登山者情報第2,431号

【2025年9月6日/大日杉コースのハチ処理/井上邦彦】

 今夏相次いで大日杉コースでハチ被害が発生しており、「クマ情報」の中で8月22日と24日の現地確認に基づいて注意喚起を行ってきた。しかし刺される方は後を絶たず、8月31日にはヘリコプターで救助されるという事案まで発生してしまった。
 9月4日三国小屋で切合小屋に荷上げをしている長谷川氏から「今年は大日杉コースでハチに刺されたと訴えてくる登山者が20人程度いる」と聞き、放置できないと思い飯豊山岳会の伊藤氏に連絡、急遽6日に当会の小林由佳さんと3人で現場に向かうこととなった。
 07:00過ぎに大日杉小屋で二人と合流する。伊藤氏によると今日は既に14人パーティが登っているとのこと。まもなく長井山岳会の佐藤会長も来て「今日は会の事業で一般の方と登る」とのことであった。
 自宅で渡部政信君から貰ったデータをジオグラフィカ(以下ジオ)に入力してきたので、目的地を「ロックオン」し登り始める。まもなく単独の登山者が「ハチに刺されて登るのを断念した」と降ってきた。
 ジオで目的地までの距離を確認して歩いていると、伊藤氏が目印の赤テープを発見した。ジオはロックオンした目的地と一致、プリントしてきた画像データと見比べても、この場所に間違いない。
 ザックを降ろすと数匹のハチが飛び交っている。地面に刺激を与えないようにゆっくりと歩を進め巣を探す。すると飛び交っていたのは赤トンボだった。でも油断はできない。
 数m先にある根曲がりした灌木の下に入って行く数匹のスズメバチを発見した。データによると巣の入口は2箇所だがもう1箇所は探せない。
 ザックに戻ると二人の登山者が登ってきた。その後に長井山岳会のパーティも登ってきた。両パーティ共に左側の尾根の反対側の藪を通過していただく。
 念のためカッパを着てスミチオンを取り出す。持参した移植ベラに適量のスミチオンを盛って、ゆっくりゆっくり巣に近づく。しきりに出入りするハチが途絶えた瞬間を見計らって、移植ベラのスミチオンを巣に向けて投げつける。
 数m離れてハチの行動を観察する。ハチのホバリングでスミチオンの粉が舞い上がる。いきなり巣の付近の状態が変わったのでハチ達は戸惑っている。スミチオンの特徴は遅効性だ。ハチの体に粉を付けて巣の中に運んでもらうのがこちらの作戦であるのだが、なかなか巣に入ってくれず、入口付近で飛び回っている。
 もう一度、移植ベラに盛って巣に近づく、投げつけて素早く戻ろうとした瞬間「バチッ!」と大きい音がした。すぐ後ろにいた小林さんに向かってきたスズメバチが激突したのである。音は大きかったが、ぶつかった衝撃だけで刺されたわけではなく、問題はない。
 ふたりでスズメバチに対応している間、伊藤氏は持参した手鎌で迂回路をつくり、テープで通行止めと誘導標識を掲示してくれた。ザックが引っ掛かって歩きにくいと思うが、仮設路なので、なんとか通れる程度で十分だろう。
 3人で迂回路を通って、上部から巣を観察する。やはりもう一つの穴は見つけることができなかったが、とりあえずこれで処理は終了とした。
 草刈理事長に撮影した画像を送信したところ、「オオスズメバチだと思います」との返信が御西小屋から届いた。

大日杉小屋に行くと、スズメバチの注意看板が掲示してあった

大日杉跡にも掲示
内容は8月24日に政信君が提供したデータだ

見立場まで登ると昨冬の雪崩の跡が生々しい

目印のピンクテープを確認

24日の画像と一致する

静かに進んでハチの巣を探す

スズメバチを発見
木の下にもいるのが分かるだろうか

カッパを着て巣に近づく

すばやくスミチオンを投げつける

ハチは驚いた様子

何が起きたのか
どうしたら良いのか
戸惑っているようだ

ホバーリングをすると粉が舞い上がる

2回目の投げつけ

上部から確認する

登山道を閉鎖
ビニール袋は撮影後に撤去しています

左から登るように掲示

上から下る場所も登山道を閉鎖して掲示しました

下山の途中、大日杉小屋近くのスギ林には多数のクマ剥ぎがあった
ここも登山者からクマ目撃情報が多く届く所である

 大日杉小屋
今年は登山届記載所が小屋のピロティに設置されている

おわり