登山者情報496号

【2000年08月14〜18日/石転ビ沢〜丸森尾根/木内茂雄調査】

メンバ−  金氏:JL7BPZ、高力氏:JM7MXL(2名途中より別行動)、木内:JO7AQL
タイム   
(8/14)5:25飯豊山荘→6:00温身平砂防→下石→6:35水清水→彦衛門の平→慰霊碑→7:05上石→7:45梶川出合→8:20石転び出合→9:50本石転び出合→11:00黒滝→12:40梅花皮小屋
(8/18)2:50梅花皮小屋→3:10北股岳→4:00門内小屋→4:20扇地紙→5:00地神山5:10→ 5:20地神北峰5:35→6:30水場→7:45飯豊山荘

(8/14)〈 飯豊山荘→温身平→石転び出合→梅花皮小屋〉
金氏の自宅に4時と約束してあったが、目覚まし時計が狂っていて起きたのがその時間であった。あわてて起き、金氏に詫びのTELをいれ直ぐに出かける。勿論、高力氏と飯豊山荘4時半の約束にも30分遅れた。そのため、出発したのは予定より25分遅れであった。空は快晴、道はいやな砂利道ではあるがまずは順調な歩き出しである。温身平の標識を右に入り砂防ダムに向かう。此処で標識を見逃し真っ直ぐ行きダイグラ尾根に向かった人がいるそうだ。下を向かないで常時は水平に視線を向け注意することが肝心。ダム前で少し休みコンクリ−トの階段を昇りスタ−ト、私は一番後ろを歩き時々写真を撮りながら進む。そして、20分も歩くと下ツブテ石だ。いつも思うが“下ツブテ石”(石とは言うが沢である)は渡って直ぐ左に行くのだが、下を向いたままで歩いていると真っ直ぐ沢を登ってしまうから要注意。この沢を左に渡り、少し平らを5分も進むと涸れた沢に出る。これが通称“ウマイ水清水”で、一服とする。直ぐ下流を見るとコンコンと清水が湧いている。みんなは此処でウマイ、ウマイと言って水を飲んでいる。私はその日の行程が終わるまで、水を飲まないのでそのウマサに浸れな いのが不幸である。その先に進み彦衛門の平を過ぎ、間もなく慰霊碑を右に見る。今日も花が添えられている。更に前進、上ツブテ石経由、梶川出合の見える処に出る。右に高巻きする道が有るが本流の水が少ないので、川原に降りて梶川の前に行く。(ウマイ水清水からこの辺り、以前には標識が有ったが今は無い、初めての人には有った方が親切だろう。)さて、梶川を渡るには梶川の沢を少し右に登ってから飛び石で対岸に渡って、そして少し下って雪の上に出る。ほんの暫く本流の雪上を歩く。しかし、本流に雪は有るが崩れたり、クレパスが有ったりでもう雪の上は行けない。右側の夏道を歩く。この辺りソバナがツリガネ状の紫の綺麗な花を咲かしていた。それから、サンカヨウがブドウ色した実を付けていたが、更に上流に行くと雪融けの遅かった処にはまだ白い花を咲かせていた。道は一度、高巻きをしたりするが、赤滝と呼ばれる小さな沢を過ぎて夏道は次第に高度をかせぐ。そして、いつの間にか目の前の視界が開けると石転び沢が目の前である。石転び沢と門内沢との出合で本流の左岸から右岸に渡るが、今年は例年に比べ本当に雪が多く、“飛び石のル−ト”を捜す苦労も無く、広い雪の 上を左岸に迷うこと無く渡れる。【尚、此処は霧がかかると右の門内沢に入る人が多いので要注意である。】対岸の大石辺りは雪が無い。見回すとモミジカラマツとハクサンコザクラが咲いていた。右上を見上げると門内小屋が良く見える。気温は30度であった。一服後夏道を歩くが、間もなく雪の上となる。斜度が緩やかなので一ピッチそのまま歩き続ける。そして、アイゼンを付ける。雪面はスプ−ンカット状になっているので、ノ−アイゼンでも登れるが初心者はやめた方が良い。同行のK氏とT氏は急傾斜になっても快調に直登して行くが、私はマイペ−スでジグザグの“亀の子歩行法”をとっているので、間隔を引き離される。二氏が休んでいる時に追いつき、同時スタ−トとするが、また引き離される。そんな事を繰り返しながら“本石転び出合”に着いた。休みながら、本石転び沢を見ると、まだ雪が大量に詰まっていた。しかし、途中に大きなクレパスが出来ていた。それを見ている時、左岸の雪の上に有った石の溜まりから頭の三倍もある様な石が、ガシャッと音がしたと同時にスロ−モ−ヨンを見る様にズッズ−と動き出し、それがゴロゴロッと転がり出した。私共の右上50メ−タ−の話だ 。こちらに来る様子は無いが、下に居る人達に対し、K氏が30年愛用の笛をピ−ッピ−ッとけたたましく鳴らし、警告する。スピ−ドは遅いが当たれば唯では済まない。矢張り“石転びを歩く時は常に上方注意“である。一服後、また上を注意しながら黙々と歩く。そして、かなりきつい雪面が気持ち緩やかになる頃、右側、即ち左岸より北股沢が合流して来て雪面の幅が広くなる。此処も霧に巻かれて右の北股沢に登って大騒ぎする人がいるので要注意である。長い雪の登りも黒滝で終わりとなった。此処でアイゼンを外し一服する。これからの草付きの急登も楽ではない。疲れも大分きている。そして、いつの間にか我が3人パ−テ−の先頭を歩いていた。かと言って私が決して早いわけでわない、むしろ今までよりも遅い。この草付きの登り途中に2カ所水場が有る、今年は雪が多かったので水量が豊富である。それを横目で眺めながら“亀の子歩行”をひたすら続ける。花など見てる余裕は無い。だけれど、目立った花は無かった様な気がする。自分と戦いながら一歩一歩進んで行くと登山道に水が流れている箇所に来た。此処に来ればしめたもの、小屋はもう直ぐだ。そして、小屋直下のテントばに着 いた。まだ雪が大量に残っており、この雪解け水が登山道に流れ出している。一ヶ月前に来た時より幾らか少なくなったか?...今回は小屋まで夏道が出ていた。この距離はたいした事無いのだが、大変に疲れが出ており、足がツリそうになるのをダマシ、ダマシ登った。そして、着いた、小屋に....。小屋の管理人の関氏:JN7OTJは新潟県のある山岳会の遭難事故の連絡に多忙であった。〈この事故で遭難者はヘリコプタ−で収容されたが、残念ながら一人亡くなった。〉私の相棒、二人が着くのを待って“冷たい泡”を飲んだのは言うまでもない....。生きて居るという実感、そして、“感無量”感じる一瞬でもある。大休止後、外に散歩に出かける。この一時がまた格別である。天気は晴れ、見慣れた飯豊連峰を見渡す。そして、今回の目的の一つを実行する。それは下で育てたハクサンフロウの苗を植える事だ。実験的に小屋の脇に植えた。上手く育てば来年はチングルマも植えよう。それから、花を捜す。石転び側斜面にはオタカラコウ、モミジカラマツが満開、小屋近辺はマツムシソウ、コゴメグサが満開。(今年はやけにコゴメグサが多く感じる。)そして、遠くの斜面にはニッコウキ スゲが見渡せる。いつものところにはタカネナデシコ、トリカブト、イイデリンドウ、イブキトラノオ、オンタデ、オヤマノエンドウ。それから、これから咲きそうなイワインチン等々、その他は明日以降にする。そして、北股岳にも登った。小屋に戻り楽しい一泊になったことは言うまでも無く、また記述し尽くせない。因みに酒のツマミはカツオの刺身、豚肉のステ−キ他豪勢なもの多数。夜八時からは、小国町の花火大会なので「上から見物」といきたかったが、私はその前に寝てしまった。

(8/15)〈梅花皮小屋→梅花皮岳→烏帽子岳→(ピストン)→梅花皮小屋〉
二日酔いにならず、健やかに起床、天気も上々。朝食後、私は今山行の目的の一つである、イブキジャコウソウの写真を撮りに烏帽子岳に向かう。五分も歩いて肝心のフイルムとデジカメのメモリ−を忘れたのに気がつき小屋に戻る、草刈りに行くOTJとすれ違い笑われる。さて、花は本当に多い。昨日挙げたのは成る可く避けるが特筆する場合もある。梅花皮岳の登りで格好の良い咲き方をしているコキンレイカ(ハクサンオミナエシ)を見つけた。見事な黄色である、まだ日が低いので帰りに撮ることにして先を急ぐ。ヤマハハコ、ミヤマコウゾリナ、ミヤマリンドウ、イワオウギ、ハクサンボウフウ、ヨツバシオガマ、ハクサンシャジン、コバイケイソウ、イワイチョウ、ミヤマキンポウゲ等を至る処で見つける。烏帽子岳を過ぎ、その先クサイグラ尾根を左に見て下り始めた。いつもの処に有るイブキジャコウソウは既に咲き終わってしまっていた。残念と一度は落胆したが、事によると近くに有るかと捜してみた。少しではあるが咲いていた。早速、カメラを出して露出を何種類にも変えて撮った。今回の目的は取り敢えず達成した。安心してノンビリと帰路につく。梅花皮岳で飯豊全山を眺め、また トンボを一人でユックリと眺めてから梅花皮小屋へと戻った。時にお昼は過ぎていた。小屋には昨日梶川尾根を登り頼母木小屋に泊まった、横沢氏と片桐氏:JO7ASEが到着していた。昨日より無線交信をして連絡を取り合っていたが、再会は良いものだ。小屋で休みながら談笑中、二〇〇〇年ミレミアム登山の記念旗が有るから、標高2000メ−タ−の梅花皮岳に行こうという話になった。横沢氏、ASE、BPZ、MXL、AQLの五人で登った。途中降りて来る登山者にも話して、『記念写真を撮るからどうですか』と話したら一人乗ってきた。その人は“テレビにも出るのですか?”と、質問してきたので、“テレビには出ないけれど、世界的なインタ−ネット”には載りますと答えた。〔ところが、撮影結果は少し暗く撮れてしまった。〕記念撮影後、小屋に戻る時、昨日見逃したコキンレイカを撮ろうと捜したが見つからなかった。どうしたんだろう?...。夕食は二人増えて、総勢六名でまたまた豪勢な祝宴になった。何の祝宴だったろう?。

(8/16)〈梅花皮小屋→梅花皮岳→小屋周辺散策〉
今日はBPZ、ASE、横沢氏の三名は御西小屋、MXLは丸森尾根経由下山、OTJは石転び沢経由下山である。私AQLは一人残り小屋の管理人である。快晴のなかをみんな思い思いに出発して行った。登山客も全員出払い、私一人になると殺風景と言うか、何か空白が大きすぎて少し寂しい感じである。まずは昨日見つけられなかった、コキンレイカの写真をどうしても撮りたくて、また梅花皮岳に向かう。地形的にこの辺だと見当つけた処に矢張り無い。おかしいなあ...?と、思いながら、もう少し登った。慎重に見ながら更に行くと有った。何と頂上に近い処でないか、記憶とはいい加減なものだと思った。(或るいはボケの始まりか....)ついでに又、梅花皮頂上に登った。これで三回登頂となった。昼頃、吉田君:JO7AXLが石転び沢を登って来た。私が要求したお茶と漬け物を持って来てくれた。お礼ではないがラ−メンを作ってあげる。AXLはそれから、草刈り機を持って御西小屋へ向かった。今日も一日天気が良かったが三時頃三〇分位土砂降りの夕立があった。夕立の前にキリスト独立学園の若いOB二人が到着していた。(一人は島崎翼君)二人は小屋番の助手はしてくれるし、料理は生タコとキュ ウリと何かを混ぜたもの、それに何とか風中華調理等を作ってくれた。それでまた美味しい酒のツマミが楽しめた。毎日酒ばかりではなく、今回はもう一つ教養を深めようかと思った。何かと言えば星座である。夜外に出てふと、北股岳の右上空を見るとなんと『北斗七星』が有るではないか。学校の理科の授業で習った微かな記憶を思い出す。そして、一寸向きを変えるとW型をしたカシオペア、それから北極星、までは判る。後は星座の名前少し出て来るが、悲しいかな私の知識はここまで。  この次に来るときは勉強してくるか....。

(8/17) 〈梅花皮小屋→洗濯平→北股岳→梅花皮小屋〉

今日も快晴、朝から学園OBの二人が小屋の清掃整備を丁寧にやってくれた。私としてはトイレ清掃だけですんだ。そして、二人は御西小屋へと出発して行った。さて、と、登山客が来るまで時間は有るしと退屈しのぎに洗濯平へ散策に向かった。サブザックにカメラを入れ何か花は無いかと藪を漕いだ。このル−トは現在禁止になっているので、笹が深く露が有ればたちどころにビショ濡れになる事間違いなし。また雨の浸食で幾つも道が有るので迷うから入らない事。花の数は多くないが、北股岳の斜面にはニッコウキスゲが群落を呈し、足下には表現出来ない程の紫鮮やかなミヤマリンドウ、そしてまだ有る雪渓の近くにはハクサンコザクラ、コバイケイソウが咲き競っていた。デジカメと今回のために用意した私には勿体ないカメラ2台で撮りまくった。散策後は藪漕ぎをして、湯ノ平から来る登山道に出る。そして北股岳へと急登した。途中にはハクサンウツボグサが咲いていた。此の登山道はハッキリしている。北股頂上で今日ダイグラ尾根を下山しているASE達をコ−ルしてみるが応答無し、クタバッテいるのだろうか...?....。そして小屋に戻る。夜の管理人室は初めて一人なので話す相手 もなく、自然と酒と話すことになってしまった。料理を作ろうと思ったがパックされている物ばかり、一人分には多すぎる。ラ−メンを肴にして飲む。一食では足りず二食目も作りそれに合わせ酒も飲んでしまった。

(8/18) 〈梅花皮小屋→北股岳→門内岳→扇ノ地紙岳→地神北峰丸森尾根→飯豊山荘〉

今日は早く石転び沢を降りようと思っていたが、昨夜食べ過ぎたのか早くに目が覚めてしまい、もう一度寝ようと努力したが駄目であった。二時頃起き、昨夜のラ−メンの残り汁に餅を入れ食べた。そして、お茶を飲み、食器も洗いそれでも、三時前、予定を変更して二時五〇分丸森尾根経由で降りる事にして出発する。外は月夜である、私は幸い夜目が利くのでライトを点けないないで北股岳を登りだした。暑くも無く、誰かとすれ違う事もなくマイペ−スで登れる。頂上に順調に着いて見回す景色は、これこそ“月夜のパノラマ”。飯豊全山がシルエットで無くクッキリと、しかも360度月光に浮かび上がって見える。此処で一杯飲めばこれ又“オツ”なものであろう、と考えながら我慢して下り始める。下りなので何かに躓いて笑い者になっては、と考えライトを点けた。流石にライトは良く見える。歩きながら、三〇年前の事が思い出される。【それは北アルプスの針ノ木から裏銀座、そして、笠ヶ岳へ抜ける時だった。途中の予定が遅れ、私だけ後一日しか無くなった時、前日の〇時から二日分歩いた。その時も月夜で荒涼とした岩と砂礫の稜線歩きであった。まるで月の砂漠を歩いている雰囲気だ った。そこで、「月の砂漠」を歌って歩いた事を....。】飯豊は草木が有るので砂漠とはいかないが、誰一人居ない登山道を独り占め出来る満足感は最高だ...これこそgoing my way なり。さて、門内岳を過ぎて前方を見ると遙か向こうに町並みの灯りが見えた。、あれは村上の灯だろうか?。扇の地紙を通過する頃空が明るくなってきた。そして、地神山に着いた時が夜明けの数分前だった。此処でカメラを出し、三脚をたて、日の出を慎重に待つ。日の出の一瞬はカメラに収めた。果たして現像はどうなるか?。この時点、朝露で靴は中までグショグショになっていた。数日前に、AXLが草刈りしておいてくれて有ったが少しの草とか笹の朝露でもたちまち濡れてしまった。これが判っていれば雨ズボンをはいてきたものに。これこそ、“そんな事はツユ知らず”なんだろう。地神北峰では完全に陽があたり、全山、朝日に輝きだした。此処でも又カメラを出し、三脚を出し、頼母木岳、エブリ差岳、本山等をバチ、バチ、カメラに収めた。此処でも今回の収穫の多さに非常に満足した。更に丸森尾根を降りて行く時、キンコウカの株が有ったのでこれも収めることが出来た。少しチングルマも見か けたが今日の出勤に間に合わせるため、それ以上欲張らずに森林の中に下って行った。

上の砂防ダム ここから登山道になる 石転ビノ出合から石転ビ沢を仰ぐ
北股岳中腹から梅花皮岳と烏帽子岳 北股岳と梅花皮小屋
2000m梅花皮岳山頂にて 梅花皮小屋管理棟前にて(左端が筆者)
 完