登山者情報2,086号の2(クマの痕跡)

【2017年08月02日/焼峰山:滝谷〜加治川治水ダム/井上邦彦調査】
 登山口から約30分午前7時54分。息を切らしながら斜面を登っていると、登山道脇の茂みのなかに黒い物を見つけた。見覚えのあるブラックホールのような塊が、藪の合間から垣間見える。光を全て吸い込む暗闇の塊が僅かに動いた。登山道を7mほど登り、右脇5mほどの距離だ。小さく「カサッ」と音がした。サルでもない、カモシカでもない。間違いなくクマだ。それほど大きくはないが、さといって小さいわけでもない。
 近すぎる。歩みをとめて凝視する。クマは2度、藪を踏む微かな音を立てて右下に姿を消した。私はザックを下ろして熊スプレーを取り出す。どうやらほぼ同時にお互いの存在に気がついたようだ。驚かすのは危険だ。小さな声で「ホーイ」と呼びかけてみるが反応はない。暫く待ったがクマは下ったようだ。私は熊スプレーを握りしめたまま、声の音量を若干上げ「ホーイ」と呼びかけながらまた登り始めた。
 また下山中にキタゴヨウのクマ剥ぎを見つけた。
クマを視認した場所
クマ剥ぎ
樹液が溢れている
拡大すると、虫と一緒にクマの体毛のようなものがあった
樹種はキタゴヨウ
これは古いクマ剥ぎ

おわり