登山者情報2,059号 2017年06月15日修正

【2017年05月27日/春山合同技術訓練兼山形県山岳連盟指導員研修会/菅野享一他調査】
 今年の合同訓練兼指導員研修会は天狗平ロッジに1泊2日で実施された。初日は「遭難保険・雪崩」について菅野享一県岳連登山部長(兼指導委員長)、「低体温症」について渡部政信登山部副部長が担当し、松橋昭夫(長い病院名誉院長・小国山岳会)が「低体温症の生理医学的情報及び栄養などの課題について」と題し講義を行った。その後、井上邦彦県岳連副会長が背負搬送法、吉田岳副指導委員長が登山用具の使用方法について担当した。
 翌日は近くの残雪において3班に分かれ実技研修を行った。

2017(第14回)春山合同技術訓練(兼)山形県山岳連盟指導員研修会


1.実施日 平成29年5月27日(土)〜28日(日)
2.会 場 小国町 小玉川 「天狗平ロッジ」
3.主 催 山形県山岳連盟
4.共 催 日本山岳・スポーツクライミング協会 山岳共済会
5.後 援 NPO法人飯豊朝日を愛する会
6.主 管 山形県山岳連盟 登山部 指導員会・小国山岳会
7.参加者 山形県山岳連盟関係20名(山岳共済保険加入者14名)・一般参加16名
8.研修内容
 【1日目】
    12:30 受付 「天狗平ロッジ」
    13:00 開会式   
        山形県山岳連盟あいさつ  高橋副会長
        地元山岳会あいさつ    小国山岳会 井上会長
    13:15 山岳共済保険・遭難事例についての説明       菅野委員長
    13:30 積雪期に於ける登山技術
        ○雪崩発生と対策について             菅野委員長
        ○低体温症と対策について             渡部副部長
    14:30 特別講話「低体温症の整理医学的情報及び栄養なのどの課題について」
                   置賜公立長井病院 名誉院長 松橋昭夫氏
    15:30 登山用具の取り扱い等基礎研修           吉田副委員長
    16:30 簡易搬送方法について               井上副会長
    17:30 情報交換会

 【2日目】  
     8:30 実技研修(歩行技術・滑落停止・確保技術・他)  
    12:00 終了式
    12:30 解散

9.研修概要
 一般登山者を含め積雪期に於ける安全登山の知識や技術を習得する目的で小国山岳会事業である第14回春山合同技術訓練と合わせ、山形県山岳連盟指導員会の義務研修として開催したもので、今回で第15回の指導員研修会となる。
 参加者は県岳連関係20名、一般15名、計35名の参加があった。一日目は天狗平ロッジに於いて日程説明後、山岳共済保険についてパンフレットを配布し概要と特徴、遭難時の費用等について説明、その後積雪期に於ける登山技術や登山用具の使用方法、簡易搬送方法等の座学研修を行った。
 13:30から「雪崩発生と対策について」、菅野指導委員長からパワーポイントにより雪崩の種類や発生原因、雪崩に対する備え、遭遇時の対処法等についての説明を行った。これまでは自然災害との考えが多かった雪崩による事故は不可抗力ではなく、雪崩に対する知識や技術を習得することである程度予測することが可能となり、回避出来るものでありガイド登山やグループ登山に於ける事故発生時にはリーダー責任が問われることもあると報告があった。
 次に「低体温症と対策について」渡部登山部副部長(遭難対策委員長)より、低体温症の見分け方や発症要因、予防と処置等について報告され、特に埋没者の救出時や加温時に深部体温の低下によるレスキューデスも起こりうるので慎重な対応が求められるとの説明があった。
 今回は小国山岳会所属の置賜公立長井病院名誉院長の松橋医師より講話をいただき、低体温症について生理学的な面からさらに詳しく説明いただいた。また、死亡要因は窒息によるものや岩や樹木との激突等さまざまである。生存率は国毎に違っており、カナダでは15分、スイスでは18分で80%だがその後は急激に下がり、スイスでは埋没後90分で20%程度である。レスキューについて始めの18分は同行者による救助活動、90分(2時間)は組織救助を行うとの時間目標もある。国により内容が異なるのはそれぞれの地理的条件や救助体制の整備、規制や法的な面での違いにある。日本国内の調査報告は無く、今後は法的制限や応急処置、救助時の判断基準、責任の所在について検討すべきとの課題提起があった。
 初期の低体温症は疲労と判断がつけにくく、震えがないまま感覚がなくなり重度に陥ることもある。体温が35°を下回った場合は低体温症として早めの対応が必要であり、震えがある場合は保温や加温、水分補給による脱水症状の回避、高カロリーの摂取が必要である。安静にしていても体温が0.61°下がると(身体維持のための)酸素消費量は3倍必要となり、悪天候の場合は1〜2時間でも低体温になるので早めの判断と対策が必要とのことであった。
 登山用具についての基礎研修では、吉田副指導委員長より積雪期の登山で使用するピッケル・ハーネス・ロープ等の主な用具の使用方法について説明があり、カラビナを使った下降方法等について指導を行った。
 井上副会長からは、ザックと雨具を利用した搬送方法について説明があった後、各般に分かれ実技指導を受けた。
 研修後の情報交換会では参加者の自己紹介から始まり、それぞれの体験談や山への想いを語って頂き小国山岳会員の皆さんに用意して頂いた料理で遅くまで盛り上がった。
 二日目の実技研修は、当初倉手山952.4mを予定していたが、残雪が少ないので移動時間等を考慮して天狗平ロッジ近くの温身平周辺の残雪を利用しての研修に変更した。3班に分かれ雪上での歩行技術、ピッケルやアイゼンの使用方法、滑落停止等を行った。初めて参加した方もおり反復訓練に熱心に取り組んでいた
 12:00天狗平ロッジへ戻り終了式を行い12:30解散した。 

 山形県山岳連盟 指導委員長 菅野享一

菅野登山部長による全体進行
橋県岳連副会長の挨拶
井上小国山岳会会長の挨拶
吉田副委員長による研修の留意点
研修が始まりました
渡部副部長の講義
松橋Drによる講義
質疑応答も和気あいあい
井上副会長による搬送法
私達でも担げます
それでは実際に作ってみましょう
ここがポイント
階段を使って搬送
吉田副委員長から用具の取扱い
2日目の朝食 二日酔いの方はいませんでした
実技訓練の打合せ
2日目の訓練に参加される皆さん
3班 歩き方から始めます
2班
1班
ピッケルストップ(滑落停止)を重点的に実施しました
迫力のある皆さんの演技です
実技が終わり
各リーダーからの講評
参加者の感想
最後に天狗平ロッジ管理人の小関さん

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