登山者情報403号

 【1999年05月30日/胎内尾根/豊栄市吉田明弘調査】

まず飯豊の胎内口の状況ですが、昨年秋に胎内川ダム手前の発電所付近の土砂崩れで林道が通行止めになっていましたが、現在何の支障も無く通る事が出来ます。ゲートも開けられており、胎内ヒュッテには管理人が本日より入りました。
飯豊連峰をめぐる尾根の中で、胎内尾根は長さが長くアップダウンがきびしいことから登山者より敬遠され、現在では廃道になってしまったと聞いていたが、井上氏のホームページ「飯豊朝日の登山者情報」の中の片岡さんの記録を見るに、郷倉峰まではボランティアの人が道を刈ったという情報を見て、胎内口の林道が開くのを待って行ってみることにした。昨年秋に発生した土砂崩れにより林道が通行止めになっていたが先日偵察に出かけ、復旧して通行に支障が無いことを確認していた。
新潟市五十嵐の実家を朝5時に出発、登山口の奥胎内を目指す。胎内の林道のゲートが閉まっていれば二王子岳に進路を変更するつもりで出かけたが、胎内スキー場の奥で山菜取りや岩魚釣りの関門があっただけですんなり通ることが出来た。ちなみに登山者は入山料を取られない。胎内ヒュッテ前の駐車スペースは満車だった。付近にはバードウォッチャーの団体が
いた。胎内ヒュッテにも管理人が入っていて、この日が小屋開きだということを知った。
登山者届を出して出発、一般車通行止めのゲートを通り抜けると、左手のぶなの林の中に踏み跡を発見した。ひょっとしたら大樽山まで行く踏み跡かと考えた。道は林道右手のスロープを降りて行き、頼母木川の吊り橋を渡った。立派な吊り橋だ
か橋の上ですれ違えない。吊り橋を渡るとすぐに急登が始まった。道はきれいに整備されている。少し行くと、胎内川本流方向に踏み跡が分かれているところが2個所あった。ぶな峰の標識の有るところがあったが、峰の形状はしておらずそのまま登っていく。ぶなの林の中の登りは心地良い。左手に頼母木川沿いの林道がいつまでも見えていた。登りの時は人工物は早く視界から消えてもらった方が気分が良いのだか。この林道はこの先池平峰の手前まで見えていた。
最初のピークには見晴台の看板が付いていた。藤島玄著の「越後の山旅」にはこのピークにぶな峰の表示がある。ルート上には所々に古い標識が有り、昔は整備された登山道ということが伺える。見晴台からは多量の残雪を残した二王子岳が大きく見え、そこから伸びる尾根上に桝取倉山やヤンゲン峰が見えていた。赤津山はヤンゲン峰に隠れて見えなかった。反対側には大樽山が見える。そして、足元の胎内川本流には、丁度この位置の下をくり貫いたトンネルの先の工事中の林道が見えた。胎内川本流に新たにダムを作る予定があるというが、一体ダムを作る意味はあるのだろうか。
見晴台から一旦下り、この鞍部が25千図の二王子岳と杁差岳の図幅の境目になる。五葉の峰の標識の有るところを過ぎ、最初の目標地点の池平峰に着いたが、三角点の周りは薮で視界がきかず腰を下ろして休む気になれなかったのでそのまま通過した。少し行ったところに小さい池があったが、これが池平峰の語源か。池というより水溜まりに近い感じだ。しばらくは緩いアップダウンの道を行く。この辺りから所々残雪が現れ始めた。その残雪の上に新しい足跡がある。今日のものだろうか。
大鍋と思われるところにビニールシートにかぶされた道具類が置いてあった。おそらく昨年刈払いした人の荷物だろう。やがて急な登りが始まった。急な登りが終わると郷倉峰に着いた。片岡さんの情報では刈払いはここまでのはずだ。ここで、刈払いの道具を持って歩いている男性に追いついた。彼に道の状況を聞いたら、このルートの刈払いは昨年自分がやったという。昨年1年かかりで一の峰手前の小桜の池までは刈払いしたそうだ。その他、胎内ヒュッテから大樽山までも道を付けたそうだ。話を聞くと道を付けながら歩くのが趣味だという。胎内ヒュッテから左のぶな林の踏み跡は彼が付けたそうだ。この道が大樽山まで伸びているそうだ。それにしても、こんな趣味の人がいるとは、頭が下がる思いがする。ここから先薮こぎを覚悟していたが、薮こぎの心配はなさそうだ。
それにしても、郷倉峰からの展望は素晴らしい。杁差から門内まで続く稜線、二つ峰から分かれて赤津山、そして、二王子まで続く稜線、その向こうに烏帽子山が見える。残念ながら北股岳より先は雲がかかっていたが、なかなかの絶景だ。胎内尾根はとにかく両側を遮るものが無いのでとにかく景色が良い尾根だ。郷倉峰の下りは岩場の下りで、慎重に下った。その先も、岩が多くこの辺りをカモシカ岩というはずだか、その岩は巻いていった。カモシカ岩の前に大きな雪田があった。帰りにここから流れる水で水を補給しようと考えた。
目指す滝沢峰の手前で先週の鏡山で覚えた残雪をビニール袋に入れビールを冷やす作戦に出た。そこから緩い登りひと登りで滝沢峰に着いた。潅木薮が南側の視界を遮っていたが、郷倉峰で重なってよく見えなかった二つ峰の一の峰と二の峰がはっきりと見えた。飯豊の主脈は雲がかかって見えなかったが、飯豊の迫力は見えている部分からも感じることが出来る。青空の下で先程の残雪で冷やしたビールを取り出して一人乾杯した。ラーメンを作っている間に、先程郷倉峰で追い越した、道刈りの好きな男性が追いついた。彼もこの日はここまでで下るという。いろいろ話をしていると彼は中条の人らしい。道刈りをしながら歩くのが自分には丁度良いペースらしい。大鍋の荷物も彼のものだったそうだ。この日はこの先に2人組
が入っているという。ラーメンを作って持ってきた水を使い果した。彼に水場の場所を聞いたら、大鍋の泊り場よりほんの少し下ったところのぶなの木に水の切り込みを入れてあるそうだ、そこから水場までの道も刈ってあるそうだ。水場は下り5分といっていた。
私の水が無くなったことが分かるとペットボトルに入ったお茶を私にくれた。ありがくたくいただいた。いつかはこの尾根を全部歩いてみたいがこの日はここで時間切れ、朝早くから行動すれば二つ峰までは日帰りできるかもしれないが、アップダウンがきついので相当な体力が必用だろう。この尾根を歩くなら下山に使った方が良いかもしれない。カモシカ岩の前の雪田より流れる水をコップですくいながら水筒に水を補給した。雪解け水の流水は冷たくておいしい。郷倉峰で再び景色を堪能し、ゆっくりと下っていった。大鍋の水場の入口はすぐ分かったが、私も持ってきたオレンジ布に「水」と書いて道の分岐点の木に付けてきた。
登りの時に通過した池平峰でも休憩した。登と下りの時間がほとんど同じだ。下りは刈払いした草や小枝が道上にあり、滑りやすいので小股で歩いた為だろう。池平峰の下りで右手に林道が見え始めた。見晴台を過ぎると登り返しはなくなりだんだんと左から胎内川の水の音、右からは頼母木川の水の音が聞こえてくる。その音がだんだん大きくなり、やがて吊り橋に着いた。吊り橋の近辺には観光客が数組いた。胎内ヒュッテに無事下山したことを告げて、車に乗り帰路についた。
とにかく景色の良い尾根道だった。飯豊の主脈に取り付く尾根道の中では一級品の景色だろう。しかし、登山口から滝沢峰の労力を足の松尾根にあてはめると主脈上の大石山に着いてしまう。登山者が少なくなるのは道理だと思った。

コースタイム
05:00新潟市の実家発=06:20胎内ヒュッテ着06:33発−07:10見晴台着07:16発−08:23池平峰通過−09:23郷倉峰着09:33発−10:04滝沢峰着10:45発−11:18郷倉峰着11:23発−12:20池平峰着12:28発−13:32見晴台着13:42発−14:18胎内ヒュッテ着=16:00頃豊栄着