登山者情報381号

【1998年11月03日/赤津山/吉田明弘調査】

赤津山は、山渓の日本の山1000に、以下のように紹介されています。 「飯豊連峰の主稜にある門内岳から西に派生する尾根が、長々と二王子岳まで続いて いるが、その中ほどに悠然と隆起している赤津山は、登山者から「明かずの山」と感 嘆調で呼ばれているようにガイドブッにも載らず、登山道が四通八達している飯豊の 山域で、いまだに道のない山として孤高を誇っている。」しかし、昨年秋二王子に登ったとき、山頂で会った人から、飯豊川の支流四郎左エ門沢と赤津沢の間の尾根に登山道があると聞き、その時早速その場所へ下見に出かけた。確かにそこには踏み跡がぶな林の中に伸びており、ぶなの木に赤ペンキでマーキングがしてあった。その後すぐ雪の季節になってしまって登る機会を失ったので、今年は是非登ろうと機会を伺っていたのである。そして、8月に一旦登ったが、体調が悪く途中で引き返してきており、それ以来私の宿題の山になっていた。
メンバー 岡本さん、鈴木眞さん、川田さん(栃木)、玉木さん(鈴木さんの友人)、吉田
コースタイム 6:03登山口発〜7:29 941mピーク着7:33発〜8:57西ノ峰着9:03発〜10:08赤津山山頂着11:18発〜12:25西ノ峰着12:33発〜13:35 941mピーク着13:40発〜14:53登山口着
6時に四郎左エ門沢先の登山口に集合という事だったが、早めに出かけ5時頃林道入り口の加治川治水ダムに着いたらすでに岡本さんと川田さんが来ていた、しばらく待つと鈴木さんと玉木さんも到着した。雨が時折強く降る空模様だった。大雨の場合別の山とも考えていたが、天気予報では雨は明け方までと言う予報、とりあえず登山口の四郎左エ門沢の先まで移動した。登山口に着く頃雨は上がり出した。雨具を着ようとも思ったが着ないで出発。登山道は国有林の看板の右にぶな林の中に伸びている踏み跡が有りそれが登山道である。よく見ると入り口のぶなの木に赤いマークがしてある。ぶな林の中に入っていった。道は不明瞭だったが、ぶなの木に赤ペンキでマークがしてありそれを頼りに進んでいった。
いきなり急登が始まった。整備された登山道ではないのでステップが切ってあるわけではなく、足を地面につけるたびにふくらはぎが伸びる。私はこの時、登山靴の底が擦り減っていたので滑らないように長靴で登っていた。尾根に取り付いても先端部分は急登が続いた。しかし、道はしっかり明瞭になった。急登が終わった所でとりあえず一息つく、みんなの顔は早くも辛そうだ。息を整えて出発。小さなアップダウンがあるやせた尾根が続いていた。最近刈り払われた跡が有った。おかげで薮こぎを覚悟していたが、その必要はなかった。雨は上がったが雲が低く垂れ込めていて、周辺の山の姿は見る事は出来ない。何度も小休止しながら登っていった。鈴木さんは相変わらずキノコとりをしながらの登山だ。私はそのキノコをあてにしてきて、昼のおかずは持ってきていない。941mピークを越すと右手にガスの切れ間から時折赤津山の山頂が見え始めた。そして、尾根は広くなり、とても滑りやすい急登が始まった。木に捉まりながらでないととても登れない、幸い越後の山の木は雪の重みで横に向かって伸びている。おかげで捉まりやすかった。1210mピークで、焼峰からの尾根と合流した。左 手に踏み跡が伸びていたが20歩ほどで消えていた。西ノ峰で尾根は東に直角に曲がる。国土地理院の25000図には西から点線がこの西ノ峰まで伸びているが、この道はまるで無い。道の刈り払いもどうやらここまでのようで、ここから先はリョウブや笹、ネマガリダケなどの混ざった薮道が始まった。しかし、踏み跡は明瞭で迷うような所はない。天気が良ければ飯豊の山々を眺めながらの稜線歩きとなる所であろうが、周囲はガスのため視界がきかない。時折眼下の赤津沢が見えるのみであった。大きなアップダウンを繰り返し、岩稜も越え、山頂手前の三本槍はガスがかかっているためそれと分からずに通り過ぎてしまった。山頂手前のピークに雨量観測小屋と遭難碑があった。そして、10時8分。三角点のある山頂に着いた。
周囲は相変わらずガスがかかって何も見えない。記念写真を撮って、雨量観測小屋のピークに引き返しそこで昼食とした。鈴木さんがとったキノコをコッヘルに入れ煮込む、だし入り味噌で味をつけて現地調達のキノコ汁の出来上がり。寒かったのでとても体が温まった。静かな山頂を想像していたが、後から20人近くもの人が登ってきた。ガイドにも載っていない山なのにここまで人が登るとは。休憩しているうちに少しずつガスが晴れてきたが、飯豊の景色は相変わらず雲の中。残念だったたが宿題の山に登れたことに満足だった。下山は往路を引き返した。西ノ峰からの下りはとても滑りやすく何度も尻餅をついた。振り返ると赤津山とそこから左にある三本槍が堂々とした姿を見せていた。途中のぶな林の紅葉は終わっていたが、ぶなの林はとても気持ちが良い。ズボンが泥だらけになって、14時53分。やっと登山口の林道についた。林道で支度をしていると、湯の平温泉からの帰りの車が頻繁に通ったが、我々の姿と周辺の沢山の車を見てここは何が有るのだろうという顔で皆通りすぎていく。中には止まって我々に聞く人もいた。この日は沢山の人がこの山に登っていたが、まだまだ知らない 人が多い山なのである。