以上ペースを持続できることが判明した。これが食事をしながら歩き続ければどうなるかはまだ不明である。下山では125/分程度でも1時間程度で筋肉が疲労した。
 下山時は足場が安定しているかどうかが鍵になり、加齢によりバランスや瞬発力が落ちているので、動く石や雪崩地形を横切る登山道では走るリスクが大きくなること理解できた。
 また下山後の入浴時に背中(腰)に痛みを感じたが、これは下山時にザックの中が動いており、背中に擦過傷を生じたものだろう。翌朝である現在、筋肉痛は殆どない(太腿前部に軽い違和感)が、階段では息が切れる状態である。心配した左手は内出血もなく大丈夫のようである。

【報告】
 05:45大日杉登山口駐車場(GPS630m)発、橋を渡って登山届出所にあらかじめ作成してきた届出書を投函して登り始める。脈拍は138/分。06:00ザンゲ坂上、06:07山長の松、06:16長之助清水通過、132/分。アカモノ(イワハゼ)・ガクウラジロヨウラク・ナナカマド・オオイワカガミ・ヤマツツジが咲いている。足を上に上げるのではなく、前に置くように意識するとひとりでに歩幅が広くなる。清水を通過するとムラサキヤシオが出てくる。この日はここから御坪までムラサキヤシオが目を楽しませてくれた。06:21御田(GPS995m)を通過する。イワウチワは殆ど終わっており、ムシカリ(オオカメノキ)とタムシバが加わる。06:31(131/分)、06:45(133/分)で登る。私が何時も休む横向き(GPS1,126m)を06:33に通過する。
 06:50-57(GPS1,320m)で1回目の食事を摂る。休憩直前に足がもつれ始めた。やはり1時間が限界かもしれない。標高差690mを65分で登ってきたので、106m/10分となる。今回の目標が昔のタイムである100m/10分との比較であるから、まずまずのタイムである。7分間の食事休憩で77/分まで下がり、再び歩き始めるとすぐに122/分となった。
 カタクリが咲き、色が薄くなったギフチョウが目の前に止まった。カメラを取り出したが撮影は間に合わなかった。イワウチワが咲いている。07:05滝切合(GPS1,387m)を通過し、すぐ先の残雪で水筒に雪を入れて水を補充する。タムシバ・ムシカリが登山道を覆い、マンサクも色を添え、下はカタクリが咲いている。茎が緑色のミツバオウレンが出てくると、ノウゴウイチゴ・エチゴキジムシロが咲き、僅かに残雪を踏むとカタクリが乱舞していた。
 07:24地蔵岳山頂(GPS1,542m)。休憩時間を除くと、894mを92分で登ったことになり、97m/10分でこれもまずまずだろう。ミツバオウレン・シラネアイ・ムシカリの咲く中、水の気持ちになって降る。所々残雪を踏むが、走って降る時は弾けて跳ね上がる枝が嫌らしい。ムラサキヤシオが素晴らしい。タムシバ・オオバキスミレ・ショウジョウバカマも咲いている。
 07:49-55目洗清水の標柱は埋まっているが、残雪の下部に水場に行く踏み跡の一部が見えた。すぐ先の広場分岐の標柱は露出しており、広場で飯豊山を眺めながら2回目の食事とする。残雪の登りは134/分、136/分。砂の上と同じ感覚で思うように走れない。
 08:19御坪を通過し、08:22展望地で御沢を観察する。08:25御沢分れを通過し、08:27雪渓に降りる。右岸沿いに亀裂が入っていたが、近づいてみると左岸にも亀裂の始まりが走っていた。周囲を亀裂で囲まれている状態の雪渓は危険である。左岸沿いの亀裂の上を慎重に通過する。雪渓の上では126/分まで落ちていたので、132/分まで上げる。僅かに脈拍を上げただけで負荷が大きくなるのが分かる。08:39日焼け止めを塗りピッケルを出す。最後の急斜面はキックステップで登る。最初は靴のエッジを使っていたが、くるぶしが露出しているズック型の靴なので、次第に足首に違和感が出てくる。面倒なのでつま先だけを蹴り込み直登に切り替える。このような所ではやはりしっかりした登山靴には敵わない。
 08:55切合小屋(GPS1,749m)周辺には雪がなく、トイレは4穴のうち1穴が非水洗で使用可能。この先はミネザクラ・ショウジョウバカマ・ミツバオウレン・イワナシが咲いている。久しぶりに見る大日岳から牛首山にかけてのラインはやはり良い。GPS1,760m(P)より残雪の上となる。126/分、やはり雪の上は脈拍が落ちる。
 09:22-33草履塚で3回目の食事、メール送信、山頂部はエチゴキジムシロが咲き誇っていた。この先、ミヤマキンバイ・ハクサンイチゲ・オヤマノエンドウが咲いている。御前坂の標柱から最後の急登である。139/分で登る。ヒメイチゲ・コメバツガザクラが咲いている。10:14カフェ石(GPS1,999m)を左に見て、133/分。10:21一ノ王子を通過、水場方面には残雪が見え、行かなくても水場は残雪に覆われていることが分かる。
 10:27本山小屋を通過すると、頭上に水色に橙色の線が入った機体が飛んできた。県警のヘリであるのは間違いないが、どこの県警ヘリか分からない。コメバツガザクラが満開であり、ミヤマキンバイ・バイカオウレン・ヒメイチゲも咲いている。
 10:39-50飯豊山(三角点)で、4回目の食事を摂る。この調子なら御西小屋まで1時間程度であろう。計画の変更メールを送信する。
 10:59駒形山を通過、玄山道分岐の手前から残雪の上となるが、草月平は雪がなく、バイカオウレンが咲き、エチゴキジムシロ・ミヤマキンバイ・ハクサンイチゲがほころび始めていた。ニッコウキスゲの若葉が多く芽生えており、今年はニッコウキスゲの当たり年を予感させた。融雪水を水筒に汲むが、汲む道具が必要である。草月平を抜けると再び雪の上になり、126/分。GPNから無線が入る。
 11:40-12:12御西小屋に到着する。周囲は雪原であるが、小屋とトイレ棟の周囲だけ雪が消えていた。さっそくトイレを確認すると、心配したドアの喪失はなかったものの、片側のドアノブが下に落ちていいた。残っている方もドアノブの機能はない。両者とも押して入る方式で、自動で閉まる機能は残っている。問題は両方とも鍵をかけることができないことである。いままでも片方はそうであったが、中から石で開かないように支えることになるだろう。その他には特段の破損箇所は確認できなかった。GPNと電話で状況を連絡し、屋内で5回目の食事とする。受信したメールに「上空から井上さんを確認しました」とあった。先ほどの県警ヘリは山形県警察ヘリ「がっさん」であり、知人が乗っていたようである。
 小屋から戻る途中は雪面にいる昆虫を撮影しながら進む。上空を自衛隊のジェット機らしいものが何度も旋回していた。草月平を過ぎた時点で124/分。13:09-22飯豊山三角点で6回目の食事をし、メール送受信と無線交信を行う。
 13:33本山小屋、13:37一ノ王子、13:41カフェ石、13:46御前坂標柱を通過する。足を置く石が動く可能性があるので、走るほどにはいかない。13:58姥権現を通過する。14:12-18草履塚で7回目の食事を摂る。
 14:30切合小屋を通過する。夏道(種蒔山側)も考えたが、たっぷりと雪が着いており今回履いてきた靴で延々とトラバースをするのは嫌らしいので、来たコースを降ることにした。ピッケルを出しグリセードで御沢に降りる。14:39雪渓に注ぐ小沢で水筒に水を補給する。14:50展望地を通過する、14:53御坪を通過する、登りは133/分。来る時は気づかなかったがハクサンチドリが2輪咲いていた。
 15:22目洗清水を通過し、15:27-48、8回目の食事とする。15:41に1,508m峰を通過、足がもつれそうになるので、下りであっても足場の悪い所は走れない。最後の登りは135/分。
 16:06-12、地蔵岳山頂、9回目の食事。これで残りはラーメン・ノンアルコールビール・非常食だけとなった。AXLから無線が入り、五段山コースの吊り橋復旧作業を終えたので帰宅するとのことである。完成写真を撮影していることを確認してお礼を伝える。
 できれば17:00まで車に着きたいところである。登山道も安定しているので走ってみることにした。16:23滝切合を通過する。走りながらの下りは124/分である。16:46御田杉、16:49長之助清水を通過する。この分なら予定時刻まで下れそうである。しかし登山道の木の根に置いた足がスリップし、今回始めて手と腰をついてしまった。大腿部前方の筋肉に疲労が出てきた感じがする。17:01ザンゲ坂上を通過し、岩場で足を滑らし左掌に体重を掛けてしまう。痛みはないので骨折などはしていないと思うが、後ほど内出血してくるかもしれない。気が付くと大腿部前方の筋肉が相当にへたばっている。急ぎ足を止めてゆっくり確実に降ることにした。
 17:14車に戻り、川で身体を拭き着替えて帰宅とした。
登山届記載所は設置されたが、用紙は置いてなかった
私は事前に作成してきたものを投函して登り始めた
大日杉小屋
山すっかり緑に覆われた
長之助清水
三国岳が見えた
剣ヶ峰の様子
新しい巻道があった
滝切合
滝切合から地蔵岳と飯豊山
ここで水筒に雪を補充 お腹の弱い人は真似しないで下さい
これからたどる長い尾根
ムラサキヤシオが満開
地蔵岳山頂の分岐
山頂(三角点)からの飯豊山
降ります
東側(風下側)に作られている登山道は走りにくい
目洗清水 残雪の下部に水場道が見えた
目洗清水すぐ先の標柱
標柱の広場から飯豊山
さらに進む
御坪
ミツバオウレン
展望地から御沢の全貌
御沢分れから雪渓に下った
御沢の雪渓
黒井堰は埋まっている
この先に嫌らしい亀裂が見えた
ここはまだ大丈夫
振り返る
両側に亀裂ができている箇所を見下ろす
雪渓の中央はとても通れない!
草履塚と飯豊山
地蔵岳(左端)と歩いてきた尾根
上の道は急斜面が残雪に覆われている
切合小屋
冬期出入口
トイレは1穴のみ使用可能

つづく →