登山者情報291号

【石転び沢〜ダイグラ尾根/1997年06月14〜16日/日向俊雄調査】
先日(6/3)残雪状況についてE-mailで問い合わせをした、東京都世田谷区の日向(ひなた)です。予定通り6月14日から16日の3日間、2泊3日で飯豊山荘−丸森尾根−頼母木小屋(泊)−北股岳−御西小屋(泊)−飯豊本山−ダイグラ尾根−飯豊山荘の回遊コースを縦走し無事戻って来ました。事故にも遭遇しましたので一通り報告させていただきます。

[ダイグラ尾根・宝珠山近辺での滑落事故]
6月16日(月)の朝8時頃、ダイグラ尾根下降中の3人パーティーの内1名が宝珠山を越えた最初の雪堤で、大又沢側の約40度の雪渓斜面をトラバース中に40m程滑落しました。幸いにも最大傾斜方向にブッシュ帯が斜めに伸びていたため浅いシュルンドと灌木の間で自然停止したようです。大きな怪我もなく(額と左上腕部を擦傷して出血)、残り2名と私(日向)の計3名でサポートして本人は自力で夏道の出ている場所まで戻りました。その夏道部分は丁度指導標の柱が立っている所だったので井上さんはどこだかおわかりになると思います。そこから先はパーティーの残り2人にまかせて私は単独で先行して下山してしまったので、最終的に彼らが何時に下山したかは不明です。飯豊山荘のご主人には事の顛末を報告しておきました。事故現場の後も何カ所か恐い所がありましたが、ピッケルとアイゼンを装備していたので慎重に通過すれば問題はなかったはずです。

[残雪による不明瞭な地点と危険個所]
これは事前に井上さんより注意を受けた通りでした。丸森尾根は丸森峰の上部で文覚沢側の雪田(雪渓)上を歩くのでガスると道がわかりにくい。烏帽子岳から御西小屋までは、ほとんど桧山沢側の雪堤上にルートがとられているが、見通しが良い状態でも所々雪が切れて夏道や熊笹帯を通過する場合にはどこにルートがあるのか大分迷いました。以上の2地点は危険性という点ではまだ安全ですが、ダイグラ尾根の下降中に現れる雪堤(雪渓)部分は誤ってスリップすると急傾斜なためかなり危険だと思いました。雪堤のブロックが二重三重になっている所が多かったので助かりましたが、事故のあった所(ブッシュ沿いに歩けば安全だった)や千本峰の手前2か所は恐ろしかったです。後者では6本爪アイゼンを着用しました。全般的に勝手な要望を言わせていただければ、日々雪の状態が変化して難しいとは思いますが、烏帽子・天狗岳間などは雪の部分と夏道の部分の入口・出口のそれぞれに赤布の竹竿が目印にあったらガスっても安全に歩けると思いました。今回も視界が効かなかったら、諦めて戻るかやぶ漕ぎをするかのどちらかだったと想像します。

[高山植物]
ホームページ内の他の報告にもあるので繰り返しませんが、私個人にとっては今までで最高の内容でした。春から初夏の有名な高山植物のオンパレードといった感じでした。ヒメサユリもダイグラ尾根の休場の峰の下では開花していました。

[行動記録]
6月14日(土)飯豊山荘6:00−地神北峰10:30−頼母木小屋11:30(杁差岳ピストン12:20〜15:15)
6月15日(日)頼母木小屋5:00−梅花皮小屋8:30−御西小屋12:30(大日岳ピストン
13:00〜15:10)
6月16日(月)御西小屋5:00−飯豊本山6:00(飯豊神社往復6:00〜6:40)−宝珠山7:40−遭難救助(8:00〜9:15)−千本峰10:20−桧山沢吊橋12:50−飯豊山荘13:30
第289号の緊急警告にも書かれているとおり、ピッケルとアイゼンは必携で、かつ正しい操作を習得されている必要があると痛感しました。今回遭遇した事故でもピッケルは滑落中に手から離れて途中の雪面に刺さっていましたし、頼母木小屋で一緒になった75才の人は石転び雪渓最上部で4本爪が効かなくて70m〜80mズルズルと滑落して中の島でやっと止まったと話していました。今回は天気に恵まれ、また当ホームページにより事前に十分な情報と注意を得られたので無事戻って来られたと感謝する次第です。またいつかこの時期に、あるいは別の季節に訪れたいと思います。本当にありがとうございました。