登山者情報462号

【2000年06月17日/遭難情報/井上邦彦】

17日8時頃、メール作業をしていると、無線機から聞きなれた声がする。PWDによると梅花皮小屋で救助を求めているとのこと、待機していろとのことである。GZKから大まかな状況を聞き、小国警察署に行く。
遭難者は岩手の男性36歳、単独で今月6日に石転ビ沢から入山。大日岳まで往復し、梅花皮小屋まで戻ったが、疲労で動けなくなり、同宿の登山者に救助要請を依頼した。依頼された登山者が石転ビ沢を下山中に、すれ違った登山者が事情を聞いてアマチュア無線で発信。GZKがこれを受信して小国警察署に通報したとのことであった。
何度も梅花皮小屋を呼ぶが、梅花皮小屋には無線機を持っている登山者はいない様子で、応答がない。無線機を持った登山者が梅花皮小屋まで着くのにあと2時間程度かかりそうである。
藤田栄一氏からは天候良好フライト可能との連絡が入る。小屋の中にいること、天候が安定していることから、ヘリコプターで救助作業を行うのが一番適切と判断する。
本人からの救助要請であること、本人の父からの救助要請もことから、ヘリの出動に問題はないと判断。そうこうしているうちに、山形県消防防災ヘリ「もがみ」が飛び立ったと連絡を受ける。緊急時のヘリポートである総合スポーツ公園の手配も進行している。
もがみから「小屋内の登山者を収容、衰弱しているが、なんとか自分で歩ける」との知らせが入り、小国警察署に安堵の声が湧く。ガスの関係だろうか(小国盆地は雲海が出易い)、長井市立病院に搬送するとの連絡が入る。
今日明日は、日本山岳協会準指導員の実技指導と検定である。私の役割は終了と判断、自宅へ帰り、登攀用具を持って飯豊町のボードに向かった。
当日の山形新聞夕刊によると「(遭難者は)2〜3日前から道に迷い、梅花皮小屋にたどり着いたが、疲労と下痢で自力下山が出来なくなった」と記載されていた。