登山者情報491号

【2000年08月05〜06日/足ノ松尾根〜杁差岳/井上邦彦調査】

娘2人を連れて、足ノ松尾根から杁差小屋に泊り、丸森尾根下山と計画を決めたのは前日である。当日の早朝、車で胎内ヒュッテまで送ってもらう。途中で猿の群れに会う。胎内ヒュッテで坂上さんに挨拶し、登山者カードに記入する。
06:38(高度計350m)荷物を背負ってゲートを出発する。舗装道路は軽登山靴には歩きにくそうだ。幸いなことに向こうから来た車に拾ってもらい、取り付きまで送っていただく。
06:59(高度計460m)「←足の松尾根登山口」と書かれた看板に従って、ブナ林に入る。いきなりの急登である。 07:11〜19休憩。 07:41〜08:02(高度計650m)休憩。幸い曇り空で太陽は見えないが、風がそよとも吹かない。
08:20〜32(高度計760m)姫子ノ峰でBCR一行と一緒になる。ここまで取り付きから2,655 歩(以下歩数は取り付きから計ったものを記載する)。 08:56〜59(高度計810m)下りきった所に岩場がある。下を見ると恐いが、道はしっかりしている。リョウブ・マルバキンレイカ・ホツツジ・オオコメツツジが咲いている。
09:18〜43(高度計895m)滝見場で休憩。以前ブナの木に付けられていた看板はなくなっており、ブナの木に二本の線が名残に付いていた。振り替えると姫子ノ峰と姫子砂防ダムが見えた。
09:59(高度計 990m)水場の看板があるが、ホースからは全く流れていなかった。 10:08〜19(高度計1,040m)右手に船窪地形がある小ピークで休憩。次の小ピークを越えた所が水場への分岐になっている。 10:26水場分岐を通過、「約80m」と書かれた看板があるが、一瞬「780m」と見えて、そんなに遠かったかなと驚く。ここまで7,387歩。なお現在この水場は使用できる。
10:35〜47(高度計1,090m)休憩。私達3人は半ズボンで登ったが、日当たりの良い尾根は藪の生育が早く、娘達はかなり脛に擦り傷を作ったようだ。 11:08〜21(高度計1,220m)休憩、この辺りがブナ林の限界である。キオン・クロヅル・マイヅルソウ・ツルアリドウシの花を見かけた。
11:39〜12:04(高度計1,340m)小ピークで休憩。歩き始めてすぐの鞍部で左側斜面に残雪を見つける。ピッケルと水筒を持ち柴を掴んで下り、水筒に雪を砕いて詰め、雪塊を持ち帰る。12:18鞍部発。
12:37 〜48(高度計1,480m)尾根が平坦になり低い潅木だけとなる。赤トンボが無数に飛んでいる。
12:53〜13:01(高度計1,500m)大石山分岐に到着する。真新しい標柱が立っていた。ここからは、別世界のお花畑を下る。足ノ松尾根とうって変わって、道刈りも行き届いている。
トモエシオガマ・ハクサンフウロ・シラネニンジン・タカネマツムシソウ(まもなく盛)・クルマユリ (盛)・ミヤマアキノキリンソウ・ウメバチソウ・コキンレカ・ミヤマホツツジ・タカネツリガネニンジン・ホタルサイコ・ミヤマシシウド・エゾイブキトラノオ・タカネナデシコ(盛)・マルバダケブキ・キオン・オオバギボウシ・ホソバイワベンケイ・イワオトギリ・マルバコゴメグサ・ニッコウキスゲ (終)・ナンブタカネアザミが咲いていた。ガスが濃く、少し離れると姿が見えなくなる。これもまた幻想的である。
13:24〜33(高度計1,370m)鞍部のお花畑で休憩。 13:48〜59雨が降ってきたので、カッパを着ようとしている間に止んだ。ヤマハハコ・ハクサンボウフウ・タテヤマウツボグサが咲いている。雷鳴が聞こえてきた。最近は、決まって午後になると雷雲が発生している。14:05〜09休憩。
14:13〜24(高度計1,530m)鉾立峰山頂。ここにも新しい標柱が立っていた。下りにはヒメシャジン・ミヤマコウゾリナ・カニコウモリ・センジュガンピが咲いていた。14:46〜53(高度計1,540m)小屋はまだ見えない。
15:02(高度計1,575m17,125歩)杁差小屋がガスの中から突然に現れた。さっそく2階に荷物を置き、娘の小さいザックにあるだけの水筒を詰めて水場に向かう。トイレの後ろに「水場」と書かれた標識が立てられている。そこから踏み跡を下ると、まだ豊富な残雪があり、融雪水が取れた。さらに2つのポリ袋に雪を詰めて小屋に戻る。下り1分強、登り4〜5分程度である。
丸山さんや掛橋さんを始め、本日のメンバーが次々に到着する。かなり強い雨が小屋の屋根を叩き会話も聞き取れないほどである。雷も鳴り響いている。
何時の間にか雨が止んだと思って窓の外を覗くと、なんとすっかりとガスはなくなり、小屋からの眺めは飯豊連峰随一と言われる、素晴らしい光景が広がっている。子供達と杁差岳の山頂まで散歩に出掛けることにした。新潟平野・胎内川・荒川・日本海が足下に広がり、頼母木小屋・門内小屋・北股岳・飯豊山が延々と連なっている。朝日連峰も姿を見せはじめた。 3人で心行くまで大展望を満喫する。
自宅に電話を掛けようとすると、レベルは高いのだが全く通じない。後で長谷川さんに教えて貰ったところによると、あちこちの中継所から電波が入るため、どの中継所に決めて良いか分からず、結局電話が通じないことになるのだそうである。これを解決するには、始めてコンタクトを取れた中継所と繋がるシステムを持つ、セルラーのドコモ方式またはドコモの特定の機種に変更するしかないとのことである。それでも何度も場所を変えて試みているうちに、ようやく携帯電話が通じた。携帯電話は稜線以外ではまず通じない。さらに稜線でも最近の携帯電話の大部分は、機能上の問題で使用できないということを確認した。アマハムは勿論問題なくODDと交信できた。
はるばる本山小屋から二瓶(VQO)管理人も駆けつけた。たまたま管理人室に居たのは、関川村の高橋賢吉さんである。4週間連続で杁差小屋に通っており、大石山の分岐・鉾立峰・杁差岳山頂の標柱は、彼の作品だと教えてくれた。全く頭の下がる思いである。
ともあれメンバーが揃い、BCRが冷凍マグロの頭を自慢の鉈で調理を始めた。刺身で食べ、味噌味で煮て、満足満足。さらに今回のメインエベントである、60歳を迎える高橋さんに赤いチャンチャンコと帽子を贈り、皆で記念撮影を行った。
明けて6日、娘の一人が吐き気を訴えて食事も摂れず、歩けない状態となった。天候は申し分ない。とにかく無事下山することが先決なので、計画を変更して足ノ松尾根を下山することとし、携帯電話で配車を頼む。なんとか、07:17杁差小屋を出発する。
07:38〜41休憩。07:47〜8:00鉾立峰山頂。08:22 〜34鞍部にて休憩。08:46〜55休憩。09:06〜13大石山分岐。最初の鞍部(高度計1,330m)から、6mm×20mロープをセットし下降する。残雪までちょうどロープいっぱいであった。水筒に雪を詰め、残雪端の氷になっている部分を取り、30cm 四方を切り取ってポリ袋に入れて戻る。子供達は冷たい水を飲み、氷の破片をタオルに包んで首の後ろに巻いて涼を取りながら下ることにした。私は氷をぶら下げて、途中途中で水筒に入れたり子供に渡し、自宅に着いた時は、10cm四方までとなった。ともあれ、雪を取り終えて出発したのが10:05である。
10:45〜10:58(高度計1,000m)ブナ林で休憩。11:05水場分岐を通過。11:15〜27(高度計 1,030m)休憩。 11:39〜58(高度計940m)休憩。12:06滝見場を通過。12:19〜28(高度計850m) 休憩。12:33岩場を通過。12:48〜13:07(高度計780m)休憩。
13:15〜31(高度計780)ピークから若干下った所にある姫子ノ峰にようやく到着。 13:42〜14:02(高度計630m)子供達はそろそろ限界、二人で歩数を数えながら、やっとの思いで歩いている。左手下の木立の間から砂利道が見えた。いよいよ最後のくだりである。 14:19河岸段丘のブナ林に到着。14:21〜14:30(高度計480m39,272歩)ブナ林の中で休憩。
14:32(高度計470m)車道に出た途端に、暑い日ざしが突き刺さってきた。橋を渡り僅かに歩いた所で、何とお迎えの車に会った。さっそく車に乗り込み、胎内ヒュッテに。坂上さんに挨拶して、帰宅。

取り付き、河岸段丘のブナ林 取り付きに立ててあったロープの断り書き
スタートから急な斜面の登りとなる 両側がすっぱりと切れた岩場を通過する
滝見場から見下ろす足ノ松沢の滝 リョウブの花が咲いていた
コキンレイカ 稜線に出るとお花畑が続く
ホタルサイコ クルマユリ
ナンブタカネアザミ ノリウツギ
鉾立峰手前の鞍部 オオバギボウシ
タカネナデシコ 杁差小屋から見る飯豊の主稜線
小屋から杁差岳までは、ほんの一投足 杁差岳山頂にて
VQOも本山小屋から駆けつけてくれた 赤いチャンチャンコを身に纏う高橋さん
鉾立峰から杁差岳(小屋の右下の残雪が水場 全員で記念撮影(写真は高橋さん提供)

掛橋さん長谷川さんを始め、新潟の皆さん、本当にお世話になりました。
なお、取り付きに看板が出ていたが、取り付きから大石山までの間、至る所の小ピークに雨量観測システムが鉄パイプで組まれており、延々とロープが設置されており、登山道を横切ったりしており邪魔になりました。