登山者情報363号


【1998年07月25〜28日/胎内尾根/片岡聡】

7月25日
この日新潟は今年最高の猛暑だそうだ。羽越本線中条駅からタクシーをとばし、午後1時胎
内ヒュッテ到着、すぐにのぼり始める、ボランティアで道刈りをしている新潟市の方にお会
いした。郷倉山の登りはじめまで道をかったとのこと。ありがたく利用させていただいた。
郷倉山の登り初めで突然道がきれ、本格的な藪こぎがはじまる。ここまでは基本的に、素敵
なブナ林で猛暑にもかかわらず楽しく登ることができた。少し藪をこいたところで、ビバー
ク。
7月26日
郷倉山めざして、出発。胸くらいの木やぶをこいで山頂へ。ここからは、背丈を没するとこ
ろもあり、常に地図、コンパスを確認しながら、ルーファイする技術が必要。体力任せに藪
をこぐよりも、旧ルートを注意深くたどって行く方が、消耗が少なくてすむ。それでも尾根
の広いところや、流水溝かルートか判然としないところは、ルーファイが面倒なので、地図、
コンパス、体力、動物的な感をたよりに背丈を没する藪を強行突破。あまりの藪の深さと暑
さに体力を消耗し、午後は藪の中の風道で昼寝。夕方、涼しくなると元気を回復し、ヘッド
ランプを付けて一の峰への藪をこぐ。このあたりになるとだいぶ要領がよくなり、ヘッドラ
ンプで藪こぎができるようになっていた。午後8時すぎ一つ峰到着。ここでビバーク。私と
空の間には何もない、夜、風の音で目をさます毎に星座の位置が変わるのがわかり、感動的
だ。夏の大三角形と天の川が陶酔するほど美しい。西に目をやれば、日本海の漁船の漁り火
と、新潟市の明かり、粟島灯台が間近にみえる。至福のビバークであった。胎内尾根は池の
平峰から門内まで海がきれいにみえる素敵な尾根だ。
7月27日
一の峰と二つ峰の間は、確か、北側の崩壊地よりにルートがあった記憶があるが、藪にかく
れて危ないので、尾根の真ん中の深い木藪を強行突破。途中でルートにぶつかりそれからは、
少し楽になる。やはり崩壊地側からルートは来ていた。おそらく崩壊地側のルートが完全に
藪に覆われたか、崩れたのだろう。二つ峰の狭い頂上からの眺望は本当にすばらしい。すぐ
下にある草原のお花畑、間近な飯豊の稜線と日本海。この日は直下の草原で一日ゆっくり休
むことにして、はやばやと、藤七の池の近くにテントをはった。ここは天上の楽園のような
場所である。
7月28日
これまでの反省から、ルーファイをきちんとやり、できるだけ藪の強行突破をさけることに
した。2.5万図で二つ峰下の平原から、稜線の小鞍部に道が戻っているが、稜線への登り
口が非常にわかりにくかった。少し入り口の笹をかっておいたが、すぐに戻ってしまうだろ
う。すぐとなりに流水溝みたいなものがあって道と紛らわしいので注意が必要だ。この旧道
をはずさないように、注意していくと比較的楽に門内まで行ける。私たちは、藤七の池から
門内まで、実質2時間40分で、踏破した。このあたりは眺望も効くし、上に行くに従い、
笹も低くなっているので、いままでの木藪よりは楽だった。門内からは丸森尾根を経て飯豊
山荘へ下山。
実は今回3人で行く予定だったが、気象予報士の資格を持った一人が腰痛のため、2人での
山行になった。彼には遭難時連絡人になってもらい、尾根上から携帯電話で我々の行動を連
絡することができた。彼によれば、今年は、1982年長崎豪雨、1983年山陰豪雨の年
に天気図パターンが酷似しているそうで、心配したが、胎内尾根にいる間は雨に遭わず本当
に幸いだった。
片岡 skataoka@h.u-tokyo.ac.jp