登山者情報197号

【丸森尾根】

天狗平ロッジは閉鎖したので、天狗平に宿泊する場合は飯豊山荘に申し出て下さい。標高406m、飯豊山荘の正面の標柱に従って、いきなり木の根が露出している急な坂を登ります。510mで一息つくもののすぐに両手を使う岩稜が待っています。目の下に天狗平ロッジと湯沢の砂防ダムを見ながら高度を一気に稼ぎ、岩稜が終了すると765mのピークです。二つ目の鞍部に文字の消えた看板があります、「のぞき」といわれる所で、以前は飯豊温泉の源泉から登ってきた登山道がここで尾根上に出たそうです。のぞきからすぐ上は潅木の枝をつかんでよじ登り、その後は飯豊連峰にしては緩い登りなのですが、それでも結構息が上がる登りが続きます。960m付近から尾根が二重になっており左側からかすかに水の音が聞こえてきます。1,030mに水場の標識があります。水場は標識から南南西に距離20m高度差6m。この清水は晴天が続くと涸れることもあるのですが、今回は充分な清水が勢い良く出ていました。この付近は尾根が広くなっているのでブナの林になっています。ここから緩い登りが続き、尾根にはヒメコマツやナラが線上に生育し、微かにマルバマンサクやムシカリ等が色を染めていました。やがてダケ カンバが出てくると高木はなくなり、潅木と同様に伏せた形のブナが登山道を覆うと、まもなく1,540mのこんもりした小さなピークに「丸森峰」の標識がハイマツにつけられています。ここからは高山帯です。付近は秋景色の真っ盛りでした。僅かに下った所から高山植物の草々が広がり始めます。草原から左に下る踏み跡は残雪がのこっている時の水汲みの道です。迷い込まないようにします。
この先は広い尾根の南東斜面を巻くように登山道が登っています。7月始頃までは道を失ったり滑落したりする危険性もありますが、今は全く雪がないので心配は不要です。稜線に出た所が地神北峰、標柱が2本立っています。
【稜線:地神北峰〜三国岳】
地神北峰から地神山まではほぼ稜線伝いです。地神山山頂には標柱と三角点があります。東側から西側に出て岩伝いに下り笹に覆われた鞍部に東側に伸びる消えかけた踏み跡が確認できます。これは稜線の東側をトラバース状に続く旧道ですが、長年道刈りをしていないので入らないようにして下さい。道は稜線の西側の潅木地帯を緩く登ります。「扇ノ地紙」の標柱は、それがなければピークとは気づかないほどです。今回は風が強かったのでこの先は稜線の東側の旧道を使いましたが、慣れない方は西側の新道を通ることが無難です。新道と旧道は時折交錯しており、胎内山の標柱(石)は新道上にあります。右手に小さな慰霊碑を見て、下りきった鞍部に小さな池があります。ここから門内小屋にかけては二重稜線となっており、付近にはあちらこちらに踏み跡がありますが、鞍部から忠実に稜線を辿って門内小屋に出ます。
門内小屋の水場は分かりにくいのですが、先ほどの鞍部の池まで戻り、踏み跡を選んで東側の稜線の鞍部を越えて東斜面に下り、すぐに北側にトラバースして崩壊地から流れている小沢に入り、若干下って水を得ます。今回は必要なかったので確認しませんでした。門内小屋は3棟ありますが、一番大きい小屋を利用します。便所は使用できません。無人ですので丁寧に使用して下さい。
門内小屋から北股岳を目指して出発するとすぐに登山道が分かれます。左手の道は門内岳山頂を東に巻く道です。まっすぐに進むとまもなく山頂で祠と鳥居があります。ここから胎内尾根に下ってしまう登山者がいるので、迷わないよう注意して左の登山道を下ります。なお胎内尾根は廃道になっており、藤七ノ池の手前で踏み跡が消えます。門内岳山頂から僅かに下ると先ほどの巻道を合わせます。ギルダ原は広い稜線の快適な登山道ですが、今回は強風にあおられて身体を斜めにして進みました。左側に池を見て緩い登り下りから次第に北股岳の登りとなります。左に窪地を見ると登山道が二つに分かれます。まっすぐの道はハイマツで塞いでいますから、右手の笹と潅木の中に切り開かれた登山道を進みます。まっすぐの道は旧道で、稜線の東側を通っていますが道が崩壊しており危険です。新道を登ると大きな鳥居が見えてきて北股岳の山頂に出ます。小さな祠と三角点・標柱があります。山頂で湯の平から来るオーインノ逆峰登山道を合わせます。洗濯平を経由する登山道は迷い易いので、湯の平へ下りるときは北股岳を通るようにします。北股岳は展望が良いのでのんびりしたいところですが、今回 は早々に梅花皮小屋に向かいました。登山道は稜線の東側です。雪があるときは石転ビ沢に滑落しないよう緊張する部分です。西側斜面に出てまもなく「湯の平分岐」の標柱があり、洗濯平への道を西に分けるとすぐに梅花皮小屋到着となります。梅花皮小屋は無人ですが、毎週のように管理人が巡回しています。清掃協力費として一人千円を備え付けてある箱にいれて下さい。便所も使用できます。水場は小屋から登山道を梅花皮岳方向へ10m程度で標識がありますので、下の道を約1分進むとホースから水が出ています。
梅花皮小屋を出発し水場への道を分けて、梅花皮岳の西側斜面を登ります。振り返ると北股岳が色彩豊かにそびえていました。傾斜が落ちたところから梅花皮岳山頂までは、北東斜面の滝沢をを覗くと目が眩みそうな急傾斜です。強風の時は吹き飛ばされないように注意します。
梅花皮岳の山頂には標柱があります。東側を下り西側に出た鞍部に与四太郎ノ池へ下る踏み跡を分けます。西側斜面を烏帽子岳まで登ると三角点と標柱があります。ここも展望に優れた所です。心行くまで楽しみたいものです。
烏帽子岳からクサイグラ尾根分岐までの東斜面の登山道は、中性の高山植物が大変きれいなところですが、現在は僅かの花が残っている程度でした。クサイグラ尾根分岐から1,895mまで尾根沿いに踏み跡がありますが、入らないで下さい、入口に標柱が立っています。登山道はそのまま東斜面を下ります。チングルマの綿実も末場です。逆コースの場合、下の段の登山道を通ると途中で消えており、道に迷っている登山者も少なくないようです。登山道は稜線を越えて西側斜面を下ります。行く手の峰々が眼前に広がります。やがて笹原となり最低鞍部で東側斜面に残っている残雪を見て、簡単な岩場を越えると、半分埋まったような池が亮平ノ池で、標識はありません。最低鞍部から御西小屋まで、登山道は全て東斜面をトラバースするように設置されており、夏期の登山シーズンに入っても残雪が残り、滑落や道迷いに注意を要するところです。池から僅かに下った付近は登山道が二段になっています。歩き易い方を選んで進みます。比較的広く緩やかな登山道を過ぎると、東側下方にカール状の窪地があり、テントの張った跡や踏み跡が見えます。融雪水が取れる時に使われたものですが、ここに迷い込ん で苦労する登山者が多いようです、特に逆コースの時に要注意です。急斜面をへつるように進み沢状に深く掘れた登山道を登ります。足元に要注意です。すぐに左手に池があり、「御手洗ノ池」の標柱がありますが、「みたらしのいけ」と読みます。この先は再び登山道が二段になっています。天狗の庭直前も登山道が崩壊しかけていますので足元に注意して下さい。いきなり尾根が広くなると天狗の庭です。斜めになった標柱から先の登山道は、2mも掘れています。登山者が歩くことによって黒い腐葉土が水に流され、無防備になった土壌が流出し、それを避けて登山者が登山道の脇を歩いて腐葉土を破壊して行った結果です。また幕営によっても破壊されました。現在心あるもので復元作業が始まりました。協力をお願いします。
笹原の中の登山道を登ると左手に小さな池があります。その先は急斜面になり登山道は三段に分かれており、一番上の登山道は稜線を通ります、これは雪がある時に使います。足元に注意して通過します。さらに僅か登ると天狗岳の肩に出ます。山頂は通りません。なだらかな斜面を巻くように下り、掘れた登山道を若干登ると御西小屋に到着します。
小屋から笹原を東北東に登る踏み跡は、展望のよい岩場への道で縦走路ではありません。また御西小屋から天狗岳に向かう時は、誤って駒形沢へ下る踏み跡に入ってしまいやすいので注意が必要です(管理人が常駐しているときはロープあるが、期間外はなくなる)。
水場は小屋から縦走路を飯豊山に66m進み青ペンキの矢印を頼りに南東に下る。距離150m高度差45mで清水がある、コップを持参したほうがよい。ここから玄山道分岐までは、天上の楽園のようなゆったりとした稜線を行くが、これから雪が積もるとルートファンディングに大変苦労するところでもある。玄山道分岐の標柱から登山道を離れて踏み跡を東南東に下り気味にトラバースするとまもなく弘法清水となる。こんこんと湧く清水の脇で暫しうつつの夢を見る。このまま踏み跡を辿ると飯豊山頂と本山小屋の間の鞍部に至るが、道は荒れており勧められない、ここはきちんと三角点を踏みたい。玄山道分岐に戻り笹原を若干進み砂れき地を登る。駒形山はこんもりとしたピークで標柱がなければそれと気づかない程である。さらに砂れき地から笹原を過ぎ標柱から先は岩が混じった砂れき地になるが、飯豊山から下りの時はそのまま下りすぎないように注意する。山頂直下にダイグラ尾根分岐の標柱がある。飯豊山の山頂には三角点と小さな祠があるだけで標識 はない。しかしさすがに一等三角点だけあって、四囲の眺望は飽きることがない。山頂からほとんど登り下りのない砂れき地を進むと石垣に囲まれた飯豊山神社と本山小屋がある。神社は板が打ち着けられており、わずかに賽銭を入れる穴がある。本山小屋は稜線の他の小屋と同じように夏期以外は原則無人だが、時折管理人が登ってきて清掃等を行っている、管理人がいる時は御西小屋と同様に素泊まり一人2000円になる。門内小屋の便所は使用できないが、梅花皮小屋・御西小屋・本山小屋の便所は使用できた。しかし、御西小屋と本山小屋は今後雪囲いがなされると使用できなくなる。梅花皮小屋の便所は小屋の中から入る。御西小屋の便所は小屋の脇に別棟で立っているのですぐ分かる。本山小屋の便所は縦走路を切合小屋に下り始めたすぐ左側にある。
本山小屋から縦走路を切合小屋に向かう、砂れき地の緩い下りであり、よく見ると所々に赤いペンキでコースが示されている。大きな石垣の脇に「一ノ王子」と書かれた標柱がある。その30m手前の石の上にペンキで「水」の表示がある。ここから北東に距離85m高度差15m下るとおいしい清水がある。この清水は梅花皮小屋の水場と並んで稜線ではぜひ味わってみたい名水である。一ノ王子から160mを一気に下りきると「御前坂」の標柱があり、まもなく御秘所の岩場となる。ルートを外さないようにして後向きで下ればさほど難しくはない。更に下った最低鞍部の標柱の脇、石垣の中に前掛けをした姥権現がある。女人禁制の時代にここまで登った女性が石になったと伝えられている。草履塚の登りは一汗かくが、振り返る飯豊山の景色は素晴らしい。北峰を西に巻き草履塚の山頂となる。標柱と剣が立っている。古くはここから上が神域となるため、ここで草履を履き替えたと言う。掘れた登山道を下り、広い尾根に出る。左の広い尾根にある踏み跡には入らないように注意する。登山道沿いの小沢に僅かに水が染み出ていた。登山道は右の稜線へと戻り、なだらかな砂れき地を進むと、まもな く青い屋根の切合小屋である。小屋手前の便所はこの季節一つだけ鍵がかかっていない。この時期には小屋まで水は来ていない、小屋から三国小屋方面に向かい、「種蒔山分れ」の標柱から大日杉登山口へ下る登山道を約5m進むとホースの繋目から水が出ていた。種蒔山分れと切合小屋の間は、視界のないとき登ってきた登山者が道を失ってよくさまよっているので注意したい。種蒔山分れから掘れた道を若干登ると登山道は稜線の北東側をトラバースしている。種蒔山のピークをそれと気づかずに過ぎると「種蒔」の標柱がある。ここから七森の登降が始まる。遠く三国小屋が見える。足元に注意しながら下る、比較的大きなピークは西側を巻く、東側斜面は削り取られたような急斜面である。やがて剣ケ峰を登り下りする登山者がスカイラインに浮かび上がる。駒返しの鎖場を後向きに下る。最後にほんの僅か登ると三国小屋である。三国小屋は山頂そのものに立っている、大日岳の眺めがよい所である。。南側にはベンチがあり、便所が別棟に建てられている、そのまま南下するのが弥平四郎へ下る登山道である。
川入へ下る登山道は小屋の南東側にある。いきなり急な下りである。下り始めてすぐ登山道の右手にある岩の上になにか立っている、弘法大師の胡麻段と呼ばれている所である。岩稜を慎重に下ると岩の上に水と描かれている、小屋から距離70m高度差25mの所である。ここから北に距離50m高度差40m下ると清水がある、三国小屋の水場はこの清水を利用することとなる、この時期はかなり細くなっており渇れることもあると言うが今回は立ち寄らずに通過した。さらに岩稜は続く、コースをよく見て足場や手がかりを確認して下る。標高1,520m付近でようやく岩場が終了する。鞍部から登り始め左手の小さな湿地で高山植物は終わりである。さらに登ると右手に青い標識があり、その掘れた登山道に入るとブナとダケカンバの高木の中をトラバース状に道は続いている。やがて水の音が聞こえてくると峰秀水である。登山道のすぐ脇にあり、水量は豊富な清水である。さらに進むと地蔵山から下ってくる深く掘れた登山道と合わさる、ここにも青い標識がある。殆ど登り下りない登山道を進むと、左側に標識があり北東側に登山道を分ける。まっすぐ進めばすぐに横峰小屋跡となり大白布沢に至るが 、今回は左の小白布沢へ下るコースを取った。ブナ林の中をぐんぐん高度を下げると遥か右下に小白布口の駐車場が確認できる。登山道脇に標識がある、秀好清水である。南に僅かに下ると清水があるが、今回は使用しなかった。標高950m付近から登山道は尾根の右手に下り始め、造林地となるとまもなく上南沢を渡る。そのまま登山道は沢沿いに緩く下り下南沢を渡るとすぐに登山口の駐車場に出る。約8台程度の駐車が可能である。ここから迎えの車に乗り川入に向かう、途中にはここならではのスイッチバックがある。小白布沢本流が近くなると、大規模林道の工事現場となり、道路が交錯しており、工事関係者の指示にしたがい通行する。川入集落手前のバス停で林道は終了する。
1995年09月28〜30日井上邦彦・小椋秀春・二瓶幸威調査