登山者情報456号

【2000年05月23日/梶川尾根〜石転ビ沢/井上邦彦調査】

天狗平(430m)05:56発。一面の緑に覆われて出発。登り始めるとイワウチワ・ムシカリ・オオイワカガミ・アズマシャクナゲが咲いている。そう言えば、06:23仮称楢ノ木曲がり(尾根の合流点)通過。ムシカリ・タムシバ・ムラサキヤシオ・オクチョウジザクラが咲いている。傾斜が落ちる790mから登山道の左側に雪が出てくる。花はイワウチワ・タムシバ・マンサク・ムラサキヤシオである。840m一部に雪。920m、急傾斜になり、所々に雪が出てくる。

湯沢峰手前から見るブナの新緑と主稜

06:58〜07:09、970mで登り上げると、雪の上にブナの新緑が鮮やか、背景に白い主稜が聳えている、いきなりの別世界である。ここでズック靴からプラスチックブーツに履き替える。ブヨ(小さな蚊のような虫)が煩い。ここから夏道ではなく故意に雪庇の上を歩き、若干の藪を漕いで夏道に戻る。07:17(5,042歩)、1,020mピーク、珍しく高度計が正確である。下り始めてすぐから鞍部まで雪の上、キックステップで下る。タムシバが盛りである。イワウチワが登山道に沿って続いている。雪のトラバースを経て尾根上に出る。すぐ5m程度の雪の壁になる。恐る恐るキックステップで乗り越える。ここから暫らくは、一部夏道があるも、ずっと雪の上。1,060mから夏道となり、イワウチワ・かたくり・ムラサキヤシオが咲いている。07:43〜54、食事を取る。1,125mから雪道となり、08:01(1,135m)滝見場に到着する。この辺りがブナの新緑の上限である。

滝見場から見た石転ビ沢 滝見場から梶川峰を目指して

1,220mカール状の場所で、日焼け止めクリームを塗り、ピッケルを出しストックをザックに付ける。いよいよ急登が始まる。1,270mと1,360mに数m夏道が露出しているが、雪道をキックステップで登る。落ちれば湯沢まで一直線である。数年前に死亡事故が発生しているので留意して欲しい。1,390mでは10mほど雪が切れているので、夏道を登り、再び雪上に出る。1,420mから断続的に夏道が出てくるが、夏道は歩きにくいので右手の雪の斜面を登る。雪の亀裂の中に鮮やかな青紫のキクザキイチリンソウの群落が咲いていた。
08:50〜59、ペースが落ちてきたので、羊羹を頬張り、アイゼンを履く。09:10、1,540m仮称三本カンバ、ここでアイゼンを手に持ち1,570mまで夏道を登る。イワウチワ・ショウジョウバカマ・カタクリが咲いていた。09:27〜35(1,665m)夏道となる、ここでアイゼンとピッケルを収納しストックを出し、食事を取る。イワウチワ・ショウジョウバカマを道脇に見て、09:39、1,690m、11,232歩で梶川峰の三角点に到着する。
09:41(1,700m、11,376歩)梶川峰の標識を通過する。次の小ピーク手前に20mの雪道、更に鞍部から雪道となり、ケルン周辺のみ夏道となる。ハクサンイチゲの芽生えが始まっていた。1,820〜1,830mの間、約60mの夏道。この辺りから視界が閉ざされる。尾根部に走っている雪の亀裂を辿るが、最後は平坦で地形が分からなくなる。10:19(1,880m14,287歩)ガスの中に標柱を見つける、扇ノ地紙である。新潟県側に作られた登山道は夏道が出ているが、私はそのまま門内小屋まで、山形県側の雪庇の上を歩く。例年よりかなり巨大な雪庇のような感じがする。鞍部では夏道が雪庇に隠れているほどであった。胎内山周辺は夏道が出ておりが次の鞍部も雪に覆われ、その後は門内小屋まで全て夏道のようである。小屋手前の最低鞍部には、天幕場と池からの融雪水が流れていた。

門内小屋

10:36〜50(15,792歩)門内小屋に到着。小屋の周辺には雪が全くない。風が出てきたので小屋の中でカッターシャツ(それまでは下着のみで行動)と軍手をつける。小屋前の雪に飛び乗り、若干登ると夏のトラバース道上に出た。キックステップで下る。山頂の祠の屋根が見えた。夏道を20mほど進むと雪の上になり、瞬間方向を失うが、20mですぐに夏道となる。以後は北股岳山頂までは全て夏道。ギルダ原で、ミヤマキンバイの黄色い花を2輪見かけた。
11:33(2,035m19,874歩)北股岳山頂に到着する。山頂でピッケルと地図と磁石を出す。予想通り、下降のポイントは見当もつかない。地図で磁石を進行方向にセットし、磁石だけを首から下げて、キックステップで慎重に下降を開始する。かすかに左手に尖った線が見える。雪庇の端かもしれないが良く分からないし、近づく気がしない。ひたすら磁石の示す方向に下る。線は近くもならず遠くもならず続いている。右手に寄り過ぎると後で登り返しで大変苦労することになる。奇跡的?に1,925mで夏道にぴったりと出る。
11:51(20,862歩)梅花皮小屋到着。さっそく缶ビールを雪に埋め小屋を点検する。小屋内の温度は+5℃、便所のトイレットペーパーが少なくなっていたので補充する。梅花皮小屋は昨年からバクテリアを利用した水洗便所構造(管理人不在時は水洗でない1穴のみ使用)としたので、石油製品を混入している市販のテッシュペーパーハは使用できないのだ。例によりラーメンを煮て缶ビールで喉を潤す。
12:52(21,697歩)梅花皮小屋を出発する。グリセードで気分良く、12:59北股沢出合通過。北股岳方向からの雪崩跡で黒滝付近はデブリで埋まっている。仮称北股沢左俣(昨年の死亡事故の沢)から大きな転石が落ちていた。確認すると、付近にも形跡があり、今後多発する可能性があるので注意が必要である。ホン石転ビ沢すぐ下で2名の登山者とすれ違う。本日会った唯一のパーティである。

北股沢出合の転石 ホン石転ビ沢対岸のブロック雪崩

13:22〜26石転ビノ出合。概ねここから上流はブロック雪崩が発生し始め、これから本番を迎えると思われる。一方、出合から下流は、油断はできないものの、発生の頻度は低くなっている。梶川出合すぐ上の水場は使用できる。13:36梶川出合通過。梶川出合・石転ビノ出合の門内沢、ホン石転び沢、北股沢の4沢は、いずれも大変に迷い込みやすい状態になっている。

石転ビノ出合から石転ビ沢 下ツブテ石(左下)から上ツブテ石の間
地竹原から滝沢出合を望む

上ツブテ石から更に雪渓を下った所、予想通り下ツブテ石の上流で梅花皮沢は通行できなくなっていた。薮を漕いで彦衛門の平に登る。上ツブテ石上流の通称ババマクレから雪渓に上り下りする方が良い。13:57〜14:06彦衛門の平で休憩。通称うまい水は雪の下から吹き出していた。一旦夏道となり、エゾエンゴサク・スミレサイシン・カタクリが咲いていた。沢のデブリを下り夏道に入ると、オオバキスミレ・スミレサイシンが咲いていた。下ツブテ石の最後の下りには、何本かの倒木で道が荒れていた。再び登山道は雪に覆われている。薄いので小沢や抉れた登山道では注意が必要である。雪中のブナの緑は格別である。砂防ダムが近づくと夏道と雪道が交互になり、14:32(29,745歩)上の砂防ダム到着。下の砂防ダムからは全て車道となり、15:02(32,660歩)天狗平の駐車場に帰り着いた。

以上