登山者情報397号

【1999年05月16日/大日杉〜飯豊山/井上邦彦調査】

05:10自宅発、途中山菜採り検問が2度。一度は遭難防止キャンペーン、もう一度は入山券の販売である。下山後、飯豊町と小国町で一件づつ遭難騒ぎがあったと聞いた。ともあれ「登山です」と告げて通過。
06:10大日杉小屋到着。山の中腹が雲の切れ間から部分的に除ける程度。06:24小屋の登山者カードを記入して出発。エンレイソウ・スミレサイシンが咲いている。写真撮影の方を追い越し、06:41〜45 ザンゲ坂を登りきる。付近はむせ返る新緑に包まれている。タムシバ・ムラサキヤシオ・ムシカリ・カタクリ・イワナシが咲いている。
07:01 長之助清水で山菜採りの3人と会う。「飯豊山まではここで半分くらいですか?」と尋ねられ、「10分の1くらいじゃないですか」と答えたら驚かれた。07:06御田通過、池を中心に雪がある。1,130mより時折雪が出てくる。マンサク・カタクリ・タムシバ・イワウチワ・ショウジョウバカマが咲いている。この辺りがブナの色づきの上限である。07:31〜39、1,240m、本格的な雪道となり小雨も降ってきたので、スパッツを着けカッパを着る。07:56滝切合通過、リッジ状の雪道を通り、斜面を軽くキックしながら登る。
08:13〜22、地蔵岳山頂で食事。分岐の標柱は頭を出している。軽登山靴が濡れ始めてきた。ここから地蔵清水を経ての下りはかなり迷いやすい。僅かに出ている夏道を見つけてほっとする。下りきると夏道と雪道が交互に出てくる。登山道はカタクリで埋められている。オオバキスミレが咲き始めたところもある。マンサクが咲いている。だんだんと雪道の割合が多くなる。08:51目洗清水は広い雪原となっている。すぐ先にもやや小ぶりの雪原がある。広々とした雪道を延々と進み、少しの藪を分けて夏道に入ると、庭園のような刈り込みとダケカンバが続く。09:23御坪の祠を通過。軽登山靴が靴下までぐっしょりと濡れてきた。
09:29御沢分かれの標柱で夏道が出ているので御沢までは分かりやすい。御沢の雪は前回とは異なり堅くなっている。空腹のため速度が落ち、黙々と歩く。ピッケルを抜いて最後の詰めに取りかかる。結構な急斜面である。もう少し下部から取りつけば良かったかなと悔やみつつ、最後はカッティングで足場を切る。素手なので冷たいし、足はじんじんとしてくる。10:04〜30、切合小屋に到着するとアラレが降ってきた。小屋の前の雪はきれいに解けてなくなっていた。比較的明るい2階に上がり食事とする。足の冷たさに堪らず、すぐ濡れるとは分かっているのだが靴下を絞る。
小屋から去れ机上の夏道を辿り、登りにかかる所で雪道となる。視界なく何処まで行っても次々に登りが出てくる、。方向感覚が狂ってくるが、とにかく高みへと登り詰めると、笹原に掘れた夏道があり、10:58草履塚の標柱に着く。ここからは全て(数mの1個所をのぞき)夏道である。姥権現に会釈をし、御秘所の岩場を過ぎ、11:25〜28、御前坂の標柱で休憩。登りにかかると、ミヤマキンバイが綻びかけていた。大朝日岳の登りと同様じぐざぐに登る。11:52一ノ王子の標柱通過。何時の間にか水場分岐の標柱が立派になっていた。

コメバツガザクラが咲いていた


11:58本山小屋に到着。正面入口前には大きな雪の山が残っていた。管理人室の扉が壊されていたのが内扉は鍵がかかっている。覗くと荒れている様子はない。正面扉と玄関前の雪塊の間に身体を滑りこませ、戸を引くとなんとか開いた。風除室にも雪がいっぱいになっていたが、コンパネを傾けて中に入る。1階は部屋の半分程度に雪が積もり、天井から水が滴り落ちていた。梯子を上って2階は、北西側の天井から空が見え雪が堆積していた。南西側の天井も破損しているが、こちらは規模が小さく雪はなかった。2階で靴下を脱ぎ大休止。ラーメンを煮て缶ビールで一人乾杯。

本山小屋正面入口
壊れた屋根

破損した内部


13:58本山小屋発。14:43草履塚通過、左の尾根に下らないよう右手の藪を確認しながら下る。傾斜がきつくなってきたのでストックをピッケル代わりにグリセードで飛ばしていると、どうも様子がおかしい。急過ぎるのだ。ピッケルを抜き、地図と磁石で確認する。方向が大幅にずれているので、登りなおすことにした。15:23頂上直下の夏道まで登り返し、慎重に磁石と地図を会わせる。すると藪とは全く関係ない方向になった。視界は殆どない。雪の斜面がガスの中にぼうと浮いているだけである。どうも左の尾根を意識しすぎて逆に実川に下ってしまったらしい。
15:34切合小屋通過。グリセードと尻セードで御沢へ下り、15:52御沢分かれ通過。15:58〜14:05御坪で休憩。ODDに遅くなる旨を自宅に連絡してくれるよう依頼。ようやくガスの切れ目が出てきた。16:28目洗清水通過。16:46〜56食事、カッパを脱ぐ。地蔵岳頂上直下でトラバースしショートカット。17:37滝切合通過。18:03〜10御田で休憩、ザックの底からヘッドライトを取りだし、何時でも使えるよう準備する。

ようやくガスが切れてきた(地蔵岳を望む)


霧のオブラートに包まれてぼんやりとしたブナの森の中を降る。マンサクの花が残っているのに、葉が空を向いて出、音もなく扇子状に広げていく。リョウブもスカシユリのように上向きの葉を膨らませた。ナラはネムのように羽葉を休めている。ひょんと伸びた細い枝の先に幾つもの破れ傘をつけたのはコシアブラである。ブナの森に色が失われていくとともに、若い女性のようなムラサキヤシオの紅色が融けていき、白いタムシバが上品な香りを漂わせる。
18:42大日杉小屋着。18:48駐車場発、19:55自宅着。

歩数:大日杉〜2,797御田〜5,764滝切合〜7,190地蔵岳〜10,177目洗清水〜12,621御坪〜13,061御沢分かれ〜15,528切合小屋〜17,479草履塚〜21,718本山小屋22,689〜26,374草履塚21,904〜28,546切合小屋〜29,850御沢分かれ〜30,341御坪〜32,349目洗清水〜36,389滝切合〜38,972御田〜41,887大日杉小屋