登山者情報285号

【梶川尾根〜ダイグラ尾根/1997年06月07〜08日/井上邦彦調査】

国道113号沿線ではニセアカシヤが咲き始めた。これが咲くと小国は梅雨の季節を迎える。
トイタ付近を歩いている登山者に声をかけたところ、御西の会の島倉さんであった。温身平から倉手山に登るのだと言う、天狗平まで私の車に乗っていただく。
天狗平の上の駐車場は満車、下の駐車場で荷物を整理し、さあ出発しようとして隣の車の人と顔を合わせると小荒井実さんであった。前回山行記録に西の峰でコメツガを確認したと掲載したが、お子さんのパソコンでこれを見たとのこと、コメツガの分布の話を伺う。梅花皮小屋での再会を約し、07:26 タニウツギが満開の天狗平を出発。
湯沢を渡り、標柱から右手の梶川尾根に取り付く。斜上し、ごく簡単な岩場を登り、450m登山道左手の大きなナラの樹で、尾根上に出る。足下に飯豊山荘の屋根を見ながら、松の根に触れるような急登である。
490m水準点で傾斜が一段落したかと思った瞬間に、目の前に一枚岩が現れる。ロープが下がっているが、岩の部分は傾斜が緩いので軽くロープや岩に手を添えて登る。ガクウラジロヨウラクが咲いている。
07:34、560m傾斜が落ち、山開きの時に最初に休む所だ。見上げるとこれから登る急な松尾根が覆い被さってくる。湯沢を隔てて丸森尾根の急峻な登山道が確認できる。左下には、はなれ山の周囲に温身平のブナ林が広がっている。ナナカマドが咲いている。
私にとって梶川尾根は基準コースである。しかし正直なところ、この尾根より急な尾根にはそうそうはぶつからない。
文覚沢の大滝が見えている、雪渓は滝をかすめて上に続いている。文覚沢の雪渓を走り流れる松尾根越の風が爽やかだ。真夏にこの時刻に登れば、暑さにシャツが絞れるのだが、今日はちょうどいい加減である。
ヤマツツジが咲いている。アズマシャクナゲの新芽が、白い粉をふいて垂直に立ち上がっている。
この急登はともすると足下ばかりに目が行って、周りを見渡す余裕がない。足下にサラサドウダンの花びらと木屑が散乱していた。顔を上げると花はすでに終わっていた。ブナの枯れ木に最近ケラがつついたらしく長さ20cm幅10cm程度の穴が開いていた。
07:53両手で体を持ち上げるようにして尾根分岐に出る。7000m左手にナラの木が数本立っている、いつもの休み場である。真下に飯豊山荘と下の駐車場が見える。かなり登山者が集まっているようだ。08:01発。ここで松尾根は終わり、ブナとナラが出て。この先は若干傾斜が落ちる。
730m途中から幹折れし樹皮の禿げたモニュメントのような太いナラが歓迎してくれる。そばかすをつけた赤ら顔のヤマツツジが登山道の両側から、息の乱れがちな登高を励ましてくれる。
しだいに樹が太くなる。
790m尾根は一段と傾斜を落とす。尾根の右手はまだ雪が消えて間もない様子。ナラとヒメコマツが時折混じる遊歩道といった感じだ。粘土状の土に、ブナの根が血管のように張り巡らされ、砂防ダムのような根に葉脈の浮き上がったブナの枯れ葉が積もっている。登山道両側の黒土の厚さは僅か数cmに過ぎず、山の険しさを語っている。ブナの枯れ葉だけがやけに目立つ、ムシカリやマルバマンサクの枯れ葉が見あたらない、ブナの葉はなかなか腐りにくいのである。
06:14、840m僅かに降る。この付近のヤマツツジの色は、真紅である。窪地には石が、飛び石のように並べられている。舟窪状の登山道には僅かに雪が残っていた。山形国体時にカットした倒木が朽ちてきてい、時の流れを痛感する。窪地を過ぎると、また登りが始まる。
08:18810mとても素敵なブナとナラの林に出会う。僅かに雪が残り、初夏の濃い緑に包まれ、小鳥が腕のようにさしのべたブナの、枝から枝へと飛び移る。
08:21もったいない、ここで一息つける事にしよう、今日は急ぐことはないのだ。885mである。左手には明日下山予定のダイグラ尾根下部が見えている。
御池の平の下から千本が見えている。宝珠山は雲に隠れている。このあたりのブナの枝の傾きを見ると、みな斜面の下の方へ出ている。光や風に対応した樹形なのだろう。ホウの大きな葉の塊がアクセントとなっている。900mである。08:31発。ウゴツクバネウツギが咲いている。
915mから急登になる。ブナの林は続いている。一足一足高度が、ぐいぐいと持ち上がっていくのが楽しい。ブナの倒木に着いている白いキクラゲのようなキノコは、ハナビラニカワタケだろうか。チュイチュイチュイという小鳥の鳴き声。ボウボウという山鳩、ケラのドラミング、ブナの森の演奏会が始まった。
赤茶けた脆い岩の露出した急登を抜け出すと、梢の間から飯豊連峰の主稜線が見える筈なのだが、今日はガスに覆われている。
970m08:31、湯沢峰の一角に躍り出た。足下にオオイワカガミが咲いている。右手の舟窪地形には残雪が残り、タムシバが咲いている。カエデの目立たない緑色の花、ムラサキヤシオの愛くるしい角の取れたピンクの星、扇を静かに広げ始めているのはマルバマンサクである。
08:41995m湯沢峰の分岐である。平田さんの報告のとおり、菱形の標識が着いていたブナの木が倒れていた。標識は下敷きになり見えない。緩い下りとなる。かつてこの分岐には右側の源泉に降る登山道があった。今登ってきた道は新道なのである。
私が登山を始めた頃は、まだ源泉に湯が沢に流れ落ちていた。私達は湯沢に臨時の温泉を作って楽しみ、次の日に今の廃道を登ったものである。今は全て集められ、梅花皮荘・川入荘・飯豊山荘・天狗平ロッジに引湯しており、昔話となった。風が吹いたのだろうか、まだ青いカエデの葉が松の枯れ葉の上に敷かれている。緩やかな登山道には、ブナの実が水たまりの波紋に沿って取り残されていた。左の視界がどんどんと開けていく。ヒメコマツの枝とナナカマドの花が日傘のように私を覆っている。
08:47、1020mのピークに着く。いつもならここから石転ビ沢と梅花皮小屋が見える筈なのであるが、今日の稜線は雲に隠れている。赤禿から滝見場と巻いて右手の梶川峰へと登山道は駆け登っている。天狗平からここまでの歩数は4,128歩である。此の尾根の唯一の下りは、やや掘れた道、まるで森の中へ落ちていくようだ。シラネアオイ・タムシバ・ムシカリ・マンサクが咲いていた。
最低鞍部の湿地に置かれた枝の上を、靴を汚さぬよう注意して渡る。鞍部右手、門のような太い2本のブナの間に、踏み跡がある。僅かに進むと若干下って湿地があるが、水場としては当てにならない。鞍部から尾根を右に巻くようにブナ林の中を斜上する。微かに赤みを差したカリフラワーに似た小さな目立たない花が、鳥の羽を刺した髪飾りのように柔らかに立ち上がった新芽と、光沢を持つ旧葉の間に咲いているのはエゾユズリハである。チゴユリも咲いている。
8:59小ピークを巻き終える。ずっとブナの林である。左手に残雪が出てきた。カッコウも音楽会に参加してきた。僅かに上下しつつ尾根道を辿ると、09:02小さな鞍部にはまだ雪がたっぷりと残っていた。カタクリが登山道の両側に咲き競い、キュルルルル・チュチチュチと鳥が鳴く、ここばかりは春の雪解の世界だ。
浸食された登山道の底には、空気を包み込むように丸まったブナの葉がふんわりと積もっている。ズックの底を通して、柔らかさが伝わってくる。ブナの幹にはたらこのような巨大ナメクジがのったりとしている。この区間は急な登りではないのだが、結構かったるい。尾根上なのでブナやナラは背を低くし、ダケカンバのような樹形をしているものもある。今日は気ままな一人旅である、写真を撮りながらのんびりと構える。
コヨウラクツツジ・ガクウラジロヨウラク・オオイワカガミ・ウゴツクバネウツギ・ムラサキヤシオ・ヤマツツジ・ムシカリ・カタクリが咲いている。
やがて緩い登りの灌木のトンネルの先に、空が見えてきて、09:17トンネルを抜け出た三叉路に「滝見場」の標柱が立っている。まだ雪が僅かに残り、イワウチワ・タケシマラン・マルバマンサクが咲いていた。左手の道を僅かに進むと、梅花皮大滝と先日登った西の峰が見えている。石転び沢はホン石転ビ沢出合から上がガスっている。登山者が12名、蟻のように登っている。標高1,040m、ここまで5,769歩である。
09:25発。すぐまた雪が残っている、マンサクが盛りである。細長く残る雪を過ぎると、登りになる。雪の上には丸くて愛くるしいウサギの糞が転がっている。シラネアオイ・カタクリが咲いている。
09:30、1,170m湿地を避けて新ルートに切り替えた場所は、一面雪に覆われていた。09:32〜43、空気に水分の香りがする、ズックが汚れてから雨の中でザックを開くのがいやなのでここでプラブーに履き替えることとする。ショウジョウバカマ・キクザキイチリンソウが咲いている。滑落停止の練習にちょうど良いような所だ。面倒なので雪の上(旧道)を直登する。慣れない人はルートを失う可能性があるので、尾根を忠実に辿る夏道が良い。僅かに夏道に出てすぐ雪の上となる。ピッケルを出しキックステップで1,255mまで登る。左の尾根上には夏道が露出している。1,260mで左の夏道に入り、スミレ?・ミヤマカタバミが咲き鶯が啼いている。1,290mで10m程の雪、五郎清水手前の急登にはいつも息が切れる。登山道脇の雪の上で滑落したら重大事故になる、下山時は充分に注意したい。
ダケカンバが混じってくる。サンカヨウ・オオバキスミレ・キクザキイチリンソウ・カタクリ・シラネアオイが咲いている。所々深く流水により浸食された登山道である。
1,355mから再び雪の上となり、10:097,204歩、五郎清水の分岐となる。標柱は雪に埋もれて見えない。上から降りてくると、雪の小広場に出る、そのまま尾根の左に夏道が出ているが、これは水場への降り口であり、登山道は右に折れるように雪の上を降りて右の夏道に出る。水場は雪に埋もれており使えない。食事をしていると高貝算から無線が入ってきた。現在梶川出合とのことである。深く浸食された登山道の両側はチシマザサとなる。所々両手を使いながら登る。1,460m10:38また50m区間雪である。1,500m夏道となる。昨年の山開きでロープを出したところだ。梅花皮大滝が見える。カタクリに励まされ急な登りが続く。1,520m土のように風化した岩を斜めに登る。ノウゴウイチゴ、壺のような独特の形をしたウスバサイシン、タケシマラン・ショウジョウバカマ・イワナシ・オオイワカガミ・ヤマツツジ・エチゴキジムシロにお尻を押してもらい、10:511540mようやくダケカンバ群集にたどり着く。8,172歩、ここは石転び沢を始めとする展望がよく、休むのに適しているのだが、今日は残念ながら雲の中である。ダケカンバの枝に若葉が萌え始めている。微かに赤みを帯びた白い幹肌、厳しい風雪に 耐え抜いているうねうねとした樹形。飯豊には、黒みを帯びたシラカンバよりもダケカンバがはるかに相応しい。1,600m8,600歩11:02雪になる、トットビ沢の源頭である。この上はべっとりと雪が付いている。下降時のルート選択に注意したい。雪が少なくなるとお花畑になり、状況によっては融雪水も取れるところだ。1,660m夏道になる。登る時は忠実に尾根を詰めればチシマザサの中の掘れた夏道となる。
ミヤマカタバミ・ミツバオウレンの中に紅色のイワカガミが混じっている。
1,700m9,268歩、傾斜が緩くなりシラネアオイ、登山道の2m脇の笹藪の中に三角点がある。
11:231,720m9,416歩、こんもりとしたピークに「梶川峰」標柱が立っている。ここからは素敵な稜線漫歩である。風が出てきた。霧に濡れたミネザクラの咲く中、、左手に湿地がある。ヒキガエル?が重なり合って腹に響く声で鳴いている。11:35ケルンに着く、ハクサンイチゲが満開である。1,795m雪が出てくる。GZKと無線交信。1,820m夏道となる。枯れた草原に赤くて太い茎のバイカオウレン・ショウジョウバカマ・イワナシが咲いている。平坦地を進み、尾根を越えて右側を行くとまた草原となる。11:56、1,865m雪が出てくる。1,870m尾根全体が雪に覆われる。漠然とした尾根筋を辿る、下降時は要注意だ。12:03目の前に2mの土手が出てくる、稜線である。踏み跡を登ると、12:04、12,154歩、1,900m土手の上に「扇ノ地紙」標柱が立っている。旧道の分岐の広場は雪に覆われている。
標識から稜線を忠実に辿ることとする。ハイマツとチシマザサの稜線である。小荒井実さんによれば、タケノコの出る太い竹と稜線の細い笹は同じものだという、ちょっと信じられないような話である。まもなく左から来る旧道と合わさる。足下からイワヒバリが飛び立つ。こんもりとしたピークに「胎内山1,890m」石柱が立っている。小時計は1、920mを指している、訂正。花はミネザクラが綻んだ程度。1,885m12:1513,092歩、小ピークの右手に小さな遭難慰霊碑が置かれているs63年11月06日に門内小屋を目の前にして亡くなったものである。下り始めると、登山道の脇にハクサンイチゲとミヤマキンバイが咲き始めていた。さらに下ると左手はチシマザサに覆われた舟窪地形である。下りきった鞍部の左手には小さな池がある。以前の門内池は干上がってキャンプサイトになっている。これは人工的に作ったものである。
門内小屋で新潟の羽田さんにワインとコーヒーをご馳走になり、13:05出発。僅かに登るとY字路、左は巻き道である。右を登るとヒメイチゲ・ミネザクラの中、13:06門内岳着。山頂には石柱と2m程の神社と鳥居がある。右に下る胎内尾根は、古い木柱で通行止めになっており、踏み跡も随分と細くなってきた。
下り始めてすぐ左から巻き道を合わせる。草原のお花畑はハクサンイチゲがほのかに咲いたかなといったところだ。下っていくと笹が登山道を覆い始めている。13:25登りにさしかかる。登山道は全て新潟県側であり、素敵なお花畑コースなのだがまだ時期が早い。1,940m左に舟窪地形を登り終えた途端、右手のハイマツの中の新道を登る。旧道は道が崩壊しているので入らないこと。
ハイマツの上に鳥居が見えてくると、まもなく北股岳山頂である。17,378歩、大きな鳥居と2本の木柱が立っている。小さな祠は壊れていたので組立てる。右手にオーインノ逆峰を分ける。無線を開けるとODDから、石転び沢で滑落事故発生の連絡が入る。ピッケルを出し雪の斜面をキックステップで下り、14:08、18,229歩、梅花皮小屋に到着。高貝さんが下山の準備をしていた。
高貝さんが登ってくる途中、数件の滑落があり、うち1名が顔面を負傷しているとのこと、一応安全なところまでは降ろし、後は自力で下山しているとのこと。心配なのでこれから下山するという高貝さんと別れ、小屋に入る。気温5度。
16:00が過ぎ、程良くアルコールも回ってきたが、小屋に向かっている筈の集団が到着しない。心配になり、ピッケルとヘッドライトを持ち、石転び沢をグリセードでくだる、視界は殆どない。大声を張り上げても反応がない。やがて左手から微かな声が聞こえる。北股沢に向かって大きくトラバースしていくと、北股岳に直登する尾根を登っている20数名を発見、一緒に小屋まで戻る。

8日04:46梅花皮小屋発、快晴である。ハタザオ・ヒメイチゲが咲いている。ウスユキソウは芽生えたばかりである。05:10〜14梅花皮岳、遠く磐梯山が見えた。小荒井さんが同行者に絞りのポイントを教えている。下り始めるとすぐ雪の上。尾根を越え、夏道を下り、鞍部にある与四太郎の池の分岐を過ぎ、05:29〜33烏帽子岳着。
雪道を下り、夏道をトラバースし、クサイグラ尾根に上がるとまた雪道になる。稜線を越えてカブト池に向かう踏み跡がでているので注意する。夏道に上がり小ピークを越え、花の咲かないお花畑を下り、笹原を下った鞍部から雪道となる。05:50亮平の池は殆ど雪に埋まっている。
御手洗ノ池手前のカールで雪は一旦途切れる。岩場を登り、水路状の雪道から池に出る。御手洗ノ池は舟窪地形にできた池であり、水面は殆ど出ていない。標識も埋もれている。
さらに進むと尾根の分岐付近の雪が一部途切れかかっている、まもなく下の笹藪の夏道となるだろう。天狗ノ庭手前の雪は荒れており、バランスに気を付ける。06:28〜38天狗ノ庭着。
ここまで花はショウジョウバカマのみ。細長い沢状の雪を登った所にある池は僅かに縁が出ている程度。朝日連峰が雲海の中から顔を出した。本山小屋の屋根が光っている。雪道のまま天狗岳を越える。鞍部の雪は細くなっている。直前まで雪を登り、07:16〜32御西小屋。07:32道標「御西」、静まり返った草原に咲いているのはバイカオウレンだけ、大日岳の中腹をゆっくりと絹のような雲が流れている。
緩く下ると雪の上になる、御鏡雪である。GZKと交信する。夏道となると草月平である。雪道となり、わずかに夏道となり雪道である。
玄山道分岐の標柱は頭だけが出ていた。笹藪から夏道となる。08:15〜45駒形山でのんびりと食事を取る。飯豊山三角点で峡彩山岳会の小山・本望さんと会いしばし歓談。
彼らは弥平四郎から登ってきたとのこと。疣岩山直下に雪、七森にも雪が点在、種蒔山から切合の間に雪、草履塚の登りに雪、他は全て夏道とのことであった。
09:13ダイグラ尾根の下降開始。コメバツガザクラが盛り、ミネズオウ・ウラシマツツジ・ヒメイチゲが咲き、ミヤマキンバイは数輪。鞍部手前で雪の上になる。
シラネアオイが盛り、ショウジョウバカマ・カタクリ・ミネザクラ・オオバキスミレも咲いている。ピークを越え北側になると雪庇が登山道を覆う。ダケカンバが出てくる、幻想的な雰囲気だ。チゴユリが咲いている。岩峰手前残るにも雪庇。10:13〜22岩峰、ここから見る稜線は雪で覆われている。コメバツガザクラ・ミツバオウレンが咲いている。
グリセードで降り、宝珠山のトラバース部分だけが夏道で、すぐ雪となる。1,680m、10:32肩にある「宝珠山」標柱は露出していたがそのまま雪の上を降る。尾根分岐部分は夏道だが、外は全て雪の上である。1,610mではそのまま雪を降りたくなるので注意、夏道を確認しながら降る。
ODDから無線が入る。またもや石転ビ沢で滑落事故が発生。ピッケルを胸に刺したとのこと。GPN・GZKと状況を確認し、プラブーをズックに履き替えて、11:00下山開始。次々に雪庇が出てくる。ズックでは危ないトラバースが連続する。カッテングで足場を作るものの何回か尻餅をつく。
カタクリ・シラネアオイ・オオサクラソウ・ツバメオモト・ムラサキヤシオ・オオイワカガミ等が咲いている。11:25千本峰塚後も雪庇は残っている。ひたすら降る、記録は一切取る余裕がない。
13:00温身平通過、石転ビノ出合でヘリポートを確認。さらに降りてくる救助隊と合流、山形県警航空隊の月山により救出に成功した。
梅花皮小屋と北股沢の間で、遭難者を発見しアマチュア無線で通報。ヘリコプターに収容するまで付き合ってくれたエーデルワイス山の会の小荒井実さんと橋谷田明さんに心からお礼を申し上げます。