登山者情報434号

【2000年01月29日/白太郎山/井上邦彦調査】

徳網集落の手前、甚五郎沢に2件の家がある。手前の関さん宅に車を置かせてもらい、昨夜の情報を確認し、ピッケルやアイゼンは置いて行くことした。彼の自宅裏からスキーを履いて尾根に取付く。なかなかの急登で一汗かく。370mで尾根上に出ると若い杉林となる。杉林の中は潜らないが、触れると雪を被るので丁寧に進むが、面倒くさいので北の端を通る。雪庇は殆ど出ていない。程なく(405m)から若いブナとナラの林になる。630m付近から広い尾根となり若いがブナ林となる。雪質が気になり、弱層テストを行うと、40cm下に堅い粗目層があり、さらに柔らかい上層部の、表面から30cmですっぱり切れる部分がある。粗目との境も脆いが、30cm層が気になる。しかし、まだ雪は浅く柴が完全には隠れていないのし、細いブナが密生しているので特別な配慮は不要と判断した。関さんの予想の通りに天候もまずまず、飯豊連峰が見えている。

樋倉集落から遠望する白太郎山 登高中に姿を見せてくれた飯豊連峰

元気な兎の足跡が書けまわっている。何時の間にか兎のトレースの上を歩いていると、どうも2匹の兎が全く同じトレースを歩いている。それが突然、途中で雪面から消えている。これで正体が分った。いわゆる「留め足」である。自分の居場所を隠すために、来た道をそのまま戻り、途中でジャンプして藪に身を潜めるのだ。私に正体を見破られるようでは、まだ修行の足りない兎である。
766m峰は北側から巻くように鞍部に出た。ここから白太郎山の本体が望めると関さんに聞いてきた。ブナに覆われた堂々たる山である。しだいに太いブナが混じってくる。うきうきして赤布を付ける。スキーを履いて山側は膝程度のラッセルなので、急斜面になるとキックターンは谷足が先になる。途中からは長袖の下着一枚なので、立ち止まると途端に身体が冷えてくる。休まぬように急がぬように、汗をなるだけかかないのが冬山のコツである。

766m峰から白倉山々頂 雪庇は思いの外に未発達

何時しか木がない白い小山に出たと思ったら、その先には何もなかった。ガスが出てきて視界が閉ざされてきたが、高度計と地形図から、ここが白太郎山々頂と決めた。雪庇を確認すると規模は小さいが、その下はかなりの急斜面である。注意して場所を選び、ラーメンを煮ることにした。スキーを脱ぐと、膝から腿まで潜る。ODDと無線が繋がった。小国町中は晴れているとのこと、そのとおり徐々に視界が開け、五味沢集落も見えてきた。やはりここが山頂に間違いはないと確信。

やはりブナ林は良い 山頂から見えたものは丘の周りのブナ林だけ

いよいよ楽しみにしてきた下山の準備に取りかかる。シールを外し、プラスチックブーツをガムテープでぐるぐる巻きにする。そして、滑降に入った。
ところが、滑るに従い足首から1.5m先まで雪が皺になって身体を押さえつける。スキーの先端は何処にあるのやら見当がつかない。私の技術では思うにまかせない。それでも何度が雪まみれになって、766m峰を過ぎる頃には何とかかろうじて要領を覚え始めた。かくして、本日の楽しい山遊びは終了した。

ルート概念図

コースタイム
取付(320m)07:30〜(405m)07:56〜08:42(630m2,305歩)08:51〜(750m)9:21〜10:19白太郎山々頂(1,002m5,276歩)11:11〜12:11取付(7,520歩)