【2020年10月29日/丸森尾根捜索(文覚沢遭難)/井上邦彦調査】
08:14スマホに耳を当てると「登山カードを貸して欲しい」と小国警察署からの電話だった。最近、私への第一報は、こんな調子で始まる。08:46救助隊のLINEに「26日文覚沢に入渓、門内小屋に泊まり27日梶川尾根下山予定の登山者が帰宅していない」と掲載があり、09:55「天狗平で要救助者の車を確認」と続いた。県警ヘリも出動し、文覚沢を舐めるように捜索したが、発見に至らず。
副隊長の横山君は小国署員と文覚沢に入渓、中央班は渡部隊長、弥輔班長、三島隊員と私の4名が12:00小国署に集合し、丸森尾根に向かった。なかなかのぞける所はないが、夫婦清水を過ぎた付近から双眼鏡で沢身を捜索する。梶川尾根上部はすでに白くなっており、丸森峰付近から上の稜線は雲に覆われている。手がかじかんで双眼鏡が震える。秋の夕暮れは早い、双眼鏡が用をなさなくなってきたので、下山。駐車場で遡行班と合流する。
翌30日は悪天候の予報。それでも渡部隊長は若手の隊員を連れて梶川尾根を登って門内小屋の確認に向かった。下界で待機していると、時折叩きつけるような雨が降ってくる。捜索は難航していることだろうと思いを馳せる。
同時に吉田副隊長と清水隊員は丸森尾根を登り、途中から下って捜索する段取りだ。11:53沢班が「ザック発見」とLINEに掲載。同時に画像も掲載されたが不鮮明で確認できない。私は画像をPCに移し拡大してみたが、やはり分からない。2人は登山道から下って標高990m付近のテラスで沢を見ており、ザックは900m付近の沢にあるという。本人が使用しているカッパ・ヘルメット・ザックの色が知りたいとのことであり小国署に照会するが、知っている人がいないとのことである。
05:53門内小屋を確認して扇ノ地紙まで戻ってきた渡部班はそのまま丸森尾根に向かい、吉田班と合流するとの連絡が入る。13:25清水隊員が双眼鏡にスマホのレンズを当てて撮影した画像が私に送られてきた。何度も試しているうちに、たまたま成功したとのことである。そこには、水深20〜30cm程度の沢底にえんじ色の大きなザック、赤いヘルメットらしきもの、黄緑色が一部写っていた。これと付近の沢を写したものをそれぞれA4判に印刷し、小国署に届けた。警察のネットはセキュリテイが高いので、アナログが一番である。これを航空隊に送ってもらう。しかし出動した県警ヘリは視界が効かず発見に至らなかった。地上隊も雨が降る寸前で無事に下山した。
翌日は快晴。私達は大境山で登山道の刈り払いに従事した。その最中、08:10県警ヘリが要救助者を発見し、10:43ピックアップ成功の連絡があった。
紅葉の丸森尾根を登る |
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沢はなかなか覗けない |
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梶川峰は白くなっている |
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夫婦清水 |
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ようやく沢が見えた |
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厳しい沢である ここを単独で登っているという |
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沢の上部は丸森峰から伸びる大きな尾根で見えない |
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沢の状況 |
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捜索する渡部隊長 |
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超望遠で撮影 |
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歩いている時は良いが、じっとしていると体が震えてくる |
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日暮れが迫ってきた |
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下山とする |
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翌日の稜線 |
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門内小屋 |
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